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2017.03.27
新たな仕組みによる「ものづくり企業」の活性化支援

新たな仕組みによる「ものづくり企業」の 活性化支援

城北支部 ビジネス創造研究会

伊藤 敦

はじめに  

 東京協会城北支部ビジネス創造研究会は、「新たなビジネスの創出による中小企業診断士の活動領域の拡大」を目的とした研究会である。

 具体的な活動は、板橋区、荒川区を中心とした城北・城東地域の行政、商工会議所、産業連合会、商店街連合会・信用金庫などと連携して地域の製造業・サービス業者・小売店舗の実態調査や支援プログラム、セミナー開催および個別企業・店舗に対する支援に関わる企画・提案である。更に、板橋区においては地元政党との勉強会・政策提言を行っている。実務については、(一社)板橋中小企業診断士協会(「板診会」)、荒川区中小企業経営協会(「荒川経営協会」)など、各区の診断士会と一体となり実施している。

 平成25年の政権交代以降の補助金の申請・補助事業の実施に関して、「板診会」および「荒川経営協会」と一体となり、新たな仕組みの構築により一貫した企業支援を確実に実施して大きな成果をあげることができた。その仕組みと実施事例について述べることとしたい。

1.平成25年以降に実施したものづくり企業の支援概要

ものづくり小規模事業者支援への新たな仕組みづくり

○小規模事業者の課題

 ここ数年来中小企業の経営環境は厳しさを増しており、多数の企業は企業規模を縮小し経費削減による生き残りを図ってきた。平成25年の政権交代以降、各種の補助金による中小企業に対する支援策が強化されているが、小規模事業者においてはギリギリの陣容で運営していることより、補助金の申請書類作成における要点の理解や、実際の作成作業を単独で実施することが困難な状況にある。また、採択・承認後の事業実施に際して、関連書類の整備や定期的な報告などの負担が大きいのが実情である。

  結果として、申請を検討したものの見送るケースはもとより、承認後に実施を辞退する事例も少なからず発生している。

 具体的な課題は以下の通りである;

 ・省庁、都、区などからさまざまな補助金が公募されているが、自社に最適な補助金の選択が困難。

 ・補助金申請の経験がなく具体的に対応方法が判らない。また採択を獲得するための要点を理解することが困難。

 ・複雑な申請書の作成作業に手が回らない。

 ・採択・承認後の関連書類の作成、報告などを行う体制がなく、最終的に補助金を獲得する確信が持てない。

○課題解決方法

 城北地区の企業には小規模事業者が多く専門家の支援を求める声が高まったことにより、当会では毎月の定例研究会において対応方法について検討を重ねてきた。

 その結果、以下の仕組みで支援活動を実施した。

 ・荒川区産業経済部、板橋区産業経済部、板橋区産業振興公社と協議の結果、期間限定の補助金に関わる相談専門の窓口を設け、中小企業診断士が企業からの相談に対応する。

 ・役所は区内の企業に窓口設置による支援の案内を行い、窓口相談の活用を促す。

 ・窓口相談に引続き、専門家の派遣制度を活用し、申請書の完成まで中小企業診断士がハンズオンの支援を行う。

 ・採択・承認後の補助事業実施においても継続的な支援を行い、最終的に補助金の獲得まで継続する。

 ・補助事業実施の過程では単に書類作成業務に留まらず、申請書に記載した事業計画の実現に向けてのアドバイスを行い、企業の経営課題の解決をサポートする。

 ・この過程で担当した中小企業診断士が相手企業との信頼関係を醸成し、個別の顧問契約に結びつける。

○小規模企業支援の仕組み

 ・荒川区の仕組み

 荒川区では、荒川区(産業経済部)の要請に基づき、「荒川経営協会」から企業相談員、創業相談員、にぎわいコ-ディネ-タなどの中小企業診断士を派遣している。各相談員が荒川区と常に連携を取り、区内各企業にそれぞれの実情に見合った各種補助金を紹介して、申請書作成から補助事業実施の支援を行った。

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 ・板橋区の仕組み

 板橋区では板橋区産業振興公社と「板診会」が連携して補助金申請に特化した相談窓口を設置して中小企業診断士を配置した。更に必要に応じて個別企業を訪問して申請書類作成支援から採択・承認後の書類整備・報告の社内体制作りまでの支援を行った。

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ものづくり試作開発補助金支援事例

 板橋区、荒川区の小規模企業への補助金申請支援事例を以下のとおり紹介する。

A社 板金・溶接加工企業 事例  工作機械のゴミ保護カバ-を製造しているが、取引先からの要望に応えるには生産性の向上が急務になり、ボトルネック工程の解消、受注元との生産管理に関わる情報を共有するシステムの開発などが必要になっていた。そこで、ものづくり試作開発補助金を紹介して、補助金申請、採択後の交付申請、採択・承認後の書類の整備などを支援した。

B社 エボナイト製造企業の競争力強化支援事例  長年ゴム・エボナイト製品を製造・販売しているが、他樹脂材料の進出で価格競争力が低下して減収傾向にある。更に、客先からエボナイト製品に含まれる有害化学物質の非含有化要求があり、その解決が課題であった。そこで、エボナイト製造における歩留り改善などによる価格競争力の強化、有害化学物質の非含有エボナイト製品開発のためにロール、プレス、試験機などを設計・開発・導入してコスト低減並びに有害物質の非含有化を実現する事業計画を立案し、これに基づき補助金申請書を作成、採択・承認後の補助事業の実施支援を行った。

