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2014.08.01
FCチェーンの海外展開を成功させるために ~『FCチェーンの海外展開ハンドブック』を発刊

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東京協会認定 フランチャイズ研究会 高橋 利忠
(http://www.fcken.com/)

 「フランチャイズ研究会」は、フランチャイズ(FC)ビジネスの健全な発展に貢献することを理念にかかげる研究実践団体で、FC 本部およびFC 加盟店のいずれにも偏ることなく中立的な立場からコンサルティング&アドバイスを行っています。メンバーは、一般社団法人東京都中小企業診断士協会所属の中小企業診断士を中心に、FCを専門とする弁護士、税理士、社会保険労務士、行政書士により構成されています。(現在44名)
 具体的な活動内容としては、日本経済新聞社主催「フランチャイズショー」など各種FC展示会でのセミナー講師、無料相談のほか、毎年いくつかのテーマを設定し研究活動を行っています。研究成果は調査報告書や書籍に取りまとめ、出版もしています。
 2013年度の活動のテーマのひとつとして、「FCチェーンの海外展開研究」を選びました。近年、日本のFCチェーンの海外展開の記事をよく目にします。以前は低コストを目的とした工場進出が大半でしたが、最近ではマーケットを目的とした海外展開が増えています。海外展開するチェーンはこれからもますます増加するでしょう。しかし、進出する話の一方で、撤退する話もよく聞きます。海外展開で成功することは容易ではありません。そこで、FCチェーンへのヒアリング調査を通じて、海外展開の実態や留意点などを明らかにしたいと考えました。
 ヒアリング調査は、日本を代表するFCチェーン8社に実施しました。業種についても、外食だけでなく、小売、サービスからもヒアリングすることができました。日本を代表するチェーン本部の海外での失敗談や苦労話なども紹介しています。また、法制面や契約書など専門家の知見によるオリジナル原稿を盛り込んでいます。海外展開の検討に役立つ情報として、ステップ別のTo-Do項目、海外展開支援施策、各国の基本情報なども紹介しており、実践的な書籍となりました。以下では、書籍の一部をご紹介します。

1.FCチェーンの海外展開の動向
 最近、FCチェーンの海外展開の話題が多い。和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、世界的に和食ブームが起きていることもあり、外食チェーンの海外展開の報道が増えている。しかし、外食チェーンに限らず、小売・サービス業チェーンにおいても海外展開報道が増えている。ほとんどのFCチェーンがアジアへの海外展開を急速に進めている点が特徴的である。
2.なぜアジアに進出するのか
 これまでアジア諸国は、安価な労働力が注目され、生産拠点として進出の対象となっていた。最近では、マーケットとしての魅力が注目され、進出の対象となっている。
 アジアは世界人口の6割を占めている。しかも今後さらに人口増加が見込まれている。経済(GDP)の成長率は日本を含め先進国の成長率が低迷している中で、高い成長率を維持している。経済の成長とともに、1人あたりGDPは増加傾向にある。こうして購買力が高まることで、マーケットとしての魅力が高まっている。
 加えて、アジア諸国は日本から近く、食文化が比較的似通っていることや、「日本ブランド」に対して好印象を持っている人が多いことも、アジアへの進出を促す一因になっていると考えられる。
 日本国内では経済の低迷が続き、競合も激化しているため、事業を今後とも大きく成長させていくことは難しい。そこで、外食・小売・サービスの業種で構成されている日本のFCチェーン各社は、アジア諸国のマーケットに注目し、大きく成長することを求めて、アジアへの海外展開を積極化させているといえる。

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3.FCチェーンの海外展開パターン(進出形態)
 海外への進出形態を類型化すると、以下のとおりである。

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 実際に取材したチェーンをみると、ほとんどのケースが、「③-2マスターフランチャイズ契約(現地本部:合弁会社)」となっている。これは、海外展開をするには、現地の有力なパートナー企業が欠かせないことを示している。また、合弁にすることで、パートナー企業と自社の役割分担を決めて両社の強みを発揮することが重要である。一方で、経営状況や事業運営をチェックし、ブランドやノウハウの管理を行うことも必要である。
 取材したチェーンは全て日本国内でFC展開しているチェーンである。しかし、海外での店舗展開は、加盟店(FC店)を募集せず現地本部の直営店だけで展開しているケースが多い。このことは、海外での加盟店(FC店)展開の難しさを示しているといえる。

4.海外展開事例
 今回、日本を代表するFC本部8社から、海外進出のきっかけや苦労話など貴重な話を聞くことができた。いずれのFCチェーンも今では海外の複数国に展開しており、海外展開ノウハウが蓄積されていると考えられる。以下では、3社の事例を紹介する。

