TOP >> コラム >>  特集 >>  成功事例集の出版によって 経営革新計画施策の有効性を広く産業界に発信
コラム
最新の記事
月別の記事
2014.02.27
成功事例集の出版によって 経営革新計画施策の有効性を広く産業界に発信
成功事例集の出版によって
経営革新計画施策の有効性を広く産業界に発信
経営革新計画・実践支援研究会 戸田 正弘
E-mail:mtoda248@gmail.com
Summary(要約)
〈活動の経緯/開発の経緯〉
 当研究会の目的は、東京都の経営革新計画を支援し、その計画を実現するためのノウハウを身につけ、支援することにより、中小企業の発展に寄与することにある。よって、副次的には中小企業診断士のビジネスの創造に結びつけ、公的機関の支援のみならず、民間ベースのコンサルティングに結びつける能力を高めることを目的としている。
 そのことから、(1)優秀賞を受賞した企業等の経営者を毎月ゲスト講師として招き、成功に至るまでの苦労話を傾聴し、企業の革新ドラマを疑似体験する学びの"場"である。(2)さらに、東京都産業労働局商工部経営支援課の課長を招く等、都の経営革新計画フォローアップ事業を理解し、計画承認企業へのフォローアップ訪問を実行する実践の"場"でもある。さらに、東京都が年度末に発行する「経営革新計画事例集」への掲載について、フォローアップ訪問を通じて企業に働きかけ、会員が原稿を執筆して、当該企業の成功事例を紹介する、という一連のサイクルで活動している。(3)中小企業診断士が、自ら経営革新計画承認企業の計画実行を推進し、その成果発表もするようになっている。
 東京都の経営革新計画承認企業数は一時期減少したが、ここにきて増え続けており、都が発行する事例集や2010年度から発案された優秀賞の表彰制度が奏功しているように見受けられる。
 しかし、この優れた施策の存在さえも知り得ずに、経営革新に乗り遅れたままの中小企業が、依然として多いというのも事実である。
 この情報発信を補完し、この施策の有効性を中小企業診断士の目線で取材・再構成し、掲載企業には誇りを持たせ、読者には中小企業であっても経営革新計画の実践によって元気企業になっている姿を披瀝し、勇気を与え、中小企業診断士には希望を提供できるようにと考え、2012年3月に「経営革新計画で成功する企業」(31社の事例)として上梓したのである。
 「同PART②」(25社の事例)を2014年11月に発行すべく、編集作業が進行している。
201403_tokusyu_1_4.jpg
Ⅰ.当研究会の概要
 支援ツール開発の経緯を説明する前に、当研究会の概要を下記のとおり紹介する。なぜなら、当研究会の発足は2008年4月であるが、当該ツールを世に出すまでに当研究会員の4年間の研鑚を要したからである。
1.研究会の概要
 (1)研究会名:経営革新計画・実践支援研究会(略称:KKJS研)
 (2)代表者名:小林 勇治
 (3)発足年月:2008年4月
 (4)会 員 数:77名
 (5)開催回数:12回
 (6)開催日時:第3または第4金曜日 18:15~20:30
 (7)開催場所:東京都中央区日本橋堀留1-11-5
         (一社)東京都中小企業診断士協会中央支部事務所
2.研究会の目的、テーマ
 旧経営革新法、現中小企業新事業活動促進法に基づく、経営革新計画を支援し、その計画を実現するためのノウハウを身につけ、支援することにより、中小企業の発展に寄与することにある。よって、副次的には中小企業診断士のビジネスの創造に結びつけ、公的機関の支援のみならず、民間ベースのコンサルティングに結びつける能力を高めることを目的としている。
3.研究会の活動内容
(1)革新企業の社長の講演
