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2016.12.29
営業力強化コンサルティングメニューの開発

営業力強化コンサルティングメニューの開発

営業力を科学する売上UP研究会 渡邉 卓
YFA64764@nifty.com

 本研究会は、法人営業における課題が一目で分かる「法人営業力診断アンケート」を開発し、2014年度中小企業経営診断シンポジウム第3分科会で発表した。その後、システムに改良を重ねながら、2016年9月現在13社から221名の回答を蓄積し、企業の困りごとや営業課題を可視化できた。
 せっかく営業課題を可視化できても、解決策を提案できなければ、中小企業経営者の悩みは解消しない。そこで本研究会は、2015年7月から、アンケートで可視化できた営業課題それぞれの解決策となる「営業力強化コンサルティングメニュー」の開発に着手した。1年をかけて完成したメニューをもとに、金融機関と提携して中小企業向けセミナーを開催し、また、中小企業に対する個別支援を開始したので、ここに報告する。

1.ツール開発の背景、経緯
(1)営業力強化に注力したい中小企業
201701_4_1.jpg 日本政策金融公庫「2016年中小企業の景況見通し」(2015年11月)によると、中小企業が経営基盤強化に向けて注力する分野は、2位「人材の確保・育成」(51.2%)に大差をつけて、「営業・販売力の強化」(69.4%)が1位である。
 売上を会社にもたらす源泉である「営業・販売力の強化」に対して中小企業経営者の危機感が強い一方で、中小企業の営業力強化に焦点を当てた解決策は多くないのが現実である。

(2)経緯
 工場と違って営業現場は、相手(顧客)次第で状況が変わり、現場に目が届きにくく定量化が難しいことから、どういう問題が起こっているのか把握しづらい。
201701_5_2.jpg 当研究会が開発した「法人営業力診断アンケート」は、Web上で4段階の選択回答50問と自由回答の5問に答えることにより、法人営業に必要な5つの評価軸(戦略力、計画力、行動力、商談力、管理力)に沿って測定する。図表2のように、営業マネージャー、営業担当者という階層別のレーダーチャートによって、把握しづらい営業課題を可視化できる。50問の回答分析に加えて、豊富な自由意見を集められるのが本アンケートの特長だが、それらをまとめた分析レポートを提示・説明する中で、中小企業経営者に改善策を提案することができる。
 アンケート分析から問題把握までは仕組み化・自動化することで省力化できたが、その後の提案はコンサルタントのスキルや経験に依存する部分が多く、個別対応による提案ツール作成に多大な時間がかかっていた。

2.開発ツールのポイント
(1)課題に最適なメニューの用意
201701_5_3.jpg 法人営業力診断アンケートを受診する中小企業が抱える営業課題はさまざまだ。提案を1つ、2つ定形化しても、幅広いニーズにとても対応しきれない。
 そこで当研究会は、2015年7月から1年をかけて、「可視化課題を解決」する営業力強化コンサルティングメニューを開発した。中小企業経営者が自社の営業課題に合わせて、11種のツールから自由に選べる、という意味で「メニュー」と名付けた。図表3のとおり、5つの評価軸ごとに重複しないように、かつ相互に補完しあえるようなメニューを選定した点が特長だ。
 たとえば、「管理力」には3つあるが、「組織営業のプロセスと管理」は体系化・仕組み化してPDCAを回していくものであり、「営業会議の実践法」は営業会議を効果的に行うための具体的指導である。3つめの「コミュニケーション力の強化」は人の思考タイプに着目した、上司の部下指導、取引先担当者への対応方法など、人的な「コミュニケーション力の強化」に力点を置いた。このように同じ管理力でも硬軟織り交ぜたメニューを用意して、人材育成を伴う営業力強化を目指すことが大きな特長である。
 当研究会の月例会で3か月おきに各分科会が進捗報告を行ない、分科会の間で重複や齟齬がないか横串をさして、メニューのレベルを合わせた。
 2016年1月の月例会で、都内金融機関A行を顧客に持つ当会員が仲介し、A行研修担当者を招いてプレゼンを行った。それと前後してA行が主催する中小企業向けセミナーで会員が講義する機会を得た。それらを踏まえて、A行が新しく企画したスキルアップ研修の受注を目指した。ツール開発を1年間続けることは心身ともにきついが、セミナー開催が動機づけとなって中だるみを防ぎ、メニューをブラッシュアップできたことは幸運だった。ここで、メニューの一部を紹介する。

(2)メニュー紹介①「新規開拓に繋げる展示会活用法」
 1つめは、新規顧客開拓を行うことを決定し、具体的営業活動として展示会出展を選んだ場合のコンサルティングメニューである。
 展示会出展は、経営革新計画認定企業向けに優遇策があるなど、新規顧客開拓策として大変有効である。しかしながら、展示会に出展したことがなく経営資源が乏しい中小企業は、どうやって展示会を企画運営するのか術を持たない。
201701_6_4.jpg そこで当研究会は、図表4のとおり展示会のステップ別に手順(シーン)や内容をまとめて、その行動内容を細かく取り決めた。展示会の準備と実施はイメージがわきやすい一方で、忘れがちな行動がある。
 事業戦略に沿って出展コンセプトや顧客ターゲットを決めた上で出展展示会を選ぶ「企画・計画ステップ」、来場者リストを作成して社内で共有した上で御礼やフォロー訪問する「フォローステップ」の2つが展示会成功の鍵であり、それらの進め方も具体的に織り込んだ。
 ファッション性の高いバッグ製造卸売業に勤め、東京ビッグサイトで展示会出展を手掛けた会員のノウハウが大いに活きた。前職の大企業時代に培ったノウハウを、小規模企業で実践する過程で磨いた工夫が織り込まれているので、中小企業が使いやすい事は明らかだ。

