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2013.11.28
ハイブリッド・コンサルタント(企業内診断士) 活用スキーム
ハイブリッド・コンサルタント(企業内診断士) 活用スキーム
城北支部 企業内診断士フォーラム 中村 昌幸
nakamasa@m7.gyao.ne.jp
 今号では先日2013年11月7日に開催されました平成25年度中小企業経営診断シンポジウムの第3分科会において東京協会長を受賞した論文を掲載いたします。
Summary(要約)
■ハイブリッド・コンサルタントとは?
 城北支部企業内診断士フォーラムは、勤務先企業を持つ中小企業診断士により構成される研究会であり、勤務先内外で中小企業診断士としての実践的な活動を行うべく、さまざまな取組みを行っている。本発表ではいわゆる「企業内診断士」を「ハイブリッド・コンサルタント」と再定義し、経営コンサルティングサービス提供を提案するものである。
■小規模事業者/団体等のコンサルティングサービス受給の課題
 ◦経営コンサルティングサービスへの費用捻出が予算規模的に難しいと考えられ、サービス受給のハードルとなっていることが考えられる。
 ◦経営課題をさまざまに認識しているものの、日々の業務に追われ、コンサルティングニーズを整理することが難しく、サービス受給のハードルとなっていることが考えられる。
 ◦客観的な外部の視点で、アドバイスを得てみたいという『ライトなニーズ』に対応したコンサルティングサービスの受け皿が見当たらない現状があると考えられる。
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■ハイブリッド・コンサルタントの特徴(強み)
 ◦中小企業診断士として、診断手法・経営知識等のビジネススキルの共通言語を共有し、スムーズなチーム組織結成による課題対応が可能である。
 ◦個々のハイブリッド・コンサルタントは、さまざまな業種・業態のノウハウを有しており、経営課題に応じた対応を行うことが可能である。
 ◦中小企業診断士として保有する知識や手法を、幅広く社会への活用と実践機会を重視する目的で、リーズナブルなコンサルサービス提供が可能である。
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■ハイブリッド・コンサルタントの課題と提供サービス
 コンサルティングサービス提供の活動時間帯の制約、サービス提供先とのマッチング機会の確保という課題が挙げられる。こうした課題に対して、小規模事業者・団体様へのコンサルティングサービスの"ファースト・コンタクト"となるべく、積極的に下記活動を行っている。
  ①就業時間終了後に活動が行われることが多い「商店支援」
  ②休日等を利用した支援が可能な「地域支援」
  ③就業時間後の自主セミナー等を対象とした「セミナー提供」
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■ハイブリッド・コンサルティングサービスの事例と成果
 実際に当研究会が取組んでいる事例と成果として、3つの事例で説明する。
 事例1:地域活性化コンサル提供
     「首都圏への魅力発信による地方都市活性化」コンサル事例
 事例2:商店街販売促進コンサル提供
     「商店街WEBサイト 商店魅力発信支援」コンサル事例
 事例3:従業員教育セミナー提供
     「マーケティング知識習得入門セミナー」コンテンツ提供事例
Ⅰ.ハイブリッド・コンサルタントとは
 城北支部企業内診断士フォーラム(以下、KSF)は、勤務先企業を持つ中小企業診断士により構成される研究会である。診断実務案件を開拓し、勤務先の枠外でも中小企業診断士として活動を行うべく、さまざまな取組みを行っている。我々は、経営コンサルタントとして独立し、生計を立てる中小企業診断士や、コンサルティングサービス企業とは、コンサル業務に従事する時間帯の制約や、営業活動等で異なる立場を持つこととなるが、勤務先で得られたビジネススキル+中小企業診断士のコンサルティングスキルを併せ持つ「ハイブリッド」なビジネススキルを活かした経営コンサルティングサービスの提供形態があるものと考えている。本稿では、いわゆる「企業内診断士」との名称を「ハイブリッド・コンサルタント」と再定義し、経営コンサルティングサービス提供のスキームを提案するものである。
Ⅱ.小規模事業者/団体等のコンサルティングサービス受給の課題
