TOP >> コラム >>  特集 >>  人、店が集まり、店主の自主活動で盛り上がる街に!~白金商店会支援の軌跡~
コラム
最新の記事
月別の記事
2016.05.29
人、店が集まり、店主の自主活動で盛り上がる街に!~白金商店会支援の軌跡~


企業内診断士の5年にわたる支援で街のイメージ一新!

人、店が集まり、店主の自主活動で盛り上がる街に!
 ~白金商店会支援の軌跡~

商店街研究会 山中令士、鵜頭誠

1.企業内診断士による白金商店会支援の経緯
(1)商店街研究会の活動
 東京協会認定の商店街研究会は、平成14年6月、商店街の活性化、にぎわいづくり、個店繁盛に積極的に取り組みたいという中小企業診断士の仲間が集まって設立された。201606-2p-1.jpgのサムネイル画像
 当研究会の活動は、毎月1回土曜日に商店街を訪問し、役員の方から成功談をヒアリングし、活性化方策を学ぶ活動を年間10回実施している。その他に、年2回は平日の夕方に斯界の有識者や専門家を講師として招いての座学研修を行うなどの活動を続けている。一昨年にはこれらの成果を基に10周年記念の書籍出版も行った。
 会員は現在94名で、企業内診断士が参加しやすい活動スケジュールであることから、多くの企業内診断士が参加しており、その数60名で約2/3を占める。この比率は東京協会の構成とほぼ同じであって、企業内診断士の研究活動の場を確保し、自主的かつ主体的な実践的支援活動の取り組みの機会をいかに確保するか、が課題であった。

(2)白金商店会への支援の開始

 平成22年2月、研究会の企業内診断士有志8名が、それまでの優良商店街への訪問活動で蓄えた数多くの先進的な取り組み事例を、実際に自分たちで商店街活性化の支援活動として取り組みたいと模索していたところ、当時の研究会会長から港区の白金商店会を紹介され、支援活動を開始することができた。

 白金商店会は、東京メトロ南北線の白金高輪駅から徒歩4分にある商店街で、歴史は古く明治43年から続く。商店会の加盟は63店舗で、港区では数少ない生鮮三品の揃う商店街である。 201606-2p-2.jpgのサムネイル画像

 昔は、ガス灯の製造を中心とした近隣の町工場で働く多くの工員達とその家族を顧客にして栄えていたが、その後、次々と工場が廃止された跡地の住宅地化が進んでおり、今では、地域在住の主婦や高齢者を対象とする近隣型商店街となっている。また、駅前のスーパーや大型店との競合も厳しく、スーパー立地の直後などは、店舗廃業も多く続いていた。
 
(3)支援初年度の活動
 平成22年の2月から3月にかけて、8名の企業内診断士のメンバーが商店街調査分析のセオリー通り、「商店主意識調査」、「来街者アンケート調査」および「歩行者通行量調査」を実施し、その調査結果に基づいた各種提言を、3月下旬の理事会において行ったが、理事のメンバーからの反応は今一つであった。
 今、振り返ってみると教科書的な提言内容であったと反省している。ちなみに同年3月の調査時点での歩行者通行量は2,942人/日であった。
 その年の8月、夏まつり支援の後の「白金商店会夏まつりの視察報告」において、「浴衣での来街者へ優待品贈呈」や「浴衣姿での記念写真撮影」などを夏まつりの活性化方策として提案しているが、その時の皆さんからは「そうですねぇ」というありきたりの反応で、特段の賛成の意見も反論もないままに発表は終了し、いずれの提言も実施には至らなかった。
 ただ、この時の提案がその後の我々の継続した支援活動を通じて、3年後に「浴衣コンテスト」として日の目を見ることになるのだが、その時点では全くそういった気配はないままに1年目が終了した。

(4)支援2年目の活動と変化の兆し
 翌23年5月、前年と同様に、夏まつりに向けての取り組み支援として、「商店主意識調査」および「来街者アンケート調査」および「歩行者通行量調査」を実施し、その結果を夏まつり前の7月理事会で報告する機会をいただいた。
 その際に、夏まつりに向けての盛り上げ支援策として、ホームページやTwitterによるPR活動を提案したところ、参加した商店主の一人が、「商店街内のある有名店舗が、Twitterを活用してお客さんが絶えないお店になっている」と発言したことから、反応が変わったのを感じた。
 Twitterの活用について、会長、副会長としては、「店舗の売上になるのであれば挑戦したいが、全くどのように操作をしたらいいのかも、Twitterの仕組み自体すらもよくわからない」との発言があった。早速、診断士一同で、仕組みや活用の仕方、他の商店街の取り組みなどについて調べるので、再度報告の機会を設けてほしい旨を訴え、了解を得ることができた。
 この点を新たな支援活動に活かせるものと捉え、その場で提案できたことが、その後の支援活動に繋がった。
 多くのメンバーにとって、商店街でのTwitter活用は初めての取り組みではあったが、商店街が希望する支援活動に具体的に挑戦できる機会ができたことから、メンバーの支援への盛り上がりも増し、新たな若手メンバーも応援に入り、ITを活用した商店街活性化の支援準備を開始した。

