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2013.03.28
企業内診断士の実務診断への取り組み

企業内診断士の実務診断への取り組み
城北支部 
中村昌幸、稲葉寛、松本恭子、仲野邦彦、小澤栄一、平野修(執筆順)
序章.はじめに
城北支部認定研究会である「企業内診断士フォーラム」の活動事例を通して、企業内診断士が果たす役割や活躍の場の可能性について報告いたします。
表示(1)設立経緯
当フォーラムは暫くの休止期間から再開するかたちで2008年4月に活動開始しています。幹事含めて7名の会員数からスタートし、城北支部(当時の城北支会)を始め城北地域の中小企業診断士会からの積極的なバックアップもいただくことで、約80名(2013年3月時点)の会員が在籍する研究会となっています。活動は発足以来「企業内診断士が外部に対して活動する」ことに主眼をおき、目指す企業内診断士像としては、「実務ポイントを取得するだけでなく診断実務を通してビジネスパーソンとして成長すること」と考えています。
(2)「企業内診断士フォーラム」の活動
企業内診断士が実務案件を担当するために、次のような取り組みを行っています。

1)診断機会の獲得活動
 ①城北支部、城北地域の中小企業診断士会との連携
 ②独立診断士との連携のための組織構築
 ③企業内診断士が依頼を受けた実務診断案件への共同で取り組む体制構築
 ④企業内診断士が企画する実務・事業の推進
2)診断実務に対応するための準備
 ①会員交流促進として、定例会での「5分スピーチ」や「ワークショップ」を通し
  勤務先業務として持つ様々な専門性を補完しあう関係の構築
 ②診断能力研鑽として、会員が講師となり支援施策や診断事例報告の実施
 ③複数の診断テーマでワーキンググループを結成し、積極的な実務獲得への活用

(3)「企業内診断士フォーラム」の果たす役割
資格取得後に中小企業診断士としての活動のベースが持てず、次第に距離を置いてしまうことは人材の有効活用という点で大きな損失です。また、実務ポイントの取得が目的化してしまい、資格取得を通して磨いた能力活用を見失っている例も散見されます。中小企業診断士として社会に貢献し自身のキャリアアップをも目指していきたいものです。
企業内診断士として診断に携わり独立して当会を卒業される方、兼業診断士としてキャリアアップを図る方、本業重視で緩やかに診断士活動も続けていきたい方、企業内診断士の在り方もさまざまですが、中小企業診断士としての活動ではその名称に相応しい対応を行わなければなりません。しかし、独立診断士ほど責任の重いハンズオン支援を十分に行うことができないことは企業内診断士の弱みと考えられます。一方で中小企業診断士の支援を活用したくても機会を得られない経営者や、気軽な支援を求めるビジネスパーソンに対しての支援活動を行えることは企業内診断士の強みと考えることができます。
以降の各章では、企業内診断士の診断実務への取り組み事例や、そのための日々の準備について当フォーラムが関わったさまざまな事例を通して紹介いたします。
 
第1章.商店街への支援事例
(1)商店街支援の取り組み
商店街支援活動は土日中心の活動のため、企業に勤めている診断士にとって活動しやすい取り組みのひとつです。商店街には多様な業種の店舗があり、普段の勤務先と異なる業種の商店主と接することにより見識を広めることができるほか、自身の勤務先で培ったスキルやノウハウを活用した提案を行うことができる、といった企業内診断士ならではの特徴もあります。以下に、当フォーラムにおける商店街支援事例を紹介いたします。
1)A商店街・WEBサイト構築支援事例

201304_tokusyu_01.jpg A商店街のWEBサイトの内容を充実するため、商店街の店舗紹介記事の執筆を支援しました。9名の企業内診断士と6名の商店街関係者の総勢15名で、約120件の店舗の取材を行いました。事前に取材要領を定め、ヒアリングシートの準備、商店主からのヒアリング、アピールポイントの聞き出し、紹介記事の執筆、と企業内診断士が中心となって作業を進め、WEBサイトの充実化に貢献をしました。A商店街では、この活動をきっかけに店舗の特徴を活かしたイベントを開催するようになり、商店街活性化につなげています。
2)B商店街・イベント支援事例

