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2014.05.25
『消費者WEB調査結果から見た日本酒需要開拓の可能性』

『消費者WEB調査結果から見た日本酒需要開拓の可能性』

東京協会認定 <酒と食>マーケティング研究会
 榎本博之・老川多加子

 <酒と食>マーケティング研究会(旧・酒類業研究会)では、平成25年度の取り組みとして、将来的な日本酒需要拡大につながる情報提供や提言を行うための基礎データの作成を目的に、消費者WEB調査を実施しました。
 本稿では、この消費者WEB調査の集計・分析結果の一部を紹介させていただきます。
 調査は平成25年9月にマクロミル社を通じて実施しました。予備調査として5,000名、本調査では予備調査より抽出した416名を対象としています(いずれも、首都圏在住の20歳以上)。以下では、本調査(全35問)の結果の一部を取り上げます。

1.アルコール全般の飲用頻度
 「買って飲む」頻度は「週1~2日」以上、「飲食店で飲む」頻度は「月1~2日」以上で半数を占める
 本調査は、消費実態の基礎データとなるアルコール全般の飲用頻度を尋ねるところから始めています(「アルコールを飲まない」という方は、回答対象よりはずしています)。「買って飲む」場合は「ほぼ毎日」から「週1~2日」以上の頻度の累計で60.3%、「飲食店で飲む」場合は「ほぼ毎日」から「月1~2回」以上の頻度の累計で47.8%となりました。

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 また、詳細データは割愛しますが、性別、年代別、ライフステージ(未・既婚および子供の有無)別等の分析も行っており、以下のような傾向が浮かび上がりました。
◦若者(20代)の飲酒離れが叫ばれるが、「買って飲む」頻度は他世代より著しく少ないものの、「飲食店で飲む」頻度については他世代との差はなかった。
◦男性の場合、「買って飲む」頻度は、結婚を境に著しく増える。
◦女性の場合、境は出産・育児にある。既婚子あり女性の「飲食店で飲む」頻度は、著しく低い。ただし、「買って飲む」頻度の差はほとんどない。出産前後の一時的禁酒はあるが、育児が落ち着くと、"外飲み"の機会こそ減るものの"家飲み"はしている。

2.酒類毎の飲用頻度
 日本酒をよく飲む人の割合は1割程度
 酒類毎の飲用頻度についても「買って飲む」「飲食店で飲む」それぞれで尋ねています。グラフ2は「買って飲む」場合についての全回答者(316名)結果をまとめたものです。
 個別に見ると、「ビール類」を「ほぼ必ず飲む」が45.9%です。「割とよく飲む」も含めると約7割となり、依然、「ビール類」の存在感が大きいことが分かります。これに続くのが「酎ハイ・サワー」で、「ほぼ必ず飲む」と「割とよく飲む」を合わせると約5割となっています。これに続く存在感を示すのは「ワイン」、そして「焼酎・泡盛」です。本調査の中心テーマである「日本酒」は、これらの後塵を拝する結果となりました。

特集-3p-グラフ2.jpg3.アルコール全般飲用頻度別に見た、各酒類の飲用頻度
 アルコールをよく飲む人ほど「日本酒」は好まれ、「ワイン」は飲む頻度に関係なく受け入れられている
 前述の「1.アルコール全般の飲用頻度」と「2.酒類毎の飲用頻度」をかけあわせたクロス分析も試みました。詳細データは割愛しますが、「日本酒」「焼酎・泡盛」「ビール類」は正の相関、「酎ハイ・サワー」は逆相関、「ワイン」は相関なしとなりました。つまり、「日本酒」「焼酎・泡盛」「ビール類」は飲用頻度が高い方ほどこれらの酒類を好んで飲み、他方、「酎ハイ・サワー」は飲用頻度が低い人ほどこれを飲む傾向にあり、そして、「ワイン」はそもそもの飲用頻度に関わらずよく飲まれているということです。
 特にワインについては、お酒に対するこだわり層だけでなく、幅広い層に受けられているのが分かります。一方で、日本酒は飲用頻度の低い人には好まれない傾向が表れています。

