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2016.07.28
フランチャイズマニュアルの重要性と作成、管理・活用のポイント

フランチャイズ研究会 幹事 高木 仁

takagi.hitoshi@kernel-c.com

はじめに

 フランチャイズビジネスにおいてマニュアルは非常に重要なものである。提供する商品やサービスの品質を一定のレベルに保つためのものであると同時に、フランチャイズ本部の「商品」を象徴するものでもあるからだ。しかし、そのマニュアルを作成するためのノウハウについて体系的に整理されているものがなかった。

 そこで当研究会では、2年に渡りフランチャイズマニュアルの作成についての研究を行った。1年目は当研究会のメンバーが本部構築の支援を行っている企業へ実際に出向き、全部で約140頁に及ぶフランチャイズマニュアル一式を作成した。2年目は1年目の実践を元に、フランチャイズマニュアルの作成ノウハウを体系化し、「フランチャイズマニュアル作成ガイド」(同友館)として商業出版した。

 

 本稿では、フランチャイズビジネスにおけるマニュアルの重要性、作成方法、作成後の管理・活用方法について、実際のマニュアルの作成例も含めて紹介する。

 

1.フランチャイズ本部にとってのマニュアルとは「経営ノウハウ」を具象化したもの

(1)マニュアルの意義

 マニュアル作成の最大の目的は、提供する商品やサービスの品質を一定のレベルに保つためである。共通のブランドを使用してチェーンビジネスを展開する場合、商品を作る人やサービスを提供する人が異なっても一定で同質の商品やサービスを提供しなければ、ブランド価値が高まらない。

 マニュアルによってオペレーションを標準化することで、商品やサービスを提供するまでのプロセスでのバラツキがなくなってくる。そして、「あのチェーンに行けば、大体このくらいの商品やサービスが受けられる」という、顧客の安心感を得るようなオペレーションを目指さなければならない。ブランドには大きく分けて「出所表示機能・品質保証機能・広告宣伝機能」という3つの機能があるが、マニュアル作成はこの中の「品質保証機能」を担保するために必要不可欠なタスクである。

 また、企業のコンプライアンスという観点からもマニュアルは重要なものとなる。事業責任者の悪意による不祥事を防止するのはもちろんのこと、無意識による過誤を避けるためにも、事業責任者の責任範囲や、業務内容を明確にする必要がある。そのため、これらを明確に規定した管理マニュアルという形で整備する必要がある。

 さらに、マニュアルは作成して終わりではなく、活用されることに意義がある。事務所のキャビネットに置かれているだけでは意味がなく、新しいスタッフの研修のテキストとして活用するとか、店舗や現場でオペレーションをチェックする際の指標とするなど、実際に活用されなければならない。

 

(2)フランチャイズビジネスのしくみ

 フランチャイズビジネスのしくみについて確認する(図表1)。

 本部から加盟者に対してはフランチャイズパッケージが提供される。フランチャイズパッケージには、「商標の継続的使用の許可」「経営ノウハウの提供」「継続的な経営・運営指導」などが含まれる。そして、加盟者はこのパッケージの見返りとして、本部に対価(加盟金、ロイヤルティなど)を支払うことになる。

 ここでいう「経営ノウハウの提供」とは、「フランチャイズ本部が持つ経営ノウハウの集大成」を形にした「マニュアル」を加盟者に渡す行為である。そして、この「マニュアル」を使ってノウハウを定着させる「研修」の実施が行われる。さらに、マニュアルをベースにした「継続的な経営・運営指導」が行われることになる。

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図表1 フランチャイズビジネスのしくみ

(3)フランチャイズビジネスにおけるマニュアル

 フランチャイズ本部がフランチャイズパッケージを販売し、パッケージの継続的な運用を提供するビジネスであるという側面を考えれば、パッケージに含まれる「経営ノウハウ」は、フランチャイズ本部にとっての「商品」であり、それを具象化したものが「マニュアル」である。つまり、マニュアルは、フランチャイズ本部の「商品」を象徴するものでもある。「商品」ということを考えれば、加盟金の金額に見合うノウハウを提供している根拠として、マニュアルが相応の質と量を具備していることが、フランチャイズ本部と加盟者との良好な関係を構築するうえでも重要な要件となる。

 また、フランチャイズビジネスにおいて、本部と加盟者は異なる事業体であり、それぞれの責任において事業を推進することになる。このとき、チェーン全体のコンプライアンスという観点からも、マニュアルは重要な意味を持つ。本部が何をマニュアルに規定しているかによって、違法行為の責任が本部にあるのか加盟者にあるのか解釈が分かれることがある。加盟店がマニュアルに違反して営業し、トラブル・違法行為などを起こした場合には、本部に責任はないとすることができる。一方、マニュアルがない、規定がされていない場合、加盟者が起こした問題であっても、本部の責任が問われる可能性も出てくる。

 

2.マニュアル作成の基本

(1)マニュアルの体系

 フランチャイズマニュアルの体系を図表2に示す。

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図表2 マニュアル体系

(2)作成のステップ

 マニュアルをいきなり作成することはできない。チェーンオペレーションに向けての取組みは、「標準化」→「システム化」→「マニュアル化」の順に進む。マニュアル作成に取りかかる前に、標準化やシステム化ができているかどうか確かめる必要がある。

 標準化とは、製造方法、調理方法、施術方法、接客方法など、チェーンの中で決められたルールや手順を確立することである。店舗や人によってやり方が違っては、チェーン全体の質を担保できないため、まずはオペレーションを標準化することから始める。また、100%オペレーションを標準化することは不可能なことであり、顧客満足度の視点から考えると顧客は応用的な20%のサービスに付加価値を感じるということからも、80%程度の割合で標準化することが妥当である。

