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2015.11.30
TOKYO SMECAニュース12月号研究会論文

TOKYO SMECAニュース12月号研究会論文

ロスプリベンション研究会

1.研究会紹介
 当研究会は2005年、現場でコンサルのできるロスプリベンション(商品ロスの防止)手法を研究し、診断士の新しい活躍の場を創造することを目的に発足し、今年で10年を迎えた研究会である。
 消費者の購買行動が変わり、商業者にとっては売上高を伸ばして利益を確保する方法が難しくなってきている。そこで従来あまり顧みられることがなかった「商品ロス」に焦点をあて、万引き・社内不正・伝票管理をロスプリベンションの立場から解明し、最終利益を確保する増益手段としてこの手法を活用する時がきていると当研究会は考えている。

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 いままで当研究会はロスプリベンション診断として、大手CD販売店、大手雑貨店、ローカルスーパーマーケット、中堅ドラッグストア等数多くの診断を通じて経験をつみ、企業のロスプリベンション担当者とのネットワークを築いてきた。そして近年はその実績を踏まえて、当研究会が2010年9月にロスプリベンションの普及啓蒙を目的として設立した一般社団法人ロスプリベンション協会と協同で、日本で最大のセキュリティー関連の展示会であるセキュリティーショー(日本経済新聞社主催)でのセミナー等講演活動も5年連続で実施している。

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 当研究会の活動は座学と外部講師による講演、実践と大きく3部構成になっている。
 ・座学:ロスプリベンション協会で作成した「店長が学ぶ実践商品ロス対策」を使った当研究会員による講義であり、ロスプリベンションのステップ、万引きのできない店舗づくりについて体系だった内容を学習している。

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 ・外部講師を招いての講演:株式会社トイザらス、株式会社ライフ、日本万引防止システム協会等実際に現場でロスプリベンションを実施しているご担当者をお招きし、臨場感のあるお話をいただいている。
 ・実践:昨年よりミステリーショッパープロジェクトを立ち上げ、半年かけて調査マニュアル・調査票を作りあげ、今年よりトライアルとして書籍販売店、簡易調査としてヤングアパレル店のミステリーショッパーを実施した。
 今回はミステリーショッパープロジェクトの活動内容を紹介する。

2.ミステリーショッパープロジェクト
 当研究会は過去数多くのロスプリベンション診断を実施してきたが、診断にはヒアリング・現場調査等、依頼主への多大な負担や、財務諸表の開示が障害となり、なかなか踏み切れないことが多かった。そこで導入診断としてミステリーショッパーという手法により、依頼主に負担をかけることなく、顧客視点で問題点・改善案を提示することで、ロス率改善に貢献したい。そして依頼主の信頼を得て、その後のロスプリベンション診断につなげたいという思いから立ちあげたプロジェクトである。
 ミステリーショッパーをビジネスとしている事業者はすでに多く存在するため、同じことをしていても差別化できない。そこで将来的には数多く調査サンプルを集め、回帰分析等統計手法を使って、ロス率予測モデル(たとえばこの項目を改善すると、ロス率が改善する等)の確立をしたいと考えており、座学には統計に関するテーマも盛り込んでいる。
<ミステリーショッパープロジェクト>
 ・目的:ミステリーショッパーにて当研究会オリジナルのビジネスモデルを構築すること
 ・市場環境:CS目的のミステリーショッパーは数多くあるが、ロス率改善を目的としたミステリーショッパーはほとんどない
 ・強み:専門家(診断士)の目による調査、問題点・改善案の提示
    クライアントに負担をかけない調査
 ・目指す研究成果:調査結果を蓄積、要因・原因の分析を行い、ロス率予測モデルの構築
 ・調査先の開拓:株式会社日本保安(万引きGメン専門会社)のセキュリティサービスメニューのひとつとして、連携しての取り組み
 ・研究会員のメリット:診断士の診断実務実践場所の提供、実際のデータを使った統計手法
の知識の習得、新コンサル手法の開発