 小規模企業・団体には、起業して間もない事業者や、家業としての規模を保ちながら経営を続けている商店、地域需要に対応した団体など、多様な業種業態の事業者が活動を行う上で、大小さまざまな経営課題が存在している。経営者は必ずしも今後新たに取組む事業経営等について十分な知識・経験を有しておらず、また、社内に相談できる陣容も限られていることにより、外部コンサルタントの知識・ノウハウの活用が必要であるが、実際には十分に活用されているとは言えない状況である。その理由として、経営コンサルティングサービスを受けるには、相当な費用が必要との先入観や、費用対効果が不透明と見られることがサービス受給に踏み切れない要因となっていると考えられる。また、経営課題を認識しているものの、日々の業務に追われ、明確なコンサルティングニーズとして整理が行えず、具体的な相談に結びつかないこと。さらには、直面している経営課題や、直近の運営に支障はないものの、現状の経営への漠然とした不安や、経営計画の必要性について、客観的な外部の視点でアドバイスを得てみたいという『ライトなコンサルティングニーズ』に対応した受け皿が見当たらないことも、サービス受給の機会拡大を阻んでいる要因ではないかと考えられる。
Ⅲ.ハイブリッド・コンサルタントの特徴(強み)
 課題に対して、ひとりのコンサルでなく、複数の専門家がチームを組んで、多面的な視点でアイデア出しを行い、最適な改善提案を行うことができれば、より具体的な成果に繋がる経営コンサルティングサービスの提供が可能となる。ただし、多様な考え方をそのまま羅列するような改善提案では実践的とは言えず、複数での検討がマイナスの結果を招くことになりかねない。  
 KSFのメンバーは、中小企業診断士の持つ診断手法・経営知識等のビジネススキルを共通言語として、基本的なフレームワークや分析手順、課題解決手段を共有している。これにより効果的な課題対応に向けて、複数の中小企業診断士による【ハイブリッド・チーム】の組織を、迅速に編成して個別案件に対応している。このハイブリッド・チームは、各KSF会員が所属企業の業務から習得したノウハウ(業界ノウハウ、業種ノウハウ、業務ノウハウ)を有しており、それを効果的に組み合わせることで、さまざまな経営課題に対応した【ハイブリッド・コンサルティング】の提供が可能である。
 KSF会員による活動時間は、就業後や休日に限定される制約があるものの、中小企業診断士として保有する経営知識や診断手法によって、社会に貢献したいとの意欲を有しており、経営コンサルティングスキルを現場で磨くための実践機会を求めている。こうした背景と勤務先業務で収入を得ていることから、ハイブリッド・コンサルティングは、リーズナブルなコンサルティングサービスとして提供することが可能となっている。
Ⅳ.ハイブリッド・コンサルタントの課題と提供サービス
 ハイブリッド・コンサルタントは、コンサルティング活動時間帯に制約があることが課題である。KSF会員は、勤務先業務との調整を図りながら、コンサルティングサービス提供を行っており、活動時間帯の制約の範囲内で、クライアント様への訪問・打合せの時間調整や、チーム間の整合等を行っている。また、ハイブリッド・コンサルティングのニーズを発掘し、提供を行うための"営業活動"を行い、サービス提供の場を確保することも必要である。
 こうした課題への対応と、コンサルティングのサービス品質を高めるために、具体的な提供メニューを用意し、自らサービス受給者に発信することが有効である。KSFでは、会員によるワーキンググループをテーマ毎に組織し、具体的なコンサルティングメニューとして予め準備を行っており、小規模事業者・団体様にとり、経営コンサルティングサービスへ接するためのファースト・コンタクトとなるべく、KSFでは特に積極的に3つの活動を推進している。
 1つめは、就業時間終了後に活動が行われることが多い「商店支援」である。商店や商店街では、営業時間中は自店の対応で多忙であるため、営業時間終了後に商店主への経営支援や商店街会合が行われることが多く、KSF会員の活動時間帯と親和性が高いことから、積極的に取組んでいる。
 2つめは、休日等を利用した支援が可能な「地域支援」である。地域振興の取組みの主体としては、地域活性を志す個人や、小規模なグループが興しているケースが多く見られ、本業以外のボランティア的な活動が休日等を利用した時間帯で行われており、KSF 会員の活動時間帯との親和性が高い。具体的には、企画の立上げにあたってのマーケティング視点の支援や、組織立上げへの支援に、ハイブリッド・コンサルティングにより、経営に関する知識やノウハウの提供を行っている。