  前年度に東京都経営革新優秀賞(最優秀賞、優秀賞、奨励賞)を受賞した企業経営者を招聘し、現場の生の体験をご講話いただく。(例会の第2講話)
(2)東京都の経営支援課長等の講演
  東京都産業労働局商工部経営支援課の課長や、(一社)東京都中小企業診断士協会事業化推進部長等を招聘し、行政ニーズの把握や推進のための注意事項を習得する。
(3)東京都のフォローアップ事業への協力
  ①実施フォローアップ
   承認企業からの希望に応じて、中小企業診断士が専門家として支援する。
  ②終了時フォローアップ
   専門家を派遣し、PDCAサイクル定着など経営支援を実施する。
  ③フォローアップ確認
   優秀賞候補企業に訪問し、内容審査の協力。 
(4)東京都内中小企業経営革新計画事例集の原稿執筆
  前述のフォローアップ事業で訪問した企業を取材し、東京都が年度末に発行する事例集の原稿を、企業と連携して制作する。
(5)経営支援事例の講演
  会員の中小企業診断士が、経営革新計画立案支援やフォローアップ事業支援を通じて体験・研究した内容を講演する。(例会の第1講話)
Ⅱ.ツール開発の経緯
1.取り組みに秘めた想い
 「経営革新なくして企業の持続・成長なし」というメッセージが1冊に凝縮され、それを手にした中小企業経営者が勇気づき、経営革新に挑戦する契機となるような本を発行したいという想いが、研究会の中で日増しに充満していった。というのは、東京都の経営革新計画優秀賞を受賞するような企業経営者の方々は、誰もがクレイジーと思えるほど情熱的かつ努力の天才で、研究会の例会でご講演いただき、成功に至るまでの苦労話を聴くたびに、感動で胸が熱くなり、未だ革新の緒についていない多くの迷える経営者の方々の背中を押す本が必要だという結論に達したからである。
 当研究会が東京都と連携し、制作に協力している「東京都内中小企業経営革新計画事例集」は、経営革新計画施策の有効性を手早く俯瞰でき、行政がここまでやるかと感心できる質の高い出版物であると言える。しかし、頁数に制限があり、冊子を入手できる場所が限定され、年度ごとに版が変わるという制約条件を考えると、この施策の有効性を産業界の隅々にまで、宣伝するには限界がある。
 そこで、経営革新に興味・関心のある方であれば誰でも書店で入手でき、通読すれば経営革新計画施策の全容がわかり、活用のヒントが得られるような本の編纂が求められたのである。
2.開発ツールのポイント
 研究会の中で議論を重ねた結果、開発する単行本に必要な条件は、次の4点に絞られた。
(1)読者への感動の提供
  東京都の最優秀賞、優秀賞、奨励賞受賞企業は必須としても、受賞企業だけに留まらず、執筆者が精魂込めて書きたいと思う価値ある企業を厳選すること。
(2)最適な質と量の提供
  経営者の経営革新に賭けたチャレンジ精神を余すところなく伝えられる最低限の頁数を確保し、1社当たり5~6頁とすること。
(3)利便性の提供
  読者が興味本位に読みやすい業種別・数社単位の章建てとすること。
(4)網羅性の提供
  経営革新未経験の経営者と、支援を志す中小企業診断士の双方の入門書となり得る内容の具備。序章では、経営革新計画承認制度と表彰制度の概要・企業のメリット・社会的意義などを紹介するほか、事業期待効果と実現可能性を高める効果的な進め方まで学べること。
3.実際の開発ツール
(1)出版物の体裁
2012年3月28日 第1刷発行
著 書 名:「経営革新計画」で成功する企業
編 著 者:小林勇治
発 行 者:脇坂康弘
発 行 所:株式会社同友館
発行部数:2,000部
201403_tokusyu_1_5.jpg
(2)出版物の目次
 序章 経営革新計画の承認と効果ある進め方