 有名な観光名所に位置するB商店街において、土日祝の3日間に渡ってイベントが行われ、8名の企業内診断士が集客・宣伝・来街者対応などの支援を行いました。さらに、イベント当日の支援だけでなく、イベント終了後に実施内容を整理し、課題の洗い出しと次回のイベントに向けた改善提案をまとめて、診断報告書として提出をしました。次の回に行われたイベントでは、この診断報告書の内容を役立てていただいたようです。
(2)商店街における診断先企業の開拓
当フォーラムでは、商店街支援に加えて、商店街を構成する個店の診断を実施すべく、診断先企業の開拓を行っています。
商店街支援の活動と比べると、個店ごとに診断テーマが異なることや、活動日程に平日も組み込む必要があることなど、取り組みが難しい面がありますが、取り組み事例をひとつ紹介いたします。
1)C商店街・個店診断事例

 東京都中小企業診断士協会の実施する商店街支援事業の活動の一環として、個店の企業診断を実施しました。当フォーラムのメンバーを募り、15店舗に対する診断を実施しました。各店舗には、診断報告書〔図表1〕をもとに経営改善に役立てていただきました。
 
第2章.商店への診断事例
(1)商店診断の意義とは
前章で商店街の個店診断に触れましたが、限られた経営資源や業況に応じて柔軟な対応が求められる商店診断は、診断スキルを高めるだけではなく、勤務先企業で染み付いた固定観念を払拭し、診断先の状況に適した診断のセンスを磨く場として意義があります。
(2)商店診断の取組み
1)診断先へのアプローチ

201304_tokusyu_02.jpg 当フォーラムでは行政が行う出前経営相談事業を活用しています。役所常駐の必要がなく、休日や平日夜間でも活動ができる点が企業内診断士にとっては好都合となっています。ただ、診断先の獲得は、紹介だけでなく自らの開拓活動が欠かせません。
2)商店でのヒアリング

 各商店へ訪問をして、ざっくばらんにヒアリングします。最初は相談することなど無いという場合でも、話が進むにつれ経営相談につながっていくことがあります。
3)診断報告例

 休日や平日夜を利用して調査、報告資料作成を行います。わかりやすく、求められている相談内容に対して端的に伝えられるように心がけます。商店診断では小売業が多いため、診断チェックシートを当フォーラムでまとめ、活用しています。〔図表2〕は会員が実施した商店の一例です。
(3)商店診断での心がけ
1)教えてもらう姿勢

 規模は小さくても店主は一国一城の主であり、高いプライドを持って仕事をしています。上から目線とならないように、業界のこと、経営のことを教えてもらう姿勢で臨むことで、より有効な情報や課題の糸口を引き出すことができます。
2)大企業の感覚の払拭

 勤務先企業での常識が、商店では通用しないことに度々遭遇します。たとえば、自分は大企業にいるため何でもパソコンを使うのはあたり前でも、商店では手書きの売上計算や、連絡手段は電話とファックスで行うことが少なくありません。そこで、最初はIT活用の提案をしていましたが、経営者のITスキルやメンテナンス、セキュリティ対策などを考慮し、アナログのままでの提案へ変更したケースもありました。
(4)商店診断における企業内診断士の強み
1)診断士の知識と勤務先企業での実務経験を生かした提案

 中小企業診断士として学んだ知識と、本業で培った自分の専門分野の知識や経験を関係付けたより具体的な提案ができる点が、企業内診断士の強みといえます。
2)ボランティア的な診断活動

 企業内診断士は、本業の無い週末や平日夜等の時間を活用して、専門分野を活かした高いスキルや志を持ちながら、身近な経営相談に対応することができます。プロの経営コンサルタントへ高額の報酬を支払う余裕が無い商店や経営課題を気軽に相談したい商店に対して、経営相談のハードルを下げることに強みを発揮できます。
 