(1)CoCo壱番屋
 2004年5月に日本と同様のコンセプトで1号店を出したが、来店客がなかなか増えなかった。ここで、日本では国民食であるカレーライスも海外では外国料理であることに気付いた。男性は食べ物に対して保守的だが、女性はファッション的に冒険していく。女性が行くと男性がついてくる。こう考えて、2号店目からはデートでも使えるようなカフェ的なレストランタイプにした。店舗レイアウトは日本人のデザイナーを使い、おしゃれな雰囲気の店舗にした。メニューは見栄えのいいオムレツカレーを用意したほか、スパゲティやサイドメニューなども揃えた。すると、上海テレビで取り上げられて、一気に認知度が高まった。日本では男性客が3分の2を占めるが、海外では女性が7割を占めている。クリスマス、バレンタインデーは日本では来店客が少ない日だが、海外では逆に来店客が多くなっている。
 昇給基準や将来ビジョンを明確に示している。マニュアル・基準表に則って、ここまでできたらいくらと明確に見せ、できていないことを理解させた。こうしてモチベーションを高く維持している。これは、ブルームシステム(社員独立制度)を加工して昇給昇格に適用したものである。
 どの国においてもコミュニケーションが大切だと思う。タイなど東南アジアでは動作や、料理の温度の感覚で多少日本人との違いを感じる。
 パートナーには最初から儲かる商売でないことを認識してもらい、当社を好きになった方と組んでいる。

(2)ファミリーマート
 海外進出は、ある程度の店舗規模に成長するまで先行投資が掛かるので、数年間のスパンで赤字が続く。したがって、パートナー選びは、①資金力のある会社、②政府と良好な関係を構築している会社、③国内全域にオフィスを持つ会社など、知名度だけでなく"体力"のある会社を選定することが重要である。
 海外展開を拡大する上で、パートナー企業との相互信頼が重要なため、2003年以降、展開地域のトップが一堂に会した、「Family Mart Summit」を年1回開催している。ここでは、各地域における取り組み事例の共有や、トップ同士による意見交換が行われる。日本のファミリーマートが主体となって、世界各地域のパートナーとのコミュニケーションをより円滑にし、チェーン全体の一体感を醸成している。
 グローバル化の足掛かりとして、最初の進出先には台湾を選定した。進出当初は、日本の店舗サイズやレイアウト、品揃えをそのまま移植して事業をスタートした。しかし、台湾と日本とでは商取引の形態や物流インフラの整備状況などが大きく異なっていた。当時の台湾には、日本の卸のような中間流通の機能がなく、メーカーと小売業者が直接取引を行う形態が基本で、日本のように整備された物流網が存在しなかった。そのため、専用の物流インフラを自前で整備する必要があった。また、店舗の出店コストなどの初期費用が膨らんだことも影響し、黒字化するまでに7年の時間を要した。「小売はローカル」という現実をこうした経験で強く認識させられた。
 2012年9月に事業パートナーの再編を行った。新たな事業パートナー(CRC)は、タイにおいて百貨店やスーパーマーケットを展開する小売業最大手である。事業スキームの再編により、①タイ市場を熟知したCRCによりタイ現地商習慣への対応が加速する、②CRCが持つタイ当局への人脈等により出店に伴うよりスピーディな手続きが可能になる、といったメリットが期待できた。

(3)吉野家
 米国産牛肉の輸入円滑化のため、牛肉買い付けの目的でUSA吉野家を設立した。まもなく、日本政府が牛肉の輸入を禁止し、本来業務を失ったUSA吉野家が窮余の一策として現地販売を始めた。これが海外展開の始まりである。
 合弁会社設立のポイントはパートナーの選定である。パートナーの選定基準は、①マーチャンダイジング能力、②物件開発力、③従業員教育システムの有無の3点である。
 雇用面では賃金上昇や転職への対応に苦労している。日本人と異なり会社へのロイヤルティが低い。転職対策として、従業員をマネージャークラスとアルバイトとを分けて対応している。マネージャークラスに対しては権限と報酬のバランスが重要で報酬制度を構築し運用している。一方、アルバイトには、食事や交通費の補助など福利厚生面を手厚くするとともに給与アップの仕組みを構築し運用している。
 成功例としては、インドネシアではサービスを日本品質化しモデレートクラスのサービスを提供して高級路線にて成功した。香港では国土が狭く店舗数の確保が困難なため小規模の牛丼専門店をテスト展開。プロモーションでは「日本色」を抑えたポスター等、日本が前面に出ないようにして反日対応を図っている。
 カントリーリスク(日中間問題等)を踏まえた事業計画を策定しても日本の収益を圧迫することがあるため、撤退基準を明確にして取り組んでいる。

