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2016.03.27
サービスの差異化を目指す事業者が設備導入でものづくり補助金を活用するために行った 経営革新計画策定支援事例

TAMA活性化支援グループ 細谷 和丈

E-mail:whosoya@topaz.ocn.ne.jp


はじめに
 対象事業者は、大手の安価料金理容店が台頭する中、理容業の差異化戦略として理容業だからできる新サービス(アフターシェービングO2エステ)の提供を考えた。アフターシェービングエステに対するニーズはモニター顧客ですでに確認されていたが、今回はそれらのニーズに応え、その効果をさらに高めるためのものである。それを実現するためにはO2発生器の導入が必要で、当社でもすでに検討していたが、課題は資金調達であった。
 そうしたタイミングに理容機器輸入商社の顧問コンサルタントから、国の「ものづくり補助金」の情報を知り、補助金申請要件として認定支援機関の支援が必要なことを知った。
いろいろ調べたが認定支援機関を特定できず、対象事業者の依頼税理士から支援要請を受けたのが認定支援機関で研究会「TAMA活性化支援グループ」の会長である。
 会長が第一に取り組んだことは、研究会が3年前から取り組んできた「ものづくり補助金セミナー」に参加してもらい、補助金の申請要件などの基本的知識を習得していただくことであった。
 第二の取り組みは、補助金申請に必須な経営革新計画策定の個人支援で、税理士、顧問コンサルタントとの連携で行った。その結果2014年4月12日に申請、同年6月28日採択され、9月3日交付決定後、補助事業を遂行、同年12月2日に無事事業を終了した。

Ⅰ支援対象事業者
1.事業者概要

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2.主要サービス:理容サービス「都内に以下の4店舗を展開する。従業員21名」

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3.渋谷区幡ヶ谷店の風景  

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Ⅱ 理容業界の環境 

 理美容店「プラージュ」(630店うち理容店286店)、理容店「QBハウス」(480店)などの大型安価料金店の台頭で、理容店間の価格競争が激化し、経営環境が悪化している。当店もその例外ではない。

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Ⅲ.支援対象事業者のこれまでの取り組みと課題
1.これまでの取り組み
 ① 15年前から女性のためのシェービングに積極的に取り組んできた。
 ② 7年ぐらい前から女性スタッフが揃ったのを機に、理容師の国家資格を持つ女性による、女性のためのシェービングを打ち出し、本店の1階で女性のためのリラクゼーションルーム(ボタンジュ)を開業した。 
 ③ その結果お客様の声(ニーズ)がより聞けるようになった。そこで分かったことは「肌のくすみの改善」と「アンチエイジング」である。
 ④ このニーズに応えるための方策を探している時に出会ったのがシェ―ビング後のO2エステであり、これを当社の革新的サービスとして実現したいと考えるようになった。


2.課題
  しかし、O2エステには設備投資(約240万円)が必要で、その資金調達が課題であった。
 
3.課題解決の模索
 ① 幸運なことに、平成25年度補正「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」では、平成24年度補正「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」では対象ではなかった商業・サービスが追加された。
   この情報の提供者は当事業者と取引のあった理容機器販売商社の顧問コンサルタントであった。
 ② 社長は内容を知りたいと補助金の事務局(東京都中小企業団体中央会)主催の説明会に参加した。しかし、初めての経験で担当者の説明を十分にフォローできなかった。
 ③ また、補助金の申請には認定支援機関の協力が必要であることを知り、理容機器販売商社の顧問コンサルタントの協力を得てホームページ等を調べたが特定できず、依頼先の税理士に打診をした。これこそが正に縁の始まりである。

Ⅳ 「ものづくり補助金」申請支援の取り組み 
1.「ものづくり補助金」申請支援の取り組み経緯 
  事業者の税理士から依頼を受けたのは認定支援機関で、研究会(TAM活性化支援グループ)の会長であったが、会長はあえて個人の支援とせず、研究会をからませた二つの取り組みで支援することにした。
  第一の取り組みは、研究会主体の「ものづくり補助金セミナー」による支援であり、第二の取り組みは研究会を離れての認定支援機関としての個別支援である。

2.「ものづくり補助金」の申請支援のプロセスと方法
  表4は研究会および会員による「ものづくり補助金」の申請支援のプロセスと方法をまとめたものである。理想的には①セミナー⇒②個別相談⇒③個別支援のフルコース参加がお薦めである。しかし、実際にはセミナーや個別相談のみの参加が多いのが現実である。今回紹介の事例も日程が合わずセミナーのみの参加であった。