1.経営革新計画承認とその本質を知る 2
2.経営革新計画フォローアップと東京都の表彰制度への応募 10
3.企業・事業ソリューションはこのように進める 14
4.事業期待効果と実現可能性を確認する 18
5.経営革新を実現し中小企業利益向上による社会貢献をしよう 21
 第1章 経営革新計画承認で躍進している製造業の事例
1.高品質・低コスト「消音装置」で躍進する アルパテック㈱ 24
2.消火設備用鋼管加工の内製化とモジュール化で躍進する ㈱ニチボウ 30
3.オートバイ用HIDヘッドライトで躍進する ㈲サイン・ハウス 36
4.家庭用品進出で躍進を目指す鴨肉トップの コックフーズ㈱ 42
5.新技術でリビングの風を変える バルミューダ㈱ 47
6.アロマの香りで店内を演出する企業に変身した ㈱メリ・テック 52
 第2章 経営革新計画承認で躍進している建設業の事例
1.改良フーチングレス・パネル工法で躍進する ㈱コクヨー 60
2.高級路線で収益体質をつくり上げた ㈱新居伝 66
3.提案型デザインリフォーム事業で躍進する ㈱カネタ建設 71
4.吸引掘削工法の実用化により経営革新した 山美津電気㈱ 76
5.建売住宅のブランド価値を追求する ㈱Promoters 81
6.内装解体から産業廃棄物処理一貫体制で発展する ㈱ナンセイ 86
 第3章 経営革新計画承認で躍進している卸売業の事例
1.トータルビジネスサポートで躍進する ㈱シービージャパン 92
2.脱臭ビジネスに着目して市場開拓に挑む アイダッシュ㈱ 97
3.新型インフルエンザ対策抗ウィルスマスクで成功した ㈱セス 102
4.塗装業より環境企業へ経営革新を図った ㈱松茂良 108
5.環境にやさしいアスベスト工法普及で躍進を図る ㈱ウィズユー 113
 第4章 経営革新計画承認で躍進している小売業・飲食業の事例
1.顧客と深くつながる仕組みで囲い込みを図る ㈱ファイエット 120
2.経営指導からマーケティング代行業に革新した ㈲ビーウィッシユ 125
3.店舗展開の経営革新 玩具小売業 ㈱サンマルタ 131
4.フランチャイズチェーン展開・飲食店への進出に成功した ㈱ひびき 136
 第5章 経営革新計画承認で躍進しているサービス業の事例
1.多彩な教育サービス拡充で躍進する ㈱未来舎 142
2.中国人向け訪日結婚式サービスへ業容拡大する ゲストハウス㈲ 147
3.セル生産方式で更なる飛躍を目指す ㈱セルフ 152
4.総合リゾート会社へと躍進する ㈱小笠原エコツーリズムリゾート 157
5.企業価値向上による事業再生に取り組む ㈱ノア総合研究所 162
 第6章 経営革新計画承認で躍進しているeビジネスの事例
1.データベースのリモート保守サービスを展開する ㈱アイ・ティ・プロデュース 168
2.無線通信技術を活かしてニッチ市場に攻め込む ㈱イーアンドエム 173
3.介護ソフト新シリーズで経営革新をした ㈱ジャニス 178
4.自社商品の開発・販売で飛躍する ㈱ゲネシス コンマース 183
5.ネットで絵本の購買行動を革新し、飛躍する ㈱絵本ナビ 188
Ⅲ.開発ツールの機能
1.暗黙知を形式知に変換するプロセスの提供
 当研究会において、経営革新計画に関する知識を創造していくには、暗黙知と形式知の相互変換を持続的に回していく仕組みが必要だった。革新企業の社長の体験は、暗黙知の山であり、各社各様の多様な暗黙知の束を分類・整理し、そのエッセンスをわかりやすく文章で形式知化するのは骨の折れる作業である。これを研究会員の一人ひとりが思い思いのやり方で、企業を取材し書いていくとしたら、トーン&マナーが揃った一貫性のある著作物には到底なりえない。そこで、膨大な暗黙知の山を丁寧に切り崩して、整理しやすい形式知に段階的に変換していくプロセスが求められた。