 次の段階であるシステム化は「IT化する」という意味ではなく、しくみ化するあるいは段取り化することである。システム化は個々の作業レベルから始まり、しかる後、作業工程全体を取り扱う。標準化された作業レベルの各要素が、オペレーション全体の中で最適化されている状態がシステム化である。システム化による最大の効果は「ムダの排除」である。オペレーション全体をシステム化することで、人員の最適な配置や、在庫過多やロスの発生を抑制することができる。

 次にマニュアル化(作成)ということになる。作成ステップを図表3に示す。

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図表3 マニュアルの作成ステップ

(3)わかりやすいマニュアル

 実際に作成されるマニュアルはわかりやすくなければならない。

 わかりやすい文章で書くためのポイントとしては「ターゲットに合わせて書く」「簡潔な表現で書く」「表記のルールを統一する」などが挙げられる。内容がわかりやすいものであっても、読者が理解できる言葉で書かれていなければわかりやすい文章とは言えない。とりわけ、専門用語や業界用語の使い方には配慮が必要である。

 また、分かりやすいマニュアルを作成するためには、文章ばかりでなく写真やイラスト、フロー図や表などの図表を多く使うように構成する。文章による左脳への刺激に加えて、図表を使って右脳も刺激することで、脳への定着率を向上させる狙いがあるからである。

 図表について、基本マニュアルで使用するフロー図やマトリックス図などはデスクワークで作成できるが、オペレーションマニュアルで多用する写真やイラストには現場での取材やヒアリングが欠かせない。マニュアル作成を契機として現場に足繁く通うことで、業務改善の種を見つけることもある。

 さらに、ページのレイアウトも読みやすさを左右する要素である。読者に読むストレスを感じさせないためのポイントとしては、「要素を整列させる」「関係のある要素を近づける」「対比を強調する」などが挙げられる。

(4)マニュアルの作成例

 実際に作成したマニュアルの作成例を図表4に示す。

 現場の写真やイラスト、表などを多数用いてわかりやすく伝えることに留意している。また、見出しに背景をつけたり、本文とは別の書体を使ったりすることで目立たせるなど、読みたいところがすぐに見つかるように配慮している。

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図表4 マニュアルの作成例

3.マニュアルの管理と活用

(1)マニュアルの管理・メンテナンス

 マニュアルは「チェーンのノウハウの集合体」であり、大変重要なものである。当然、店舗にはマニュアルを安全に保管し、営業秘密として保全する義務がある。また、フランチャイズ展開しているチェーンの場合には、マニュアルは本部のノウハウの集大成であるとともに、フランチャイズシステムを象徴する重要なものである。フランチャイズ契約上では、加盟者に対して、営業秘密として保全する義務を課すことが通常である。

 外部環境の変化や顧客の変化、自社のシステムや商品構成の変化などにより、フランチャイズシステムは常に進化しており、システムとしてのノウハウを集約した存在であるマニュアルも進化し続けなければならない。チェーンとしての設備更新、商品基準、情報システム、サービス品質の基準、具体的なオペレーションの手順などが進化した場合、その内容を全ての店舗、オーナーとそこで働く従業員に一定期間内に伝え、実際の店舗でのオペレーションを変えてゆくという行動を起こさせるしくみが必要になる。

 

(2)マニュアルの活用方法

 マニュアルは作って終わりではなく、それを活用していくことが重要である。さらに、マニュアルは一部の担当者だけが活用していても意味がなく、オペレーションに関わる全員がマニュアルを活用し、マスターしていなければならない。

 せっかくマニュアルを作成したにも関わらず、活用できていなければオペレーションの標準化も進まず、店舗や人によって品質にバラつきが出てしまい、リスクの高い状況でオペレーションが行われることになる。たとえば、食品を扱うオペレーションにおいて、マニュアル通りに食材を扱っていない、機器の洗浄が行われていないなどが起きていれば、食中毒を起こすリスクが高まる。一人でも守らない人がいると、チェーン全体の存続を揺るがすほどの大事件へつながることもある。

 苦労して作成したマニュアルを活用し、結果を残すためには、活用するしくみづくりが必要である。しくみとしては、「すぐに見られる状態にする」「教育ツールにする」「チェックツールにする」などが挙げられる。

4.まとめ

 経営者がひとりで目を光らせて管理できるのは3店舗程度までである。3店舗以上の多店舗化を目指すのであれば、業種の別にかかわらず、オペレーションをある程度、標準化、システム化、マニュアル化していなければ、提供する商品・サービスの品質を一定に保つことはできない。また、フランチャイズビジネスにおいては、マニュアルは、フランチャイズ本部の「商品」を象徴するものでもあり、相応の質と量が求められる。

 さらに、マニュアルは作成して終わりではなく、その後の正しい管理、ビジネス変化に応じた改訂、現場での活用は必須であり、そのためのしくみづくりも重要である。

 参考文献

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フランチャイズ研究会 著『フランチャイズマニュアル作成ガイド』同友館

フランチャイズ研究会 著『フランチャイズ本部構築ガイドブック』同友館

フランチャイズ研究会について

 毎月の月例会に加え、分科会形式によるFCビジネスの研究、研究結果の書籍化、日経フランチャイズ・ショーにおける相談ブースの出展・セミナー講師の協力など、FCビジネスの健全な発展とノウハウ開発を目的とした実践的活動を行っている。

月例会:毎月第3木曜日 18:30~20:30

HP:http://fcken.com/

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