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2015.08.30
医薬品業界従事者(初任者)向け通信教育テキスト執筆報告

医薬品等研究会 代表 竹中 洋介

1.はじめに
日本は少子・高齢化の進展で医療ニーズが増大する反面、財政窮迫のため歳出抑制の政策が実行に移されつつあり、今後更なる変動が予想される状態にある。
そのため、医薬品産業従事者は、単に技術的な側面だけではなく医療経済・政策的な側面を含め、業界を俯瞰して理解する必要性が大きくなっている。このような環境下で、従来、一般製造業従事者向け通信教育を提供していた職業訓練法人より、一次依頼者を経由し当研究会にテキスト執筆依頼があり、広範な人材(薬剤師・MR・技術者・薬局経営者など医薬品・医薬部外品・医療機器など広範な分野に関与している)を擁する当研究会の活動をアウトプットする好機と考え、執筆を受託した。
 
2.執筆までの経緯・執筆中の紆余曲折その他
当時の研究会活動は主として研究会内外の講師の話を聞く受け身の活動が多く、能動的な活動の好機と考え依頼を受けた前代表がこの委託を受けることにした。
しかしながら、一次受託者が専門外であったためか、当初依頼の内容は詰まっておらず、前代表が委託元の事務所を訪問、趣旨や最近の医薬品産業の環境について意見交換し、そのうえで、当方でテキストの目次や構成そのものを立案することになった。
呼びかけに応じた9名の執筆者が集まり執筆開始となったが、執筆メンバーよりこれで本当に完成するのかと危惧の弁を頂戴したほどであった。そこで、研究会員の所属事務所で考え方を練り骨子を徹底させるなどの緻密な作業が続いた。
最も苦労したのは、医薬品の研究開発について執筆可能な会員が少なく、神戸市先端医療財団アドバイザーとして、先端の医薬品開発の情報に多く接している川端隆司会員が担当、研究開発に関する専門書籍を何冊も参照いただくなど、依頼元の構成要件を満たすべく情報の精度と品質向上に努めた点である。
 
3.留意点
対象読者は医薬品業界に従事する初任者であるため、易しい表現が必要であった。そのため、技術テキストのように専門的な部分の詳述ではなく実務的な内容を初心者に解りやすく、最近の動きまで広く織り込み相互の関係が理解できるように考える必要があった。
具体的には、最近の医療供給政策、薬事法改正の意味・その効果など現代的な内容を部分的に深く解説するためにコラムを活用したこと、本テキストを入門書として使うが実務に入ったのち、もっと深く独学できるように種々の参考書・資料を挙げたことなど、多くの工夫を施している。

4.内容概要紹介
医薬品関連企業の新入社員および業界全体を俯瞰して学ぶ機会のない既存従業員に向けた内容であり、業界の概略を学び早期に全体図が把握できるよう構成されている。

第1章 製薬・医薬品の概要
   医薬品の特性と開発の歴史
   医薬品のもつリスクと対策(相互作用・安全対策等)
   医薬品の種類  医療用医薬品と一般医薬品

医薬品の全体像を把握することを目標に一般消費財と異なる医薬品の特性(生命関連性・高品質性・使用の緊急性・価格規制など)や医薬品開発の実際(基礎研究から臨床試験を経て製造販売の承認を得るまで)に触れながら「医薬品」の概要について学べる内容となっている。

第2章 医薬品・製薬業界
   製薬企業の分類
   医薬・製薬企業を取り巻く環境と製薬企業の現状
   病医院・薬局との関係と医療保険制度

内資・外資企業、専業・兼業メーカー、新薬・ジェネリックメーカーなどの違い、製薬企業を取り巻く医療保険制度、取引先である病医院・薬局との関係など外部環境や事業モデルなど内部環境的な視点まで業界全体を広く俯瞰した内容となっている。

第3章 薬剤師・薬事法
   薬剤師の扱える業務  薬事法

薬剤師の役割、薬剤業務の実際、専門薬剤師についてなど薬剤師に関係する内容を網羅する内容となっている。また、薬機法(旧薬事法)について法改正の内容を概説している。

第4章 医薬品の研究開発
   医薬品の開発  医薬品開発・製品化の流れ
   非臨床試験と臨床試験  承認審査
   研究成果の製品化のために

医薬品開発の流れ(基礎・創薬研究から臨床試験、製品化にいたるまで)、各種試験についての解説を行っている。
第5章 医薬品の製造
   医薬品の製造工程  原薬製造工程と製剤工程の違い
   原薬製造の流れ  原薬製造工程を構成する機器
   製造工程と工場における汚染の防止
   製剤工程のフローと機器の概要
   内服固形製剤設備の汚染防止管理
   医薬品GMPの概要  医薬品製造設備に関する基準
   ICHガイドライン  PIC/S

医薬品製造工程の大まかな流れと製剤工程および各工程で使用する代表的な機器類の解説を具体的に行っている。

第6章 これからの医薬品業界
   環境変化とこれからの医薬品業界
   治療効果を上げる医薬品開発の動き
   個の医療への動き  有限な医療資源の中で

高齢化に伴う医療経済環境の変化や分子標的薬など新たな医薬品開発の実際、代替医療などのトピックスを織り交ぜながら概説している。

付録:略語一覧表

5.成果と苦労・反省点
単に依頼に沿って執筆したわけではないため、結果として膨大な作業量となった。教科書的な底の浅い、細切れの知識の提供ではなく、最近の医薬品業界、医療経済、医療をめぐる国内外の関係を読み込み、医薬品の新しい動きとその背景、法改正の背景など幅広い内容ながらタイムリーな話題は深い内容を目指した。幅広い分野をいかにわかりやすく、かつタイムリーに解説するかに主眼を置いたため、本書の内容については業界解説本としては良いものになったと依頼元から評価をいただいている。
依頼元の担当者は引用資料を隅々まで読みこなし、「最新版では、ここがこう改定されていますが、こちらで良いですか?」とたびたびの確認・提案があり、「最近の開発の具体的な動きを追加していただきたい」等の希望が出された。
二次受託の形であり、一次受託者との契約・原稿料支払や税務処理など、事務処理的な体制が当初十分でなく、9名にのぼる執筆者に対する原稿料の支払い、税務処理など煩雑な処理に手がかけられないとのことで危惧したが、関係者各位の尽力により、無事解決した。
研究会としての専門性を維持・向上していくために何ができるかを考え今回の執筆を受託したが、結果として執筆担当者の自己研鑽に加え外部に自らの専門性をアウトプットすることに繋がり、大変有益であったと考えている。

6.今後の展開
今回の執筆活動を単に有志の仕事として終わらせるのではなく、業界誌等に会員の研究成果をアウトプットすべく、その後、当研究会内に「執筆ワーキンググループ」を設置した。
今後の研究会の活動の方向の一つとして、実務ポイント獲得につながるコンサルティング案件への取り組みなどと併せ、社会に還元できるアウトプットを意識した活動に取り組んでいきたいと考えている。

                    

「製薬・医薬品の基礎」執筆者等について

執筆者全員の氏名はhttp://www.iyakuhin.org/ をご覧ください。

また、本書購入希望の方は代表 竹中洋介のメールアドレスtakenakashindanshi.jp 【▲をアットマークに置き換えてください。】までお申し込みください。折り返しご連絡いたします。

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