第3章.飲食店への提案事例
当フォーラムでは、会員自らが案件を発掘して実務診断を行うことにも取組んでいます。仕事上の繋がりや友人知人といった、会員の人的ネットワークを通して案件を発掘しています。ここでは、過去の「飲食店(居酒屋)への売上増大に向けた提案(マーケティング・アイディアの提案)」事例をもとに、具体的な活動の流れや手法について紹介いたします。
201304_tokusyu_03.jpg(1)診断チームの組成
案件の発掘者(以下、「リーダー」)が、当フォーラム会員のメーリングリストを使って、診断チームメンバーを募集します。その際、対象企業の業種、求められている診断内容、実施期間、募集メンバー数等の情報を提供します。その情報をもとに、案件への参画を希望する会員は、リーダー宛てに名乗りを上げます。対象案件に関する得意分野を持つ方、対象業種の経験を積みたい方等さまざまです。今回の事例では10名の会員が参加しました。
(2)事前準備~飲食店訪問
リーダーは、診断対象である飲食店および業界動向に関する情報を、参加メンバーへ連絡するとともに、飲食店訪問日程の調整等を行います。メンバー全員が集まって打合せを行うことは難しいため、メーリングリストやDropbox等のツールを活用することで効率的に情報共有・活動に関する調整を行いました。
(3)メンバー各自での提案内容の検討~診断チームとしての提案まとめ
飲食店を訪問(お客として飲食店のサービスを体験)後、「売上増大に向けた提案」をメンバーが各自検討します。メンバー間で提案内容を集まって擦り合わせることが難しいことから、「共通の提案フォーマット」を使用しました。具体的には、①提案内容、②提案に至った背景、理由、③想定される効果、④実施にあたっての留意事項、を提案毎に記載するというものです。
そして、メンバーからの提案をそのまま診断先に提示するのではなく、参加メンバーが薦める提案に投票するという「AKB48方式(別名「いいね!」方式)」を採用しました。診断活動にゲーム要素を取り入れることで、「より積極的にかつ楽しく診断活動に取り組めた」と本件に参画したメンバーは感じています。また、投票結果は診断先にとっても参考にしていただけたものと思います。
(4)企業内診断士による飲食店診断の特徴
誰しも馴染みのある飲食店は、企業内診断士にとっても関わりやすい診断対象です。しかし、「活動時間の制約」がありそれを克服すべく、〔図表3〕のように、活動手法についてさまざまな工夫を凝らしました。また、多様な経験・スキルを持った診断士が参画することで幅のある提案が行える点は、企業内診断士による「チームでの診断」の特徴と考えます。
 
第4章.行政や独立診断士との連携・協力事例
(1)連携・協力の必要性
行政が中小企業政策を展開する際や、独立診断士がコンサルティングを行う際には、限られた予算のなかで最大限の成果を上げるため、一定以上の品質を担保できる協力者が必要な場合があります。一方で、企業内診断士は、単独の活動では、実務経験の機会や実務ポイントの獲得のチャンスは限られています。そこで、当フォーラムでは、城北支部や各区診断士会の支援も得て、行政や独立診断士との連携を図り、協力関係を築くことにより、企業内診断士の活躍の場を獲得しています。以下に具体例を挙げます。
(2)行政との連携・協力の事例
1)行政による区内の中小企業の実態調査

 行政からの委託事業に参加し、区内の中小企業を巡回し実態調査を行い、中小企業診断士が有する中小企業施策背景の知識も交え、地域中小企業施策の説明も行いました。
2)行政による優良企業紹介冊子の原稿作成

 行政からの委託事業に協力し、区内の優良企業の紹介冊子作成にあたり、対象企業への取材や既存情報の更新を行い、その企業の「強みの紹介」を作成しました。
3)行政による店舗表彰にあたっての取組み  

 行政からの委託事業に参画し、評価制度設計に関わり、週末等を活用した店舗調査も行いました。

(3)独立診断士との連携・協力の事例
1)飲食店診断の本への原稿提供

 独立診断士の方が記事を連載されている飲食店月刊誌の企画で、飲食店診断を行う編成チームに参加させていただき、改善提案の内容を検討し、掲載していただきました。
2)商店街通行量の現地調査・分析の協力

 独立診断士の商店街コンサルの支援として、多額の費用をかけずに、通行量調査・分析等、大人数を必要とする作業についての協力を行いました。
3)企業の財務分析・改善提案のサポート