(5)支援3年目、Twitter支援の開始201606-4p-1.jpg
 平成24年2月、「夏まつりでのTwitter支援」として、商店街の皆さんとともに手を動かしながら支援する活動の内容を商店会理事会にて提言した。多くの理事の皆さんがTwitterを使うのが初めてということもあり、「白金商店街ツイッターのつぶやき方」というチラシを作成し、パソコンやタブレットを多く持ち込んで、理事の皆さんとのマンツーマンの教室を開催した。そうして、無事、理事の皆さん全員の承認を得られたことから、Twitter活用による支援を開始することとなり、診断士の我々がまず、つぶやきのモデルを示すべく、挑戦を始めることとした。
 そして、6月から8月の夏まつりに向けて、商店街からの情報発信としてTwitterでのつぶやきを我々から率先して活発に展開した。夏まつり当日には、会場での商店街の皆さんの準備活動や屋台販売の姿などを全店写真撮影し、その場でツイートしてそのTwitter画面をすぐに見ていただくという活動を展開した。
 
(6)Twitter支援の効果
 次第に、Twitterを通して、「ママさん達でのお祝い会を行うのにおススメの店を教えてください」というコメントが入って回答した際に、「いつも商店街を利用しています。これからも楽しみにしています」というつぶやきや、「就職活動で明日使うからって言ったら、翌日のすぐにクリーニングをしてくれた。白金商店街のこの下町らしさが好き」というつぶやきがあるなど、地域を利用し、かつさらに利用しようとしている人たちの本音が聞こえるようになり、オンライン上でのゆるやかな繋がりから、商店街を利用するという実際の繋がりに活かされていることが実感できてきた。201606-4p-2.jpg
 以後も、お客様側のさまざまな声がTwitter上で届けられたことから、理事会を通して、随時その声を会長や副会長をはじめとした多くの理事の方に伝えることで、「このように言ってくれるのならうれしいね」「こう思ってもらえるなら、また頑張ってやってみよう」などとさまざまな声が飛び交うようになった。
 こうした活動によって、商店街の方々にTwitterの効果について直接見せ、実感してもらうことで、理解を進めることができた。このことが、商店街の店主の皆さんと我々支援する中小企業診断士との関係では大きな成果となり、その後の我々の活動のスタイルも、「まずは実践して見せる」ということに変革していった。こうした活動を通じて、来街者や商店街に関心を持つフォロワーも増え、当初5月のフォロワー数393人が11月には1000人を突破し、フォロワー返信率も79.1%と大人気となっていった。
 平成25年の夏まつりでも、TwitterによるPR活動をさらに積極的に展開し、その後の理事会においてTwitterのPR活動の結果を報告した際には、実際にTwitterの画面を見た理事の皆さんの反応が大変良く、また、フォロワー数も大きく伸びていることを喜んでいただいた。
 Twitter活用の目的は、目指すべきターゲットである「子育て世代の女性とのゆるやかな繋がり、共感しあえる場づくり」であって、Twitter支援を約1年半続けてきた中で、オンラインの世界では、十分に地域の方々と商店街との交流機会の拡大を図ることができた。

2.店主の自主活動で盛り上がる街へ
(1)次なる支援としての「まちゼミ」提案と店主の積極参加
 平成25年9月の理事会には、今後目指すものとして、「このオンラインで、共感しあえる商店街の下町の良さや雰囲気を、オフライン、現場の店舗でも数々の体験ができる機会を持ってほしい」という想いがあった。その実現手段として、商店街の三種の神器の一つである「まちゼミ」の実施を提案した。
 ただ、「まちゼミを開催しましょう」といっても、会長、副会長は、具体的にどのようなものかがイメージがつかなかった。そこで、すでにまちゼミのイメージを持っており、かつ最もまちゼミへの声掛けに熱意のあった商店街の着物屋の店主が前面に立って、我々診断士とともにモデルケースを作り、それを他の理事の方々に示しながら実現を図るという実施計画を提示し、全理事の賛同を得ることができた。
 また、開催時期についても、年間を通して、商店街のお客様を呼びよせるよう、また最も商店街で集客のある夏まつりが終わった後の集客を拡大すべきという提言を、これまでの診断報告書でも行っていたことに商店街の方々の賛同もいただいて、2月の1か月間を実施期間とすることとなった。ここに都区内でも先駆的で、港区初となる「まちゼミ」を実施することが決定した。
 支援が3年半を過ぎて、ようやくいい方向に進み始め、我々の支援活動に商店街の皆さんからの信頼を得ることができたエポックメイキングな瞬間であった。
 我々の活動開始当初は、会長を始め各理事の皆さんも押しかけ的な若手中小企業診断士の支援活動がどこまで続くのか、過去に入れ替わりやって来ては去っていった経営コンサルタントと同様ではないかと懐疑的な見方があったが、3年半にわたり、無償で自主的な支援活動を継続する我々の姿に、やがて理解と共感を示してくれるようになった。特に、まずは自ら動いてみた、やって見せたという活動のスタイルを始めたことが大きな契機となったのである。
 こうして、これまでの我々の活動についての信頼感を得たことから、次の一手として商店街活性化策として有力となっていた「まちゼミ」の実施を提案した際にも、個店主が積極的に賛同し、その意見をもとに、その場で会長他理事の皆さんの賛同を得ることができたのである。