4.日本酒の飲用頻度
 男性の方が日本酒を好み、世代を重ねるごとに飲む割合が増える
 女性は「ほぼ必ず飲む」と「割とよく飲む」割合の世代差がない
 「2.酒類毎の飲用頻度」の内、日本酒について性別年代別で比較したのがグラフ3と4です。「ほぼ必ず飲む」と「割とよく飲む」の合計値は総じて、「飲食店で飲む」が「買って飲む」を上回っていますが、その差は顕著とまではいえません。男女間、世代間での違いは、飲む場所によらないといえます。
 男女での違いは、一般イメージ通り、女性の方が日本酒を飲まない、という点です。
 性別年代別で見ると、男女とも、世代が上がるにつれ日本酒をよく飲む、ということがいえます。ただし、女性の場合、「まず飲まない」に着目すれば、"世代が上がるにつれよく飲む"が当てはまるものの、「ほぼ必ず飲む」と「割とよく飲む」の合計値で見ると、男性のような世代間差はほとんど見られません。特に30代に限定すると、「男性30代」より「女性30代」の方が、日本酒を好む傾向が強いといえます。

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特集-4p-グラフ4.jpg5.日本酒の飲用頻度と各酒類の飲用頻度とのクロス分析
 飲食店で飲む方が自宅で飲む場合より、日本酒を試す機会が多い
 ワインをよく飲まれる方は、日本酒を飲む頻度が高い
 「4.日本酒の飲用頻度」を他の酒類の飲用頻度とクロス分析し、他の酒類をよく飲む方が日本酒をどの程度飲んでいるかについてまとめました。そのうち、グラフ5では「飲食店で飲む」頻度を表したものです。
 飲食店の方が、自宅で飲む場合と比べ、日本酒を試す機会が多くなります。また、「焼酎・泡盛」「ウィスキー等」よりも「ワイン」の方が日本酒を飲む頻度が高くなっていることが「飲食店で飲む」場合での特徴となっております。
 つまり、「3.アルコール全般飲用頻度別に見た、各酒類の飲用頻度」で見たように幅広い層に受け入れられているワインとの相性は高く、関連付けや提案販売などで日本酒の飲用機会を増やすことが考えられます。

特集-5p-グラフ5.jpg6.日本酒を飲むシーン
 男性は「自宅で一人」、女性は「飲食店で友人や家族と一緒」が多い
 日本酒をどのようなシーンで飲むかについてですが、全体では「飲食店で友人や家族と一緒に」が55.0%と過半数を占める一方、「宴会で」は17.8%と少なくなっています。接待や宴会ではあまり飲まれず、近しい関係の方と飲まれているようです。さらに男女別では、女性においてその傾向が強くなっています。
 また男性は、晩酌の習慣からか自宅で一人でも飲む傾向があるようです。男女で飲み方の違いがあり、シチュエーションに合わせた提案がポイントになります。

特集-6p-グラフ6.jpg7.日本酒をおいしいと感じたことの有無
 飲酒経験を積み重ねると日本酒をおいしいと感じる人の割合が増えてくる
 日本酒がおいしいと感じる人を性別年代別でみたのが、グラフ7になります。「いつも『おいしい』と感じている」人の割合は、年代が高まるにつれ増えていきます。一方で、男性20代・30代、女性20代の一部の人が「『おいしい』と感じたことはない」と回答しております。嗜好の変化もありますが、回答の傾向を見ると、20代、30代にとって日本酒との接点が少ない、と見ることができます。そのため、日本酒の需要の拡大には20代、30代への日本酒に対する飲酒機会の掘り起しが不可欠なポイントになります。

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8.日本酒を選ぶ際の理由
 飲食店では、仲間からの勧め(口コミ)やお店の人の紹介を重視、小売店では、男女で購入の選定理由に違いがある
 最後に日本酒の選び方です。飲食店では、これまで飲んでおいしかった銘柄のリピートや知人や店員からの情報、「甘口・辛口」や日本酒度といった味の傾向も重要な要素となります。さらに、女性は知人からの情報や限定商品に対する興味や関心が高い傾向にあります。
 小売店でも、これまで飲んでおいしかった銘柄のリピートが一番多いのですが、男性になるとその傾向が顕著になります。つまり、飲酒経験のある男性を中心に、日本酒の購買選択は保守的な傾向にあるといえます。
 一方で、女性は商品ラベルや限定商品を重視する割合が高まり、文字情報や視覚情報に効果があると考えられます。また、店員からの情報も有益と考えている人が多いのも女性の特徴です。また、飲食店・小売店ともにマスメディアやネットの影響はきわめて低いことが結果として表れました。

■グラフ8 日本酒を選ぶ理由(左:飲食店、右:小売店)特集-8p-グラフ8.jpg9.おわりに
 当研究会では、今回の調査を活用し今後、さらなる調査・分析や、酒類業者や飲食店向けの提案を進めていきます。また、酒販店向け、清酒製造業者向けの研修コンテンツの作成を検討しております。
 今後も酒と食を通じて、新たなマーケットの創造を目指し、酒類業界の発展に向け活動していきます。毎月第2水曜日には例会を開催しています。意欲的な方の見学は大歓迎です。

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