 独立診断士が手掛ける診断案件へ財務諸表分析・改善提案等の業務を担当しました。
(4)連携・協力のメリット
行政や独立診断士にとってのメリットは、企業内診断士を活用することにより、低コストで、診断スキルを持つ一定レベル以上の人材を大人数確保し、調査・診断・改善提案等の活動ができることです。また、複数メンバーでの取組みで、多面的な視点での改善アイデア出しができ、提案の内容に変化を出すことができます。更には、企業内診断士の勤務先企業での専門性や経験・ノウハウの一部を活用することもできます。  
一方、企業内診断士にとってのメリットは、実現場の体験機会を得て診断・改善提案スキルを高められるとともに、実務ポイントも獲得できることです。そして、成果に裏打ちされたプロの実践的な分析スキルや改善手法も学ぶことができます。また、勤務先企業での本業とは異なった、たとえば、通行量調査や専門誌への記事の掲載等、非日常的な経験ができます。報酬が出る場合は、副収入を得て実務診断を行うこともできます。
このように、行政や独立診断士と企業内診断士が連携・協力を図ることにより、相互に、「WIN-WINの関係」の活用メリットを享受することができています。
 
終章.むすび
ここまで紹介した事例のように、当フォーラムの会員は、勤務先企業に所属しながら取り組みができるよう商店街支援や小売店、飲食店診断といった週末や平日の夜間の活動を中心に、行政や独立診断士の先生方からの情報も活用し幅広く実務活動を行っています。
最後に、最近の定例会で取り組んでいる事例を二点紹介します。
(1)勤務先の業界別ワーキング
一点目は、勤務先の業界別ワーキングです。大手企業の中には、企業グループ内で中小企業診断士会を結成し、課題を共有しながら活動している場合がありますが、それは一部の限られた企業のみであり、一般的な企業内診断士がおのおのの企業内でそのような活動をする機会はほとんどありません。そこで、当フォーラムでは、ある程度業界をグルーピングしたなかで、共通の課題や活動内容を模索し、各業界の診断士がテーマの洗い出しを行っています。具体的に、その活動単位は、「商業・サービス業界」、「情報通信業界」、「金融業界」、「ものづくり業界」の4グループとなっています。
まだ、素案段階ですが、「情報通信業界」グループでは、商店街各個店に対するホームページ作成支援やパソコン操作の出前説明、商店街情報発信支援、「金融業界」グループでは、金融関連テーマのセミナーコンテンツや講師派遣など実践的な活動を計画しています。
(2)実務ワーキンググループ(=WG)
二点目は、実務を通じて、企業内診断士として更新ポイントを得る機会を増やすことと、各自の診断能力向上のために、実務WGを立ち上げたことです。ワーキンググループは、商店(業種)WG、地域WG、セミナーWGの3グループがあります。商業(業種)WGでは、第1章で述べました商店街のホームページ作成などの支援を行っています。地域WGは第2章の「商店への診断事例」で紹介した行政から受託している出前診断活動の会員への紹介やサポート、地域コミュニティ支援の模索等、地域に根ざした活動を目指しています。更にセミナーWGでは、地域金融機関の営業マン向けにお客様の分析やお客様への情報提供、話題づくりができるようなセミナーを実施し、その後継続していく予定です。
(3)「企業内診断士フォーラム」の今後の取り組み
当フォーラムは、会員になった動機も、参加目的や、会への関わり方も一人ひとり異なっています。また、入会時点における意識と、時間が経過してからの意識、意欲も異なるものだと考えています。2ヶ月に1回開催の例会には常に30名程度が参加していますが、当フォーラムでは、参加者がそれぞれの目的を会の内外で達成することができるよう満足度向上を図りたいと思っています。更に言えば、中小企業診断士の存在意義は、中小企業の支援にある訳ですから、今後さらにそのメニューを充実させていかなければならないと考えています。これまで行ってきた活動の延長として、
1)実務能力を磨き会員の営業力を向上させる取り組み
2)フォーラムの会員相互で案件を獲得し、会員にシェアしていく活動
3)実務ポイントの獲得だけではなく、診断報酬の出る案件の紹介
など、さまざまな「場」の提供を推進し、進化を続けていきます。

【「企業内診断士フォーラム」への問い合せ先(活動内容・入会など)】
代表幹事/中村昌幸  [E-mail]nakamasa@m7.gyao.ne.jp


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