TOP >> コラム >>  特集 >>  創業2年目のイタリアンバル支援の事例
コラム
最新の記事
月別の記事
2017.11.29
創業2年目のイタリアンバル支援の事例

店舗ビジネス研究会

1.はじめに
 飲食業、サービス業、小売業は「立地産業」ともいわれるように、業種・業態に応じた店舗立地が重要で、経営に与える影響は大きい。したがって、新規開業において売上を構築、収益を確保するためには、まずはいかに望ましい立地、店舗を選択するかという立地選定および店舗開発にかかわる経営課題がある。そして、ひとたびそれらを選択したあとは、それらを所与の条件として、いかに経営していくかという店舗経営の問題となってくる。
 本会は、このような店舗ビジネスにおける経営課題を解決するために、会員相互の研鑽と情報交換を通じて、中小企業診断士としての役割を認識し、スキルを磨き、活動・実践して情報やノウハウを蓄積し、中小企業の革新と活性化および持続的発展に寄与することを目的とする。
 本稿では本会有志によって支援した事例であるイタリアンバル支援の事例を取りあげて、その支援にあたっての考え方を提示しつつ、概略を紹介したい。

2.支援のきっかけと支援対象の概要
 当店は当会のメンバーが創業に関わった関係から、店舗がスタートした時点でまず経営者が課題と考えていることについて整理してほしいという依頼があり、昨年(2016年)支援を行った。その際のテーマは①競合調査、②IT活用、③従業員教育/マニュアル見直しであった。そして、本年(2017年)は開業して1年経過しての問題点と課題の抽出およびその解決への提案がテーマであった。支援先の店舗概要については以下のとおりである。

◎店舗概要
 (1)店舗コンセプト
 仕事を頑張るために、みんなが集い、明るく楽しく気軽に入れてお酒だけでなく食事も楽しめるイタリアンバルスタイルのお店
 (2)開業
   2016年6月末
 (3)こだわりメニュー
  ①安全、安心で新鮮な食材にこだわりと野菜ソムリエ考案によるバラエティーに富んだ新鮮野菜メニューを提供
  ②北海道の小麦を使用した自家製のパンを提供
  ③石窯を備え、ピッツァやオーブン料理を提供
 (4)営業概要
  ①営業時間
    昼間  平日  7:30~17:00
    夜間  平日と土曜日  17:00~22:00(予約日のみ営業)
  ②席数:35席
  ③営業内容
    昼間  ベーカリーカフェ、パンの販売
    夜間  イタリアンバル 
 (5)経営概況
    月商  約130万円
    借入金 2,554万円
 (6)商圏  JR神田駅西口近辺

 飲食業の事業において、通常言われるものにFLR比率というものがある。FはFoodの頭文字で材料費である。LはLaborで人件費である。RはRentで店舗の賃借料である。それぞれ、売上高に対して、Fは30%程度、Lは30%弱程度、Rは10%程度に抑えられていることが望ましいとされている。
 図表1に示すように、創業計画時には材料費(F)、人件費(L)、家賃(R)をそれぞれ望ましい比率に抑えて計画されていても、実際に創業してみると現実①のような事態に陥ることがよくある。当店はまさに現実①の状況に陥っており、赤字経営となっていた。

201712_3_1.jpg

3.現状分析と問題点、課題の抽出
 まず、われわれは現状を把握するためにSWOT分析を行った。その概要が図表2である。われわれは問題点として、店舗がベーカリーカフェとイタリアンバルという二つの性格を持っており、顧客にとってコンセプトがわかりにくいという点が最大の問題点であると認識した。そのため、顧客に店舗のコンセプトをいかに周知させるかということを重点的に提案することとした。しかしながら、現状の赤字対策も緊急を要するため、短期的に売上が上がる方策も併せて提案を行った。

201712_4_2.jpg

4.提案内容
(1)プロモーションの提案
 店舗の経営を蛇口とタンクになぞらえ、顧客を水に例えると、新規の顧客の流入と、顧客の退出は図表3に模式的に表される。蛇口の水は新規顧客、穴から流れる水は退出顧客、たまった水は常連顧客である。新規の顧客を増やしても、退出する顧客が多くなると、常連顧客の数を示す水位は下がってくる。流入する水(新規顧客)を増やし、流れ出る水(退出顧客)を減らし、そのたまった水位(常連顧客の数)を上げるための活動を行う必要があるわけである。

201712_5_3.jpg

 そのうえで、われわれは当店においては、図表4の店舗活性化の概念図における「認知拡大」の段階でまだ努力できるところがあるのではないかととらえ、次のような提案を行った。

201712_5_4.jpg

  ・周りの店よりももっと目立つような工夫をする(リアルの世界)
  ・ネットでの露出を増やすべく対策を行う(ネットの世界)
  ・足腰を強くするための広告・宣伝の実施(具体的には潜在顧客にターゲットを絞ったチラシ配布や店舗案内の配布などの営業活動)
  ・リピーターへのリマインド作戦
(2)売上アップへの取り組み
 図表5は新規に出店して、時間の経過とともに店舗の売上がどのように推移するかを模式的に示したものである。店舗を開店してからの売上高の推移はこのようなカーブを描くことが多い。新規に店舗を出すと、まず新しい店舗ができたということで認知が進み、通常、売上は上がっていく。しかしながらお試しの顧客が一巡してしまうと、コアな顧客のウェイトが高まってくるとともに徐々に売上は落ちてくる。そのまま手をこまぬくと、低い売上レベルで店舗経営を強いられることになる(Aのカーブ)。そのため、店舗としては新たな施策(第1回施策)を打ち出して店舗を活性化する必要がある。それを二度(第2回施策)、三度と繰り返すことにより、コアな常連客を増加させていくとともに、売上が底上げされ、店舗経営が安定してくるという経路をたどる。

201712_6_5.jpg

 われわれはこのカーブを意識して、飲食業として最も売上の上がる年末年始に向かって、次のような施策を講ずることを提案した。
  ・夜の売上アップのためのメニュー開発
  ・顧客や従業員を巻き込んだイベントの実施
  ・オペレーション負荷のかからない、日中の顧客増対策

(3)メリハリのある施策の実施
 いろいろな施策を提案しても、オーナー1人で取り組むことになるため、次のように取捨選択したうえで優先順位づけして実施することを提案した。
  ・売上アップにつながる即効性のある施策から行うこと
  ・何を、いつまでに、どこまでやるかを考えて取り組むこと
  ・計画的に実施すること
 施策を実施するうえで、次のようなフォームを一例として提示を行った。

201712_7_6.jpg

5.提案を受けてのオーナーの反応
 われわれの提案を受けてオーナーは次のように実行することとした。
  ・材料費を中心として、コストは2割下げるようにする
  ・イタリアンバルとしての認知性を高めることにさっそく取り組む
  ・ターゲットを絞ってチラシの配布を行う
  ・顧客に対してイタリアンバル風の忘年会イベントを提案することとする
  ・試食会など、顧客や従業員を巻き込んだイベントを検討する
などである。

6.終わりに
 今回の支援では、オーナー自身が店舗の運営で手一杯であったうえ、売上が何よりも最優先であるから、なかなか打ち合わせのタイミングが取れないという状態になった。そのため、さまざまなデータの収集、調査、確認が進まなかった点が最も苦労した点である。今後は提案のうち何が実行され、何が実行されなかったか。そのために店舗はどうなったかをレビューし、さらなる店舗経営の改善に結びつけていければと考えている。

TOP