C社 プライダル製品の製造法の改善支援事例  結婚指輪製造・販売業者であるが、金・プラチナ価格の高騰により、販売価格を維持するためには地金使用量の減少が不可欠になった。そこで、地金を溶解する工程で高硬度を保ちながら指輪の厚みを薄くする鍛造法を開発して、地金組織の高密度化を実現して価格競争力を高め、売上を伸ばす事業計画の立案並びに補助金申請書の作成支援を行った。

D社 位牌製造業の生産性向上支援事例  数年前より位牌事業を開始して位牌の字彫製造・販売を展開している企業であるが、 引合い件数の増加および顧客からのさまざまな要求に対し、現有字彫機では対応ができず、受注機会を逸失するケースが増加している。そのため新たな字彫機を開発・導入して、多様な顧客の要求に対応可能とした。また、現行の生産管理・販売管理システムの機能が不十分のため、新たなシステムを開発・導入により、生産性向上を実現するための支援を行った。

E社 フィギュア製造に3Dプリンターを導入し競争力を強化する事例

   フィギュアとはホビー・おもちゃ業界における商品である。古くは土偶から始まる人類最古の歴史を持つ美術のひとつであり、形や使用目的を変えて現在に至っている。

   フィギュア原型の製造過程において、3Dプリンター・スキャナー設備の導入およびソフト技術工法の開発・評価を行い、デジタル技術とアナログ技術の融合によって一度製作されたオリジナル製品をリプロダクトする際のQ・C・D向上を実現する。

    3Dプリンターなどの導入にあたり補助金の申請・採択後の事業実施の支援を行い、リプロダクトにおける生産手法の改善、同一原型から多種製品を開発・生産のスピードアップにより、TVアニメなど業界でのコンテンツの激しい変化に対応できる競争力の強化を実現した。

2.城北地域の中小企業支援団体の概要  城北地域には、すでに述べた「荒川経営協会」、「板診会」に加え、台東区中小企業診断士会、NPO法人東京都北区中小企業経営診断協会、(一社)ねりま中小企業経営支援センター(旧、練馬区中小企業診断士会)があり、それぞれ小規模企業の支援を行っている。

(1)(一社)板橋中小企業診断士協会 (「板診会」)

 昭和60年に板橋区中小企業診断士会として創立。昨年、一般社団法人に改組した。板橋区在住の中小企業診断士が中心となり、所属会員は130名。板橋区産業経済部・板橋産業振興公社と長年にわたり良好な関係を築いており、経営相談・創業相談・BCP計画策定、商店街支援などを行っている。特徴としては区の出前相談制度(専門家派遣事業)を活用して個別企業に対するきめ細かい支援と経営革新アドバンスセミナーの開催がある。

 ・出前相談制度

 企業から経営課題に関わる相談の要望に対して迅速に対応できる仕組みとして、「板診会」が板橋区産業経済部・板橋区産業振興公社に提案して実現した企業支援の仕組みである。  依頼企業が板橋区産業振興公社宛相談要請を提出。これに対して、「板診会」が会員の中から適任者を選択し、実際に要請先を訪問して支援にあたるものである。

 ・経営革新アドバンスセミナーの開催

 平成16年に若手経営者交流会として発足した経営者交流会が発展し、平成25年度は「板診会」、「荒川区経営協会」が中心となり、荒川区、板橋区産業振興公社、東商板橋支部・同荒川支部の後援により合計5回のセミナーを開催している。  板橋区および荒川区内のものづくり分野での会社経営者による経営革新の取り組み、大学研究員による3次元プリンターを活用したモノづくり革命など充実したプログラムであり、参加者より自社の事業運営に大変参考になると好評である。

(2)荒川区中小企業経営協会(「荒川経営協会」)

 昭和35年に創立。会員は中小企業診断士、弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士の資格保有者から構成され、荒川区産業経済部へ企業相談員、創業相談員、融資相談員、にぎわいコーディネータを派遣している。平成25年度は荒川区産業経済部から区内製造業に対する実態調査を受託して報告書を提出し高い評価を得ている。

 ・製造業調査と巡回相談

 平成25年に3ヶ月に亘り「荒川経営協会」所属の診断士を中心として60 人の診断士が参加して区内の製造業調査を実施した。区内製造業約2,000社に対する訪問調査を行い、報告書を作成した。

(3)(一社)東京都中小企業診断士協会 城北支部ビジネス創造研究会

 本研究会は主に城北地域の中小企業の経営課題解決のための支援の新たな仕組みづくりを企画し、各区の行政機関などに提案。各区の診断士会と一体になり支援を実施している。

 また、各区の行政機関、東商各支部、産業連合会、商店街連合会などからの要望に対して個別に対応を行っている。

3.他地域への今後の展開

 当研究会および「板診会」「荒川経営協会」による地元企業の支援実績は、地元のみならず、このようなスキームの存在しない他地域でも注目を集めており、問合せの頻度も増加している。今後、地域連携ネットワークとの連携により、板橋区・荒川区に加え北区、墨田区など他地域の金融機関から企業支援の要請もあり、本研究会の対象として支援を行うこととする。

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