(3)メニュー紹介②「組織営業のプロセスと管理」
201701_7_5.jpg 中小企業における営業活動は、経営者や辣腕営業部長の個人プレーが多いが、属人的であるがゆえに、その人が引退・退社すれば途端に営業力が落ち、売上にマイナス影響を与えることが多い。
 個の力に頼るのでなく、営業マネージャーや担当者に加えて、技術部門など他部門と連携して全社一丸になった組織営業こそが、経営資源に劣る中小企業には不可欠である。そこでは、誰が、どのタイミングで、何処へ、どのように行動するのか「仕組み化」、「見える化(可視化)」することで、ごく普通の営業担当者が一定レベルの営業成績を発揮できる仕組みが求められる。その答えとして、図表5のとおり、営業プロセス別に行動や指標を整理・設計するマトリックスを開発して、仕組み化している。
 これは、高額産業機器の法人営業経験が長い会員を中心に仕組み化したものであり、A行主催セミナーでも講演した。ここでは2例を紹介したが、開発したメニューの全てが、実践経験に基づく会員のノウハウを結集して作り上げた。

3.効果
(1)メニューの会員間共有
 営業力強化コンサルティングメニューとして11種のツールをラインアップすることで、ある程度の営業課題に迅速に対処できるようになった。2016年7月には一泊二日の合宿を行ない、模擬講義やグループワークを経て、他の会員が作成したメニューも各自が使えるように、コンサルティングスキルの底上げを図った。

(2)金融機関と提携したセミナー開催
201701_7_6.jpg 都内金融機関A行は、中小企業支援にあたって、図表6のような認識を抱いていた。中小企業の課題の本質は「いかに売上を増やすか」にかかっているが、それに応えられる支援の仕組みがないことだ。
 このような認識をもつA行だったので、当研究会の提案に興味を示し、単発のセミナーでなく、企業の集合研修(5回シリーズ)という形で受注できた。2016年10月から12月にかけて研修を開催しており、実際に講義することで受講者から有益なフィードバックを得て、メニューの改良に活かしていく。
 
4.今後の活動予定
 営業力強化に悩む中小企業経営者に提案するコンテンツは完成したので、中小企業に提案する機会を増やすことが次の課題である。そこで、「中小企業への提案窓口」となる中小企業支援者とパートナーシップを結び、Webサイトの新設、お試し体験「営業力強化セミナー」等を用意することで、多くの中小企業経営者の課題解決につなげることを目指している。その全体像は、図表7のとおりである。

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(1)パートナーとの提携
 中小企業の最大課題である営業力において、体系化・仕組み化された支援策が他にないという金融機関A行の現状認識から類推すれば、当研究会のメニューは、他の中小企業支援者に歓迎してもらえるものと考えた。
201701_9_8.jpg そこで、自らクライアントを持つものの、営業力強化の手立てを持たない中小企業支援者に提案窓口になっていただく仕掛けを考案した。図表7の左側に挙げた提案窓口のうち、都内某区の産業振興部門、税理士や社会保険労務士が属する団体、2つの研究会、1つの出版社と提携済みあるいは協議中である(2016年9月現在)。
 中小企業経営者、およびパートナーである中小企業支援者に情報を直接お届けするために、図表8のとおり、ホームページを立ち上げた。

(2)お試し体験「営業力強化セミナー」の開催
 企業経営者がいくら興味をもっても、法人営業力診断アンケートを受診することで自社内情をさらすこと、効果が見通せない中でコンサルティングをいきなり有料で発注することに抵抗感を抱く心理が想定される。

 他士業を含む中小企業支援者にヒアリングしたところ、たとえば、税理士や社会保険労務士が顧問先に営業力強化を提案しても、営業面の具体的な質問には答えられないし、「先生の専門外ですよね」といわれて、暗に拒絶されてしまうようだ。

201701_9_9.jpg

 そこで、経営者と一緒にお試し体験「営業力強化セミナー」を受講すれば、日頃の関係を一旦リセットできて、営業力強化の必要性を理解してもらえ、中小企業支援者にとっても新しい案件受注が期待できる。
 図表9のとおり、2016年12月から定期的に開催する予定である。交通至便な会議室で、平日夜に2時間程度のセミナーを行ない、メニューを開発した会員が講師を務める。セミナー終了後に個別相談会を設けて、中小企業経営者の課題解決にあたる。

(3)企業へのコンサルティング実施と支援体制の強化
 当研究会の最終目標は、中小企業の営業力アップである。コンサルティングメニューがセミナーで使えても、企業へのコンサルティング現場で効果を発揮するとは限らない。そこで、都内某区の産業振興部門から、営業力強化に困っている企業を紹介してもらい、複数の企業に対して営業力強化支援コンサルティングを行なっている最中だ。
 中小企業の実情に合ってない部分は、実践を通じてメニューのブラッシュアップを図っている。また、メニューを作った会員だけが研修やコンサルティングを行うのでは、数多くの中小企業に対して同時並行した支援が難しい。そこで、1メニューを最低2~3人の会員が説明できるように、内部研修の仕組みをつくって、コンサルタントの内部養成を図っている。

5.まとめ
 顧客を抱える中小企業支援者にとって、自らが関わりながら営業力強化を推進でき、経営者が自信を持てるようになれば、事業計画作成や設備投資、人材育成や資金繰り強化等のニーズが出てくることが見込まれる。中小企業支援者どうしがWin&Winの関係でパートナーとなり、中小企業が最も重視する営業力強化の一助になりたい。

【執筆メンバー】
営業力を科学する売上UP研究会
 渡邉 卓(リーダー)、阿部 裕、坪田 誠治、東條 裕一、福地 信哉、丸山 直明ほか

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