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2016.08.29
住宅産業経営支援研究会 ~「作る人」と「住む人」の架け橋に!~

住宅産業経営支援研究会 ~「作る人」と「住む人」の架け橋に!~

住宅産業経営支援研究会 代表幹事 飯島 康

 住宅産業経営支援研究会は、会則に「住宅産業経営に関心を持つ中小企業診断士が、・・・」と明記されている通り、住宅メーカー、建材メーカー、金融機関等の出身者から「自称 消費者代表」まで、住宅に関心を持つ多士、多才な中小企業診断士の集まりである。  今回は、東京都中小企業診断士協会認定研究会として、住宅建設に携わる中小企業(作る人)、或は、生活者(住む人)にどのような支援ができるかの考察の報告である。  具体的には、研究会・研究会会員の企業支援事例を「提言書」という形でまとめ、今後、研究会活動を展開するツールと位置付けるとともに、研究会そのものを知ってもらうための準備を行い、何とか外部へ展開が図るまでになってきた、そんな足跡をまとめたものである。

Ⅰ.住宅産業界と研究会:「作る人」と「住む人」との架け橋  私たち研究会のコンセプトは「『住む人』と『作る人』との架け橋」である。これを簡単に図式化すると下図のようになる。生活者「住む人」の家に対する想いを、住宅建設に携わる多くの人達「作る人」にいかに伝え、経営に役立てていくかの架け橋である。 1p図.jpg

 双方の理解者として当研究会が仲介役となり、中小工務店等への経営的視点での支援を行っていきたいとの想いである。  このような構造から、住宅産業は「すそ野が広い」「経済への波及効果が大きい」と言われている。また、一生に一度、手に入れられるかどうかの「住宅購入」に際して、「住む人」が、多くの「作る人」を相手にするには、あまりに範囲が広すぎることから、これらのまとめ役として、工務店・建設会社等があり、更に、建設業者は許可業種として行政の管理下に置かれているのである。  ここでは、「作る人」のまとめ役を総称して「地域の工務店」と呼んでいる。 *対象とする「地域の工務店」の規模等 近年の住宅産業市場の縮小、ストックからフローへの流れ、地域工務店の経営の実態等から、当研究会が対象としている地域の工務店のイメージは下記のとおりである。  売上高1~5億円程度、社員数3~10名程度、新築工事+リフォーム工事

Ⅱ.研究会活動の状況 1.研究会の現状 (1)研究会の発足と会員数(多様な出身業界)  当研究会は、同じ東京都中小企業診断士協会の「建設業経営研究会」に準備委員会が置かれ、平成10年に独立したもので、いわば親子のような関係で、現在も両方の研究会に所属している会員もいるが、研究会活動としては独立した研究会活動を行っている。  会員数は、H28年5月(研究会総会)時点で22名である。  内訳は、住宅産業に特化した研究会ではあるが、先の業界の特性から、  住宅メーカー・建設会社:5名、建材メーカー・商社:4名、IT関係:3名、  不動産関係:2名、金融保険機関等:4名、その他:4名(計22人)となっている。 (2)定例会活動  平成27年度の活動状況は以下のとおりである。

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2.これまでの実績と反省  今回の活動報告の前に、これまでの外部への活動を整理してみた。 (1)研究会としての外部活動 ・研究会の仲間で作り上げた活動:執筆~書籍出版「工務店のQ&A(井上書房)」 ・会員個人への業務だったものを研究会の仲間で支援した事業  *工務店支援:工務店創業支援1件、完成見学会支援1件  *建設専門職育成学校支援:セミナー講師:延20名程度  *業界データ整理支援:業界動向レポート:延50編程度  こうした支援活動を踏まえ、平成20年にLLPの立ち上げを行う。 (2)研究会としての「LLP住宅産業経営支援協議会」の設立と解散  前述のような研究会による企業への支援実績も踏まえ、平成20年6月に、支援活動が可能な研究会所属のプロコン会員7名が理事となり、「LLP住宅産業経営支援協議会」を立ちあげた。また、研究会の他のメンバーは後方支援として、LLPが支援依頼を受けた際にはデータ収集等の役割を担うとしての体制である。誰もが、これからの活発な展開を疑ってはいなかった。  しかし、残念ながら、3年間目立った成果があげられないなか、中心となっていた理事長の病死という、思ってもいなかった事態によりLLPは解散せざるをえなかった。  この時の反省としては、企業支援のスキルを持った会員はいるが、LLPとしてスキルを生かす市場を探し出す活動、いわば営業活動への対応が甘かったと考えている。  こんな例を聞いたことがある。ある研究会でセミナーを開催したが、初回は、会員の顧問先にお願いをし、セミナーに参加していただき、大盛況であった。2回目は、新たな顧問先も先細り、参加企業様は半減し、3回目は・・・、である。  このような事例をこの紙面で報告すること自体「いかがなものか!」とおしかりを受けそうであるが、この体験が、次に紹介する研究会の外部支援へのアプローチ方法に何らかの影響を与えていると考えられていることから、あえて紹介させていただいた。