 3つめは、就業時間後に開催される勉強会や自主セミナー等への「セミナー提供」である。組織活性化や営業力強化のために従業員教育を行いたい小規模事業者や団体、部署単位の自主的な勉強会等が就業時間後に行われることも多く、KSF 会員の活動時間帯との親和性が高い。このためハイブリッド・コンサルタントによる中小企業診断士の持つ経営に関する知識やノウハウを、セミナー講師やファシリテーションにより提供を行っている。
Ⅴ.ハイブリッド・コンサルティングサービスの事例と成果
 KSFを「ハイブリッド・コンサルティングファーム」と位置づけ、その取組みを紹介してまいりました。最後に、ハイブリッド・コンサルティングとして、中小企業診断士のコンサル能力に加え、勤務先企業で培ったノウハウ(知識や経験)も積極的に活用した3事例を紹介する。
【事例1】「首都圏への魅力発信による地方都市活性化」コンサル事例
【ポイント】
 近年、都市圏・地方を問わず地域活性化への取組みは多く行われており、こうした取組みには、経営に関する知識やノウハウを活用した支援ニーズが存在し、外部専門家やコンサルタントの活動の舞台となっている。地域行政が全面的に取組む比較的大規模な活動のみならず、地方都市単位や地域団体等の草の根的な活動も多岐に渡り、大小さまざまな取組みも行われている。地域振興を志した構想段階や立上げ初期段階においては、予算的な制約や、運営ノウハウが乏しい中で、経営コンサルタントとの接点もないケースが多いと考えられる。「KSF 地域 WG」では、こうした経営コンサルタント等に気軽な相談機会を持てないケースにおいて「ハイブリッド・コンサルタント」による経営支援チームを活用いただくことが有効であると考え、地域振興に関する支援活動への取組みを行っている。
【効果】
 KSF会員が、信州地方都市の市役所職員様にお話を伺う機会があり、「首都圏から集客したいが、これといった特産品や観光名所がなく、市の知名度が低いため、対策を考えたい」「地元の人間で考えても視野が狭くなってしまい、第三者からの意見やアドバイスがほしい」とのお悩みをお聞きする。これに対してKSFの活動取組みを紹介するとともに、中小企業診断士の活用を提案したところ「首都圏からの集客について」支援要請をいただくこととなる。
 KSF 地域 WGの活動として、「ハイブリッド・コンサルタント」による支援チームを組織し、市役所職員様との打ち合わせを重ねて支援スキームの方向性を検討し、具体的な支援ターゲットとして、当該地域特産の麺食品の販売促進を通した知名度向上を行うこととした。ハイブリッド・コンサルタントによる支援チームは、休日を利用した現地視察や地元関係者との座談会を実施し、地域特産品の販促支援についての提案を実施している。座談会については、地元地方紙にも取組みが大きく取り上げられ、本案件への期待が感じられる。今後は都内商店街での特産品販売企画等の具体的な支援策を計画している。
現地視察と合わせて行われた
地元関係者との座談会の様子は、
地元紙一面でも取り上げられ、
支援チームへの期待も高まる。
2013年6月9日 大糸タイムス一面より
事例2:「商店街WEBサイト 商店魅力発信支援」コンサル事例
【ポイント】
 商店街運営は、各商店街の特性や活性度により状況がさまざまであるが、多くの商店街で商店街理事の努力が運営の成否に影響するケースが多く、理事の方も自身の商店運営の傍らで商店街運営に携わることになり、その負担は小さいものではない。そのようななかで、商店街加盟の意義や目的を保ちながら、継続的で発展的な商店街運営にあたり、経営コンサルタントによる支援が担う役割は大きいものと考えられる。商店街には活動予算の制約等もあるなか、「ハイブリッド・コンサルタント」による経営支援チームを活用いただくことが有効と考えられる。
 「KSF 商店支援 WG」では、商店業種毎の支援メニュー検討や、商店街販促支援等をテーマに研究・活動を行っている。商店街様とは、イベント運営等のライトな運営支援からの関わりをはじめ、お互いの信頼関係を醸成しつつ、組織活性化等への取組みへの支援など、段階的なパートナーシップを深めてゆくことが重要と考えられる。
【効果】