(2)白金商店街まちゼミの実施
 すぐさま、会長、各理事や店主を巻き込んでの「まちゼミ」実施に向けての準備に入り、平成26年2月には港区初めての「まちゼミ」を7店舗10講座で開催し、その結果について参加商店主から、「自身のお店のことなのに、いざまちゼミで話すとなると、話しきれないことがわかった。自店のことをよくするためには、自店を知るとともに、商店街を知ることがとっても重要であると痛感した」、「このような形でお店と地域の情報をお客さんに発信できることはユニークな取り組み。このような事業は継続して行っていきたい」といった声が寄せられた。
 初めての取り組みに、楽しみつつも、反省すべき点が見つかり、かつそのインパクトが大きかった。そういった中で、若手商店主たちが「中小企業診断士の方々がここまでやってくれているが、我々だってもっとできることをやらねばならないのではないか」といった声をあげ、自主的に商店街を盛り上げることへの意欲を持つようになり、その想いが、以後の、「商店街ホームページ」「浴衣コンテスト」などのさまざまな商店主の自主活動を生み出す原動力となった。

(3)若手商店主たちの自主的な活動と表彰
 平成26年4月から6月に、若手商店主主導のもとITインフラを我々中小企業診断士が支え、わずか3か月間で商店会のホームページが完成した。さらに同年8月には伝統ある夏まつりで青年部のアイデアが受け入れられ、商店街初の「浴衣コンテスト」が実現した。201606-6p.jpg
 Twitter支援やまちゼミ支援を通して、商店街を支える活動への想いを共有できた商店街の着物屋、美容室、化粧品店や八百屋の各店主などと中小企業診断士が、審査委員、採点委員、運営スタッフを作業分担して行うことで、4年前に夏まつりの活性化方策として診断報告書で提案していた「浴衣での来街者へ優待品贈呈」や「浴衣姿での記念写真撮影」などがようやく実現に至ったのである。
 平成26年10月には、こうした白金商店会の取り組みに対して、東京販売士協会主催の『販売士が推す!! エネルギッシュタウン-私の街-』表彰事業において、商店会でのホームページやTwitterを通じての頻繁なPR活動や、「浴衣コンテスト」、「まちゼミ」実施などの一連の活動が高く評価され、「コミュニティ賞」を受賞した。
 
(4)人、店が集まり、自主活動で盛り上がる街
 その後は、理事会において、今までは発言もしなかったメンバーが積極的に発言、イベントを提案し、率先して活動を進めるようになってきている。 
 平成27年1月には、昨年のまちゼミを通して、互いの商売への想いを語り合う中で、それぞれの店に寄せられた顧客の声を新たなメニューで形にしようと、意気投合した店主達の想いを汲む支援を行った。商店街内の2店の特別コラボメニュー「着付け&ヘアセット」を小規模事業者持続化補助金事業として実施し、近隣の学校、大学等の卒業式における教師や保護者等の需要を多く取り込むことに成功している。201606-7p.jpg
 また、2月には、第2回「まちゼミ」が開催され、地域の郵便局、英会話教室等を合わせて、15店20講座が催され、多くの参加者を呼ぶことができ成功裡に終えることができた。
 こうした商店街の活性化の動きを反映して、新たな店舗進出が増えてきており、歩行者通行量の数字も支援開始当初の2,942人/日が5年後の3月には3,576人/日まで増加している。
 さらに、5月には、「着付け&ヘアセット」のコラボ事業に動機づけられた地域の5店の若手商店主達が、地域の主要顧客である「子育て世代の女性」をターゲットとして、地域への想いのある互いの店舗を紹介する独自の逸品事業を展開した。本事業も小規模事業者持続化補助金の採択を受け、10月には、小冊子として配布される予定である。
 