Ⅲ.研究会の新たな取り組み 1.「提言書 地域工務店の受注の方程式」の作成  外部活動に向けての新たな模索を開始した。それが今回の報告の内容である。 (1)研究会の営業ツールとしての提言書作成:「作る人」と「住む人」との掛け橋  LLP活動への反省、また、研究会として新たな外部活動を模索する中で、「研究会のことを知ってもらうにはどうしたらよいのか」がテーマとなり、模索する中で、工務店向けに何らかの提言書を作り、これを営業ツールにしたらどうかとの案が浮上してきた。  同じころ、定例会での「会員からの報告」の中で、お客様のコンサルタントへのニーズの1つとして「不安」「不満」「不信」等の「不」をどのように解消してあげるかがあるとの報告があった。 3p図.jpg

 このことをヒントに、また、研究会の方針である「作る人」と「住む人」との架け橋を念頭に、提言書の主旨として、「住む人」が家を作るにあたっての「不安・不満・不信」は何か? 特に、不良業者、手抜き工事等、時折、新聞紙上を騒がす建設業者への不信感を持つ「住む人」が、地域の工務店に安心して家づくりの相談に来ていただくには、工務店としてどのような対応をすればよいのか。「作る人」である工務店の受注に結びつくヒント集的なものができないかとのこととなった。まさに「作る人」と「住む人」とのかけ橋である。これが「提言書 地域工務店の受注の方程式」となったのである。 (2)「住む人」の不安・不満等を「作る人」が解消することへの「系統図」

・基本的な考え方  提言内容を検討するにあたり、研究会で以下のような基本的な考え方を確認した。

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・「事業の流れ」と工務店の対応のポイント  前記の流れに沿って、「作る人」が「住む人」の不安等を解消し、信頼を得るにはどうしたら良いのかを、「設計段階~施工段階~生活段階の流れ」に沿って検討した。  系統図の流れは下図の通りである。

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ⅰ.「計画段階」での不安解消:安心して相談ができる工務店になるには? A.自社のことを知ってもらう提案3件   B.顧客のニーズ・イメージを把握する提案3件 C.技術力・施工能力の見える化を図る提案4件  D.見積もりの見える化を図る提案3件 ⅱ.「施工段階」での不安解消:気に入った家を作ってくれるか  A.施工状況の見える化を図る提案3件   B.顧客対応力の見える化を図る提案5件 ⅲ.「生活段階」での不安解消:住んでからの不具合が発生しないか  A.フォロー体制の整理を図る提案5件               【全26提案】

 少し見にくいが、系統図の抜粋を下図に示す。

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(3)提言の原稿作成  この骨組みができた段階で、「対応のポイント」に相応しい提言タイトルを募集し、各ポイントに3~5項目を割り振り、改めて執筆の希望を募った。この際、企業支援の経験、企業からの情報、研究会での工務店見学等、具体的な事例を織り込んでの提言を依頼した。 *提言の構成:1.提言の背景、2.具体的な取り組み、3.期待される効果 *提言内容:イベントの開催、ライフスタイルへの提案、原価の把握が基本、       施工管理のポイント、住宅ローンの考え方、従業員のコミュニケーション 等々の26提案で、ほぼ全会員参加の44頁の小冊子である。当研究会の今後の外部活動に向けた営業ツール的な資料であり、地域工務店へのアプローチのツールになるものである。  正式名称は、下記の通りとした。  「提言書 地域工務店の受注の方程式 ~信頼され選ばれる工務店になるためのヒント集~」

