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2015.02.27
法人営業における課題が一目で分かる法人営業力診断アンケート「SPM1」の開発とコンサルティング現場での活用

法人営業における課題が一目で分かる 法人営業力診断アンケート「SPM1」の 開発とコンサルティング現場での活用

営業力を科学する売上UP 研究会 坪田 誠治 st1025n@gmail.com

はじめに  「営業力を科学する売上UP研究会」の有志で構成する「営業力可視化分科会」は、法人営業における課題が一目で分かる法人営業力診断アンケート「SPM1(Sales Pentagon Model version1)」を開発した。法人営業(BtoB)で提案型(ソリューション型)営業が求められる中小企業を対象に設計しており、営業力の簡易現状把握を経た改善提案により、法人営業力改善コンサルティングの案件受注および支援につなげることを目的とする。

1.ツール開発の経緯、背景

(1)営業力強化に注力したい中小企業  日本政策金融公庫がまとめた「2014年の中小企業の景況見通し」(2013年11月)における調査では、中小企業の注力分野として「営業力・販売力の強化」が73%に上り、40%前後にとどまる人材の確保・育成、販売価格引き上げ・コストダウンを大きく引き離している。営業力強化に向けた中小企業の関心は高く、中小企業診断士として今後もっとも支援が求められる分野の1つである。

(2)法人営業特有の課題  企業の業界、業態や企業特性によって、法人営業のスタイルは多様である。また、人的営業に頼りがちな営業現場で何が起きているか、外からは見えづらい。支援する側に専門知識が求められるため、対処できる中小企業診断士が限定され、個別対応に工数がかかる。中小企業経営者にとっては、自社の営業力に課題を感じつつも、どこから着手すればよいのか判断しづらく改革を進められないという課題がある。これら現状の課題を図表1に表す。

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2.ツールの概要

(1)業績を向上させる営業力  営業活動は、営業マンの個人任せになりがちであり、その活動内容を企業として共有できていないことが多い。そのため、業績が停滞する企業では、営業上の問題を表面上の現象面で捉えがちであり、真因に迫れていない。  当研究会で営業力強化に成功した企業事例を発表、分析した結果、業績を向上させることに成功した企業の営業力を図表2のとおり体系化した。  営業は多様な形態や状況があるが、体系化すると、全社経営戦略をもとに、営業方針を構築し、具体的な訪問計画を立てる。次に、訪問計画に沿って訪問行動を起こし、提案やプレゼンテーションを実施して、商談やクロージングを行う。その全般を管理して必要に応じて修正するというPDCAのサイクルを回す。そのプロセスのどこに課題があるのか、営業担当者やマネージャーはそれぞれにどのように認識しているのか、その相違はどこから生じるのか、それらを知り、今後のアクションプランを立てる必要がある。  この一連の流れから、営業力は、戦略力、計画力、行動力、商談力、管理力の5つに分解することができ、これを評価軸と定義した。業績を向上させている企業の営業力は、この5つの評価軸を相互に連携づけて、PDCAを回す仕組みができている。201503_tokusyu_02.jpg

(2)営業力の5つの評価軸  5つの評価軸の意味と、そのポイントが低い場合の企業へのコメント例を図表3に示す。

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(3)法人営業力診断アンケートの構成  営業力5つの評価軸に対して、4段階の選択回答59問と自由回答5問の合計64問を作成した。その64問を、営業マネージャー用と営業担当者用とに言い回しを変えて、図表4の構成で、法人営業力診断アンケートを設計した。

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(4)可視化できる考察  本ツールは、アンケート形式の質問に回答し、その結果をレーダーチャート化することで、以下①~⑤の切り口で企業の営業力とその問題点を、可視化することができる。

 ①評価軸における想定課題

 ②営業マネージャーの自社の営業力に対する意識・認識

 ③営業担当者自身の営業力に対する意識・認識

 ④営業マネージャーと営業担当者の認識の差異

 ⑤営業部署別・事業別・拠点別の意識・認識の差異

(5)アンケート実施の手順

アンケートの目的と目標を明確にし、対象企業の業界、業種、業態、企業特性の把握を行うために、アンケート実施前に経営者インタビューを行う。その後、アンケート実施、回収・分析、分析結果報告と進める。一連の流れを図表5に示す。  この手順を踏むことで十分な情報を得られ、20頁程度の報告書(フルバージョン)を完成させることができる。逆に、経営者インタビューの時間がとれない場合や、グラフだけで良いので早く結果を提供する必要がある場合に備えて、1頁程度の簡易版報告書(サマリー)を用意している。  今後の展開としては、現時点では法人営業(BtoB)で提案型(ソリューション型)営業が求められる中小企業を対象にしたバージョン「SPM1」だけであるが、異なる営業スタイルに最適なアンケートバージョンを増やす予定にしている。