 都内商店街WEBサイトの商店紹介ページ開設プロジェクトへの支援要請をいただいた。80店舗を越える商店一つひとつの魅力を掘り起こすため、「ハイブリッド・コンサルタント」9名と地域住民による取材チームを編成し、コンテンツ製作に取組んだ。4つの取材チームのリーダーを中小企業診断士が務め、取材方法の取りまとめや、地域住民ボランティアの皆様との調整に対応したものである。各商店の紹介ページでは、商品・サービスの特徴を消費者へ訴求する記事作成を支援したが、こうした取材を通して店主自らが、店舗の魅力を見直す機会にもなり、個店の活性化にも活用可能なプロジェクトと考えている。引き続き、同商店街活性化事業への支援要請を受けており、商店街ビジョン策定やイベント支援等の踏み込んだ経営支援を推進するべく「ハイブリッド・コンサルタント」チームによる取組みが続けられている。
「商店街ホームページ拡充プロジェクト」として、中小企業診断士が「取材テンプレート」、「ヒアリングシート」を作成し、コンテンツ作成の支援を行った。
クラウドサービス等を活用し、80店舗を越える取材活動のスケジューリングや取材内容の確認を行い、プロジェクト運営支援を行っている。
事例3:「マーケティング知識習得入門セミナー」コンテンツ提供事例
【ポイント】
 中小企業や小規模事業者は、経営戦略やマーケティング理論・知識等の習得の機会をなかなか持つことが難しく、教育の重要性を認識しているにもかかわらず、効果的な教育機会を持つまでに、手が回らない現状がある。こうした現状へのひとつの提案として、「ハイブリッド・コンサルタント」による入門編的な経営基礎セミナーを提案するものである。
 「KSF セミナー WG」では、セミナー企画に対する基本指針を定め、提供サービスの品質を確保し、受講者がより興味を深められるような受講満足度の確保を目指している。
■KSF セミナー WGの基本方針
◦中小企業診断士の持つ経営知識の中から、代表的な経営戦略やマーケティング等の技法を取り扱い、経営に関する基本的な知識やノウハウを習得する機会として提供する。
◦セミナーの基本フォーマットは、社員の意識向上や知識習得意欲向上を促し、受講者が気づきを得るため、「座学+ワークショップ」型式で構成した参加型セミナーを企画する。
 KSF セミナー WGが提供するセミナーを受講後、さらに本格的な終日や合宿セミナー等を希望される場合には、東京都中小企業診断士協会や城北支部のネットワークを介して、より専門的な中小企業診断士によるセミナー企画への橋渡し役となることも想定している。
【効果】
 懇親会の会場にて、都内の某信用組合の理事様より若手職員に、資質向上に繋がる視点を持たせたいとのお悩みをお聞きし、資金的な余裕はないが、若手の経営コンサルタントとの接点を模索しているとのご相談をいただいた。これに対して「KSF セミナー WG」の活用を提案し、マーケティングセミナーの企画提案として「インストア・マーチャンダイジング」を題材にした2時間のセミナーを開催した。受講者によるグループワークと、講義による学習を組み合わせた構成とし、グループワークでの検討と発表を行い、その後の講義でマーケティング知識の考え方を説明し、商品配置についての答え合わせを行う構成とした。グループワークでは「店舗レイアウト図」と「商品カード」等の小道具を使用し、6〜7名毎のグループに分かれた受講者が頭と手を動かして最適な商品配置を検討した。商品配置については、"客動線"や"店舗レイアウト"、"関連購買"の考え方に基づいて採点を行い、グループ対抗で得点を競うことで、参加者がゲーム感覚で臨める内容とした。若手職員に気軽に参加させたい、との先方ニーズに合わせた構成と取り扱いテーマの選定により、受講者アンケートで満足度90%の結果を得ている。
■グループワークで使用した店舗レイアウト図(A3サイズ)
店舗レイアウト図の各枠内に名刺サイズの商品カードを配置する。
答え合わせの際には、商品カードの色とレイアウト枠内の色が同じであれば加点する等、小道具を工夫している。
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Ⅵ.おわりに
 本発表では、企業内診断士を「ハイブリッド・コンサルタント」と定義し、活用スキームを紹介している。中小企業診断士は、中小企業の経営支援を行うことが本質であり、なかでも我々が、経営コンサルティングサービスのファースト・コンタクトとしての役割を積極的に担い、経営コンサルティングサービス活用の裾野を広げることに、微力ながら貢献出来れば幸いである。

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