2.会員の調査と研究会パンフレットの作成  営業ツールができたことから、早速、当研究会のメンバーと関係のある建設業関連の団体にお持ちし、研究会の紹介と提言書の説明を行った。「このような資料は初めて」との関心は持っていただいたが、「どのような方がいて、どんなことをされている研究会ですか?」とのきわめて単純、明解な質問をいただき、とまどってしまった。対面している中ではいくらでも説明はできるが、たとえば、この団体を通して工務店等への紹介をお願いする場合、仲介をお願いする団体の方に当研究会を紹介していただく資料がなかったのである。  恥ずかしい限りであった。スプリングフォーラムで診断士の仲間を募るパンフレットはずいぶん前に作成し、活用しているが、地域の工務店等へ紹介するパンフレットはなかったのである。 (1)会員の得意分野の調査  早速、研究会内にアンケート調査委員会を立ち上げ、会員の得意分野や研究会に何を求めて入会をしたか、更に、外部への支援、働きかけ等を行う場合に、対応する時間等が取れるか、等のアンケートを行った。  先の研究会会員の構成にも示すとおり、研究会には、住宅産業をめぐるさまざまな分野の仲間が集まっているが、入会時の簡単な「自己紹介書」の他には、ことさら得意分野(企業支援・セミナー等への対応のできる分野)を改めて確認したことはなかった。  全員へのアンケートにより得意分野を確認した結果が、次のとおりである。  ⅰ.経営方針等の作成への支援   *事業計画の作成支援 *経営革新計画の作成支援 *企業統合の支援等  ⅱ.社内組織強化への支援   *業務改善・IT活用支援 *施工管理・従業員育成支援 *予算管理の支援等  ⅲ.市場拡大への支援   *販路開拓・顧客管理支援、*公的支援・住宅ローン対応、*リフォーム相談等  また、ピンポイントの対応として「太陽光発電への対応」や「フラット35の活用への指導」等、実に多彩なメンバーがいることが分かる。 (2)研究会紹介パンフレットの作成:クラウドワークスの活用  会員の状況を把握した後、これらを生かしてのパンフレット作りが始まった。  「『住む人』と『作る人』の架け橋になりたい」をコンセプトに、会員募集用のパンフレットを参考に、今回作成した「提言書 地域工務店の受注の方程式」をプレゼントに、「こんな支援ができます」との素案を作成した。会員間で2か月程度検討したが、文言の整理はできても全体のレイアウト・デザイン等はうまくまとまらない中、会員の提案で「クラウドワークス」の活用を試みた。  依頼を行うと2週間で8件の応募があった。同じ依頼資料から、ここまでの種々のデザインに展開されるのかと驚かされた。創造の世界の多様さ・奥深さに感心し、また、参考になった。完成したパンフレットを示す。6p図.jpg

3.今後の展開に向けて  「提言書の整備」、「会員の得意分野の確認」、「研究会パンフレット」の整備ができたところで、改めて、今年度、外部へ向けた活動を行うためのプロジェクトを立ちあげた。  「仮称 受注の方程式活用プロジェクト」である。HPの担当者を含め5人のメンバーである。今までほとんど活用されてこなかったHPを有効に活用し、研究会会員全員が後方支援を行うことを踏まえての、具体的な対応を検討するものである。

(1)研究会の当面の方向性 ❖対象市場:地域工務店、住宅専門工事業者  代替市場:研究会の既存関係団体・企業等       住宅産業関係団体、商工会、商工会議所等 ❖支援形式:個別企業支援:経営改善・人材育成等の個別の企業を対象とした支援       グループ支援:講演会・セミナー等による企業経営者・従業員研修等 ❖支援分野:経営方針作成、業務・現場管理の改善による利益確保、資金繰り管理等 ❖紹介ツール:研究会パンフレット、「提言書 地域工務店の受注の方程式」  ❖具体的活動方針:  ◦地域工務店へ直接アプローチをかけていく手法は、実際には、会員の関係工務店や飛び込み営業的なものとなり、限られた範囲での対応しかできず継続的な関係維持も難しいことは、過去の事例からも学んだところである。このため、代替市場として、各会員が関係する住宅関係機関を代替市場と考えアプローチを行い、更にはこれらの機関から工務店や建設業団体等を紹介していただく手法を検討している。

 ◦「作る人」への支援を通し「住む人」の支援を   「作る人」が抱いている家づくりへの「不安」をどのように「信頼」に変えていったら良いのかを、「作る人」との仲介ツールである「提言書 地域工務店の受注の方程式」を通して我々研究会のことを知ってもらい、我々を有効に活用してもらうことが、「作る人」への支援になると同時に、研究会のレベルアップにつながると信じての活動である。研究会としての収益にこだわるものではなく、「生きた支援」を通して、住宅産業界の実態に触れられるとともに、「住む人」にとってより魅力ある「作る人」になっていただく支援ができればと思っている。

(2)研究会としての支援の社会的な責任について  研究会としての活動が、「作る人」に対してどこまで責任を担保しての支援が可能なのか。  研究会としては「研究」だが、企業としては実態のある「事業」である。このため、研究会は、あくまでも企業経営への後方支援、アドバイザーであるといえる。  とは言え、中小企業診断士の資格そのものは、公的なコンサルタントの資格であり、当研究会も改めてLLPやNPOという形での企業支援の方法もあるのではとも考えている。  研究会グループの総合力を結集し、中小の地域工務店がより元気になる活動を支援し、地域の自然環境、社会環境にあった、人々の安心、安全、快適な住空間を創造するお手伝いができたらと切望している。

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