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(6)設問の特徴

次に、5つの評価軸ごとの選択回答での設問例を、図表6のとおり示す。これは営業マネージャー向け設問例であるが、営業担当者向けには、立場を変えた同じ趣旨の設問を用意している。この工夫によって、同じ事柄に対する営業マネージャーと営業担当者の認識差異が明確になる。

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3.実践事例の紹介

(1)アンケート分析結果の可視化  従業員約100名の部品加工組立メーカーA社で、コンサルティングに入る前の営業力事前診断に当アンケートを活用した。社長、営業マネージャー、営業担当者にアンケートを実施した結果を、階層別にレーダーチャートにまとめたものが図表7となる。ちなみに、図表6で示した4段階の選択回答の結果を、レーダーチャートでは5点満点に換算して評価している。  レーダーチャートの効果として、営業マネージャーの意識・認識と、営業担当者の意識・認識を、レーダーチャート上の得点と線で可視化することができる。その得点の高低と、両方の線の乖離具合から、営業力を診断することができる。  計画力を見ると、営業担当者は概ねできていると自己認識しているが、営業マネージャーから見ると低いポイントになっており、十分にできていると認識していない。一方管理力は、逆に営業マネージャーは概ねできていると認識しているが、営業担当者は不十分と感じている。計画と管理は表裏一体であり、計画ができていなければ管理できるわけがなく、管理が不十分であれば計画に反映されず、十分な計画にならない。

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(2)評価軸ごとの結果  次に、評価軸ごとの結果を図表8のようにまとめた。前述のレーダーチャートから計画と管理をきちんと設計し、回す必要があると推測されたが、これを裏付ける内容となっている。計画力を評価する質問から抜粋した質問16、17を見ると、計画段階で訪問目的の明確化やそのための準備が十分できていないと思われる。管理力を評価する質問41、44を見ると、営業活動の内容の見直しや予実管理が十分できていないことが見てとれる。

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(3)提言内容  アンケート実施前の経営者インタビューを通じて、特定の業界向け部品を扱っているA社は顧客数が限定されること、売上高全体に占める上位客の売上比率が高いことが判明していた。そこで、アンケート診断結果を踏まえて、以下3点に集約して今後の取り組みをA社社長に提言した。

①営業戦略の立案と関係者間での共有  中長期での計画や具体的な営業戦略を関係者間で共有し、意思統一する。

②顧客別戦略の立案とアクションプランの策定  重要顧客に対して関係者を交えて顧客別戦略を立案し、攻めの営業へ転換する。

③プロセス管理のための数値管理の実施  「売上数値の結果」の管理から、「売上に至るプロセス」の管理・フィードバックへ転換する。

(4)コンサルティングの実施  提言の結果、A社社長からは自社の課題認識が明確になったと高評価を得て、営業力強化のためのコンサルティングを受注した。診断フェーズからコンサルティングフェーズに移行するタイミングに合わせて、当研究会から新たに賛同者を募ってメンバーを再編成した上で、コンサルティングフェーズに進んだ。  社長や営業部長など主要メンバーにヒアリングした後、上位客を中心に顧客別戦略とアクションプランを立てることをA社社長と合意して、図表9の流れでコンサルティングを実施中である。

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4.今後の展開

(1)コンサルティング受注活動における本ツールの位置づけ  本ツールは、多くの中小企業診断士が売上UP、営業力強化を望む中小企業に対して、より具体的・実践的なコンサルティングを行うためのツールを提供するものである。  コンサルティング受注におけるアンケートの位置づけを図表10のとおり示す。具体的には、中小企業支援機関や他団体と協業した営業力強化セミナーや中小企業診断士同士の連携を通じて、集客する。アンケートによる簡易診断後に、個別改善提案によるコンサルティング実施につなげることを目指していく。  当研究会では、営業力強化セミナーを近いうちに開催する予定にしており、多くの中小企業診断士の方々と協業する形で進めていきたい。

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(2)アンケートのバージョン拡充  今後、アンケートデータの収集を進め、業界別、企業規模別や営業タイプ別(物販営業、ソリューション営業、サービス営業、代理店営業など)などで、中小企業診断士に標準値を提供していきたい。同時にアンケート内容を業界別、営業タイプ別などの特性に合わせて複数パターンを用意することにより、適用範囲を増やしていく予定である(図表11)。  当研究会では、法人営業における課題が一目で分かる法人営業力診断アンケート「SPM1」を活用して、中小企業の売上アップと営業力強化、中小企業診断士の活躍機会の増大に貢献したいと考えている。同じ志を持つ方は、ぜひ仲間に加わっていただきたい。

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【執筆メンバー】

営業力を科学する売上UP研究会 営業力可視化分科会  坪田 誠治(リーダー)、阿部 裕、池田 誠、小澤 栄一、丸山 直明、渡辺 辰洋

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