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3.第一の取り組み(研究会によるセミナーと個別相談)

1)ものづくり補助金申請支援に取り組めた要因
 ① 研究会員の中に補助金申請支援経験者(平成24年度補正「ものづくり補助金」で採択実績がある)がおり、また研究会自体が「ものづくり補助金」等をテーマに企業向けのセミナーを10年前から開催していたことによる。
 ② 表5は2013~2015に研究会が開催したものづくり補助金セミナーの回数と参加者数である。3年間で11回開催し、185人の参加があった。

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2)セミナー、個別相談会風景

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3)支援の特徴(セミナー・個別相談の競合優位性)

 ① 講師の実践経験が豊富でポイントを絞った解説ができる。
 ② 公的支援機関ではできない採択事例を交えた分かりやすい解説ができる。
 ③ セミナー講師を担える人材が豊富である。(会員14名中10名が経験者)
 ④ セミナーは有料である。(本気度を示す)
 ⑤ セミナー当日のオペレーションでは会員全員が自分の役割を持つ。

4.第二の取り組み(個別支援の方法と内容)
  個別支援は認定支援機関が税理士および理容機器商社の顧問コンサルタントと連携して行った。対面での支援は2014年3月24日と最後の5月1日の2回のみで、その間の支援は補助金申請書の実質的取りまとめ者とのメールでの経営革新計画書作成支援となった。

Ⅴ 取り組みの成果と課題

1.支援事業者の成果等
1)研究会のセミナーに参加した事業者は会員の個別支援・認定機関としての実効性確認を経て6月28日には「ものづくり補助金」の東京事務局より採択通知を受け取り、9月3日交付決定後、事業を完遂し、2014年12月2日には事業を終了した。
2)採択後中小企業庁のチラシ「平成25年度補正予算事業」の事例として紹介された。
 ブランド力の向上が期待される。

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3)補助金事業に取り組んだ結果、平成27年3月決算で売上もわずかながら増加するとともに、社員の一体感が醸成された。

Ⅵ 今後の取組み
1.支援対象事業者の今後の課題
  補助金事業は無事終了したが、新規事業の本格的な立ち上げはこれからである。
  以下が課題と考えられる。
 ① 本事業は2店舗で行っているが地域により集客に差が出ている。
 ② ゲット顧客(商圏内のアンチエイジング意識の高い40~50歳代の女性)に対するシェービング後のO2エステの効能を訴求する作戦の継続的展開、たとえば小規模事業者持続化補助金の活用による販路開拓などが必要と思われる。
 ③ 顧客満足を高めるためO2エステ施術技術のさらなる向上による競合優位の追求
   たとえば、社内コンペテイションによるO2施術技術の研鑽など、スタッフのさらなる能力開発が望まれる。

2.研究会活動の総括
1)活動の成果
  今回紹介した事例は研究会および会員の取り組みの代表的事例である。表7は会員の個人支援を含めた研究会全体の取り組み成果で、採択された事例が18件あった。

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2)予定外の成果
  当初想定していなかった以下の成果も出ている。
 ① セミナーや個別相談で支援スキルを磨いた会員が個人支援のチャンスを拓いた。
 ② セミナーは経営者だけでなく、中小企業診断士の意識高揚の機会も提供した。

おわりに
 TAMA活性化支援グループは15年前に設立され、当初はTAMA協会の実働部隊として会員の課題解決支援を担った。しかし、コーディネーター制度が導入されてからはその役割を終え、地域企業の経営革新をテーマに独自に活動してきた。
 10年前からは経営セミナーを通して企業の経営革新支援を、また3年前からは「ものづくり補助金」申請支援に軸足を置いて活動してきたが、これからも挑戦、相互研鑽、革新、実践を理念として、企業の経営革新を実践支援できる以下のような研究会を目指したい。
 ① 話して、聞いて、ハモる(自分の意見を出し、参加する)そんなゼミ志向の研究会。
 ② もっとアグレッシブに中小企業の経営革新支援に挑戦する研究会。
 ③ 支援対象事業者を惹きつけることのできるアトラクティブな研究会。
 ④ 成果の共有化(見える化)と先輩から受けた恩を後輩に返せる(恩送りの)研究会。
 ⑤ 他の組織(支援機関・地域診断士会・診断士以外の士会)との連携ができる研究会。

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