3.ミステリーショッパー調査事例
 今年に入って、トライアルとして書籍店6店舗、簡易調査であったがヤングアパレル店6店舗の調査を実施した。今回はヤングアパレル店の簡易調査を紹介する。

ヤングアパレル店P社
(1)対象店舗の概要
 P社はロス率の異常値が出ている店があり、担当者が困って当研究会に相談に来た企業である。首都圏を中心に全国に30店舗のヤングカジュアル店を運営しており、常に時代のトレンドに沿いながらも、自分達の主張を大切にしたスタイル提案をし続けるお店である。独自のスタイルを貫いたオリジナル商品に加え、新品から中古までワールドワイドなセレクトによる幅広い商品を取り扱っている。その品揃えはファッションだけでなく、音楽、アートなどさまざまなカルチャーをミックスしライフスタイルとして提案し続けているお店である。

(2)調査概要
 ・調査方法:下記調査票による現地調査、○×方式
 ・調査期間:2015年3月31日から4月3日
 ・調査員:中小企業診断士協会ロスプリベンション研究会メンバーのべ12名
 ・店舗数:首都圏6店舗

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 ※実際に使った調査票(調査項目はプロジェクト外秘のため隠しています)

(3)調査結果
 調査項目 中分類別に10点満点として評価

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             ※1従業員態度、2店頭店内清掃で店舗間格差がでている


 簡易調査でサンプル数が少ないので参考程度であるが
 ・総合点でA店・B店が高得点であり、その他は同レベル
 ・中分類別にみると1従業員態度・2店頭店内清掃で大きな差がでており、他は同レベル
 ・防犯機器については全店低得点

(4)調査結果より考えられる改善案
 ・A店・B店の店長による他店従業員への接客教育、本社による防犯教育の実施
 ・防犯カメラは防犯上および社内不正対策上、最低限レジ上に必要
 ・防犯ミラーは死角コーナーに設置することで、防犯上または声掛け等顧客サービス向上のため有効
 ・私服で接客にあたる店員と客の区別がつかないので、積極的な声掛け、大きな名札・腕章等一目で店員とわかる工夫の実施

(5)その他調査員からのコメント
 ・イヤリングなどの小物類を手に持って自由に歩けるため、店員の目を盗んでバックなどに入れることは、比較的容易だと思われる。ロスプリベンションの観点から経費はかかるが防犯タグは必要
 ・D店、E店は出入り口が1つなのでゲートなど設置しやすい。他の店舗も出入り口を少なくするなど、客の流れのコントロールをするべき
 ・全体的に元気な接客で声も良く出ていた。ただ、不審者対応などの教育を受けているか不明
 ・小物をいくつか持ってみたり、持ったまま動いてみたりしたが、それを不審に思っている様子はなかった
 ・店の雰囲気などに関係するが、万引き防止ポスターを貼るなど万引き対策を店側がしていることを客側に明示するべき

(6)P社の報告後の反応
 報告内容を参考にして、各店への防犯機器の導入を本格的に検討している。

4.今後のミステリーショッパープロジェクトの活動
 現在、某有名紳士服チェーンにおけるミステリーショッパーの話がすすんでいる。研究会の実績、研究会員の経験を増やすため、またデータ蓄積のため積極的に取り組んでいきたいと考えている。そして多くのデータの蓄積により「ロス率予測のモデル化」にトライしていきたい。小売店・統計に興味のあるかた、ぜひ一緒にやりましょう。

<研究会紹介>
ロスプリベンション研究会
代  表:秋元初心
メールアドレス:akimoto@a-d-d.co.jp
会員数:29名
開催日時:毎月第3金曜日
開催場所:大久保または代々木貸し会議室

関連組織:一般社団法人ロスプリベンション協会
HP:http://www.j-lpa.or.jp/

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             2014/7~2015/6活動実績

(文責:ロスプリベンション研究会事務局
 城東支部 小貫 直之)

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