5.海外展開を成功させるために
(1)パートナー選定が成功の大きな鍵
 海外展開が成功するか失敗するか、その大きな鍵となるのが、現地パートナー候補の選定である。現地パートナーは現地に明るく、物件情報や流通チャネルなどを有する場合が多い。多くの場合、事業の成否が立地によって左右されることから、有力な現地パートナーと組めれば、成功する可能性が高まる。逆に、いいパートナーだと思っていたのに、出店手続きがズルズル遅れ、言われないと期待される行動をとらないようなケースもある。最初からベスト・パートナーが見つかればよいが、意に反して期待に添わない場合は、早期に見切ってパートナー関係を解消し、新たなパートナー探しをすることが重要である。
 また、現地パートナーとの役割分担を明確にしておくことが必要である。決してパートナーに任せっきりにしてはいけない。任せっぱなしにすると、だまされたという結末になりかねない。パートナーにも問題があるかもしれないが、任せっぱなしにした方にも責任の一端がある。パートナーの強みを活用しつつ、自社が主体的に運営していくことが求められる。

(2)パートナー企業とは理念の共有が重要
 パートナー選びを間違えないためには、自社の経営理念を共有できる相手かどうかを、十分に見極める必要がある。経営理念は事業活動のベースとなる考え方である。理念が共有されず利害だけでパートナーになった場合は、いずれ利害が合わなくなり関係が綻ぶ。長期的な友好関係を維持するためには経営理念の共有が必要である。
 海外展開では、投資回収に長期間を要する場合が多い。パートナー企業には、この点の理解を得ておく必要がある。この共通認識がないと、事業開始わずか数年でパートナーがさじを投げたり、目先の利益を追ってしまったりしてビジネスモデルが崩れることも起こり得る。現地パートナーには長期投資に耐えうる企業体力があるかどうかも調査しておく。

(3)撤退基準を明確にする
 海外事業は思うほどには利益が出ないと考えて臨んだほうがよい。想定しなかったことで追加のコストがかかったり、スケジュールが遅れたりするなど、計画どおりにいかない場合も多い。海外に展開しているチェーンは多いが、しっかりと利益を上げているチェーンは少数にすぎない。たとえば、海外展開事例でも紹介しているファミリーマートは、今では国内店舗数よりも海外店舗数のほうが多い。しかるに、営業利益は国内店舗が8割以上を占め、海外店舗は2割も占めていない。海外では成長のための先行コストが多分に含まれている場合もあるが、思うほどには利益が出ないと考えておくほうが無難である。
 いつまでも利益が出ず、逆に赤字が膨らむような場合には、思い切って撤退することも考えるべきである。海外進出の決断したことを、途中で断念するというのは、苦渋の決断であり、なかなかできない決断である。しかし、決断をためらっている間に赤字金額は膨らむ一方となり、取り返しのつかない大きな傷を残す場合もある。
 海外進出を決める際には、撤退の基準を決めておくことが望ましい。基準を設けておくことで、時機を逸することなく、撤退の検討ができる。もうしばらく様子を見ようという結論になるかもしれない。その場合でも、事態が改善しなければ再度、撤退を検討することになり、深い傷は回避できると考えられる。
 紹介した事例のなかでも、一度撤退し、再度進出している事例がある。撤退は恥ずべきことではない。撤退の判断をできないことのほうが恥ずべきことである。
 国によっては自由に撤退できない場合もあるので、進出する前に確認しておきたい。

(4)契約書で日本の法律文化は通用しない
 日本の契約書では、「~の場合、甲乙双方誠実に協議のうえで解決するものとする」という条文をよく目にする。しかし、海外当事者との契約においては、このような条項を入れること自体が稀である。契約書というものは、双方が誠実に協議できなくなった場合の解決指針として機能している。よって、あらゆるケースを想定して、どのように対処するかを契約書に盛り込む必要がある。雇用契約を例にあげると、遅刻が常態化したり、上司の指示に従わなかったりすれば、解雇されても当然と考えられる。しかし、こうしたケースが解雇事由として雇用契約に明示されていないと、不当に解雇されたとして訴えられる可能性が高い。
 罰則だけでなく、報償制度などの動機づけもルールを明示する必要がある。ルールに従った透明性の高い運営をすることで、従業員の目標意識につながり、モチベーションや定着率の向上へとつながる。

(5)異文化間コミュニケーションの重要性
 FCチェーンの海外展開は今後ますます活発になると予想される。海外展開によって、マーケットが広がるだけでなく、多様な民族、多様な文化との交流も広がる。
 世界には多様な民族、多様な文化が存在している。異文化交流とは言葉だけの問題ではない。多様な価値観や、既成概念に縛られないダイナミズム、そして自らのアイデンティティー(独自性)をよく理解した発想の意識改革こそ、グローバル化への第一歩である。そうした発想の広がりや、想像力を養うことで世界の人々とのビジネス交流もより活発になるだろう。互いの視点が異なることで、相乗効果も期待できるし、新たな付加価値も得られることだろう。

(参考)海外展開のステップ
 海外展開は、流行で安易に意思決定するのでなく、慎重に吟味し、適切に判断する必要がある。以下のステップを参考にされたい。


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