KKJS研究会の知識創造プロセス
201403_tokusyu_1_7.jpg
暗黙知
共同化(S)
◦革新企業の社長の体験談に共感する
◦中小企業診断士の支援体験談に共感する
◦東京都の経営支援課長から施策説明を受け理解する
暗黙知
表出化(E)
◦事例集などを参考にして自社の経営革新の体験談をスライドにまとめ研究会でプレゼンする
◦先行の支援事例を参考にして支援体験談をスライドにまとめ研究会でプレゼンする
◦革新企業の社長が中小企業診断士のインタビューに答える
内面化(I)
◦フォローアップ事業で企業訪問することで新たな暗黙知を得る
◦フォローアップの報告書と事例集作成により新たな暗黙知を得る
◦単行本の原稿を執筆することで経営革新に対する洞察が深まり新たな暗黙知を得る
連結化(C)
◦経営者は経営革新計画をステークホルダーに開示して連携を深める
◦フォローアップ事業で収集した情報を東京都の事例集にまとめる
◦成功事例集を単行本にまとめ産業界に広く発信する
※野中郁次郎・竹内弘高(著)「知識創造企業」東洋経済新報社(1996)を参考に筆者作成
 すなわち、その変換プロセスの段階とは、次の4段階に整理できる。
(1)革新企業の社長が体験談(暗黙知)をスライドにまとめ発表する(形式知化)
(2)当研究会員が支援体験談(暗黙知)をスライドにまとめ発表する(形式知化)
(3)当研究会員が、フォローアップ訪問時の支援と取材体験(暗黙知)を基に、東京都の事例集を執筆する(形式知化)
(4)当研究会員が、上記(1)~(3)のプロセスを経て蓄積した形式知に、独自の暗黙知を統合して単行本の原稿を制作する(形式知化)
 当研究会におけるこれらの段階的な変換作業の繰り返しが、形式知の集大成である単行本の品質を高めているのである。
2.書く機会の提供
 共著とはいえ単行本を執筆する機会はそう多くはない。中小企業診断士の必須能力の一つである書く能力を鍛える機会となる。
3.情報発信機能
 書店やネット販売で入手できる単行本を出版することは、有力な情報発信手段になる。
Ⅳ.ツール開発の成果
 次の4点の定性的な効果が持続的に拡大している。
1.経営革新計画施策の有効性の見える化
 経営革新計画承認を受け、成功している企業の事例集を単行本にしたことで、施策の有効性を一層顕著に明示することが可能になった。
2.掲載企業の強みの見える化
 掲載企業の経営者の大半から、掲載によりステークホルダーに対して自社の強みを明確に説明できるようになり、競争優位性が一層高まった、と感謝されている。
3.中小企業診断士のビジネス機会の創造
 当研究会の活動成果は、東京都の経営革新計画施策の推進の一翼を担うだけに留まらず、中小企業診断士が民間企業の経営革新の支援者として営業活動を展開する際に活用できる参考書や宣伝材料を提供し、ビジネス機会の創造に寄与するものとなっている。
4.暗黙知の形式知化による知識体系の共有
 企業が経営革新で成功に至るプロセスは各社各様で、その暗黙知に満ちた革新ストーリーを社外の第三者が取材し、わかりやすく伝えるのは至難の技である。この暗黙知の束を会員が形式知に変換し、誰もが活用しやすく体系化するには、一定のスタイルを持つ単行本化は必然であり、その完成により、効率的な知識共有が可能になった。
Ⅴ.今後の予定
 第1弾が中小企業経営者と経営革新を支援する中小企業診断士や税理士など多くの実務家から好評と応援をいただいたため、経営革新計画の承認を受け成功している中小企業25社の事例を集めた『「経営革新計画」で成功する企業PART②』を、2013年11月に発行すべく、編集作業が進行している。

TOP