3.まとめ
(1)商店街支援のポイント
 平成22年の支援開始から5年半を迎え、我々中小企業診断士の切れ目のない商店街支援活動が実を結ぶようになってきたのを実感できている。やはり、商店街の支援活動は息の長いもので、商店会の会長や理事だけでなく、多くの商店主や奥様方との人間関係が深まってこそ、活性化の提案も皆さんに受け入れていただけるようになるのであって、一方、短い期間では空回りとまでは言わないが、なかなかうまく意見や提案が浸透できないものだと感じている。
 我々の行う商店街活性化の提案も、年を追うごとに現場の実態に合わせてどうすれば変革していけるのか、という視点で地についた提案ができるようになってきたことも、商店街の方々の信頼を勝ち得、活性化に向けての歯車がうまく進むことになった大きな要因と考える。
 また、企業内診断士の支援メンバーもこの間に次々と新たなメンバーの参加を得て、多様な能力や知識を継続的な商店街支援に組み込むことができるようになってきたことも今回の成功のポイントである。
 企業内診断士は、普段は業種も規模も異なる企業や組織体に勤務しており、その職務経験から得られる多様な観点からのアプローチを結集することで、実にさまざまな意見やアイデアが期待できるというメリットがある。
 これが、中小企業支援の場合では、財務内容や経営状態といった機微に触れる企業情報に関与することが避けられないことから、企業内診断士の多くのメンバーが支援に長い間参画することには難しい点がある。
 しかし、商店街支援においては、企業内診断士の所属する企業との競合関係がなく、利害関係もなく支援にあたれる現場であることが多い。また、支援活動の時間についても、夕方の各店舗の閉店後の時間に個店への訪問や理事会への参加が可能であるし、土・日曜日でも店舗の営業日であれば支援活動が進められるということから、企業内診断士の勤務時間外での支援活動が大いに可能であるということから、相性がよい支援先と言える。

(2)ワーク・ライフ・バランスに留意しつつ取り組む企業内診断士
 我々の支援メンバーの特徴として、過半数は、30代、40代の中小企業診断士が占め、企業内でも第一戦、かつ家庭内でも子育てをしながら自身の時間を捻出しながら活動を行っているメンバーも多いことが注目すべき点である。
 20代や30代で中小企業診断士を取得したとしても、企業での業務多忙や子育てが重なることなどから、以後の活動機会を見いだせず、活動を休止し、引いては中小企業診断士としての資格までも失ってしまう例を残念ながらよく耳にする。
 中小企業診断士を取得した時の想いをずっと忘れずに、その想いと知識と経験を少しずつであっても活かしながら、中小企業診断士としての活動を続けることを諦めないでほしいという想いがあり、企業内診断士を中心として新たなメンバーを集めてきた。
 このように、企業内診断士としてのワーク・ライフ・バランスも留意しつつ取り組んだことが、商店街への継続した支援につながっていると考える。
 たとえば、Twitter支援であれば、現場になかなか行けなくても、電車通勤の前後でTwitterから商店街のアカウントの情報を確認したり、リツイート、リプライなどをすることは可能である。また、1日全体を歩行者通行量調査で拘束するのではなく、10人程度で、1~2時間交代のシフトで1日の調査を実施することで、おのおのの現地での作業時間を少なくすることができる。
 必ず伝えなければならないことがある重要な例会は、必ず2名か3名で訪問をする予定を組むことで、万が一の業務上の突発的な会議や、家庭の事情等が発生した際にも、誰かが必ず発言することができるようにし、適時に支援活動の進行管理を行うことができる。
 このような観点からメンバーを集め、取り組みを進めたことによって、これまで診断士活動を行っていなかった未就学児童のいる中小企業診断士が、継続してTwitter支援活動を行ったり、家庭での出産・育児の時期に重なっている中小企業診断士が継続して商店主との会合に参加し続けられる雰囲気と環境を実現できている。

(3)最後に
 我々が長年の支援活動を通じて感じたことは、商店街支援は基本的には人と人のつながりがすべてであって、人間関係重視の支援であるべきということを我々自身が実感できたからこそ、こうして長く支援を続けることができた、ということである。
 今回、我々の支援活動を披露させていただくことで、同様に多くの企業内診断士を抱える研究会や協会の活動にヒントとなれば幸いである。
 最後に、これまでに白金商店会の支援に参加いただいた仲間の皆さん、そして我々企業内診断士の活動を温かく見守っていただいた研究会の役員並びに多くの会員の皆様に厚く感謝申し上げるとともに、今後とも引き続いて白金商店会の皆さんと手を取り合って積極的な支援活動を展開し続けることをお約束して今回の報告とする。

TOP