TOP >> コラム >>  特集 >>  事業再生~知的資産経営手法の導入~
コラム
最新の記事
月別の記事
2013.12.26
事業再生~知的資産経営手法の導入~
城南支部 知的資産経営研究会 中村 良一
URL:http://www.iabm.jp E-mail:r-nakamura@smesolution.jp
1.ツール開発の経緯
 本活動は、知的資産経営研究会有志6名(中小企業診断士、弁護士)により、「事業再生の現場プロセス」~見えない資産が経営を変える~(中央経済社、2013年6月)を共同執筆したことにより、まとめたものである。
 東日本大震災で有形資産の多くを失った企業が、知的資産(無形資産)を糧に復興を目指しているのが象徴的であるが、さまざまな要因で窮境に至る企業は、同様に有形資産が傷ついている場合が多い。このような窮境にある企業の事業再生のためのエンジン(駆動力)の役割を担うものとして、知的資産を取り上げた。
5p-図1.jpg
 事業再生の手法は、①債務カットを伴うような外科的治療(BS的アプローチ)と、②営業利益を改善させることを目指す内科的治療(PL的アプローチ)とに分けられる。
 知的資産経営手法の導入により、PL的アプローチによる経営改善が図られることを、事例を挙げて証明した。
 また、事業再生の包括的な理解を進めるため、弁護士にも参加してもらい、法的整理の手続き等のBS的アプローチの整理を行い、現代における私的整理、法的整理の課題を抽出した。
2.事業再生の概要と現代の課題
(1)事業再生手法の概要
 事業再生の範囲は広く、主に図表2のように私的整理と法的整理に分類することができる。
5p-図2.jpg
 法的整理が体系的であるが、再建型と清算型に分かれ、清算型はもちろんであるが再建型も同様に、企業再建のため債権放棄を得ることが目標となる。一方、私的整理においては、債権者は債権放棄をしても通常は、損金算入は認められない。わずかに大企業において債権放棄(無税償却)のスキームを含む私的整理ガイドラインや、事業再生ADRが利用されている。中小企業においては、再生支援協議会を用いたスキームがとられるが、リスケやDES、DDS等の手段が主で、債権放棄が実施されることは稀である。
 中小企業の再生スキームである中小企業再生支援協議会の活動状況は、図表3のとおりであり、その93%がリスケである。
6p-図3.jpg
(2)事業再生施策の歴史
 事業再生施策の歴史は、図表4のとおり、2000年の民事再生法施行前後に本格的となり、現在まで十数年の歴史である。
6p-図4.jpg
 バブル崩壊期には、民事再生法の前身といわれる和議法は、和議案(民事再生手続きにおける再生計画)が可決、認可されればその実行につき何の拘束手段もなかったことから、和議の申立てに対して債権者は同意せず、したがって和議手続きはすでに利用されなくなっていた。いわゆる倒産5法のうち、会社更生法の適用が困難な場合、他に事業再生に有効な手法がなく、破産に追い込まれることが多く、この反省から民事再生法等の施策が誕生した。
(3)現代の事業再生の課題
 バブル崩壊期、法的整理によって債務免除を得た企業は、不採算事業を切り捨てることによって、再建を達成することができた。
7p-図5.jpg
 しかしながら現代の厳しい経済環境の中、本業といえどもPL的アプローチを同時に行わないと企業の再建が危うい状況にある。ましてや私的整理においてリスケによって債務を先送りしただけでは、真の再建を勝ち取ることができない状況にある。
 現代の事業再生においては、BS的アプローチ(外科的治療)が必要な場合はもちろんあるが、同時にPL的アプローチ(内科的治療)が重要となっている。この場面において、事業再生のエンジン(駆動力)になる、知的資産経営の導入が有効なのである。
3.知的資産経営の概要
(1)知的資産経営のやさしい概要
 これはあるプロサッカーチームの再建のフィクションである。
8p-上図.jpg
 社長はまず経営理念を定めた。
8p-中図.jpg
5年目の成績は!
8p-下図.jpg
 社長が行った活動は以下のとおりである。「形のあるもの」「お金で買えるもの」から「形のないもの」「お金で買えないもの」の順の活動を整理する。
9p-上図.jpg
 「形のないもの」「お金で買えないもの」の方が、差別的優位性を発揮しやすく(同時利用の許容性・相乗効果・模倣困難性)、企業としての強さを表現している。分類方法としては、「人・人材」は『人的資産』、「仕組み」は『構造資産』、「対外関係」は『関係資産』として整理する(MERITUMガイドライン)。
9p-下図.jpg
(2)「3分類」を活用した事業再生
①リソースの発見
 知的資産経営導入の第1段階は、前述したプロサッカーチームの強みの抽出と3分類(人的資産・構造資産・関係資産)を用いた整理である。通常このプロセスはSWOT分析によって行うが、主に企業の保有する強みを重点的に抽出する。これは事業再生の段階にある企業は、強みを増強し、弱みを補強するというような平均的な戦略をとる余地が少ないためである。また、ヒト・モノ・カネ・情報等の経営資源のうち、モノ・カネについては弱みに入る場合が多く、これは捨象する。
10p-図6.jpg
②アクティビティの方向性
 前述した知的資産の3分類の増強活動をアクティビティというが、これについても平均的ではなく、差別的優位性を発揮できる方向に伸ばしていくことを考える。それぞれの企業が自社の強みを発揮できるように、ビジネスモデルを構築することが重要となる。
10p-図7.jpg
③知的資産経営手法導入による期待効果
 事業再生計画を推進していくエンジン(駆動力)の役割が、知的資産経営である。事業再生計画を単なる数字で埋めるのではなく、その価値創造のプロセスとビジネスモデルを説明するものが、知的資産経営報告書である。これを説明することによって、ステークホルダーの信頼が得られ、社内では目標の明確化が図られ、事業再生のゴールに向かって前進していくことになる。

TOP