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2018.01.25
一歩踏み込んだ研究会によるR社支援(Webサイト改善)

三多摩支部 最新IT活用研究会 三村 雅彦


1.当研究会の概要
 当研究会は2003年に現在の三多摩支部に設立された。活動目的には「中小企業が業務の効率化と新たな事業展開を図っていくためには、中小企業の情報化推進(IT化とIT利活用)が必要不可欠となっています。しかしながら、中小企業では人材不足などの理由で情報化推進が十分できていない企業が多くあります。このため、中小企業の情報化推進を支援するためのスキルの向上を図ることを目的とします」を掲げ、今年で15年目を迎えた。
 参考までに研究会設立時の2003年と2016年のIT環境を比較してみると<資料1>のとおり、ITは日進月歩の状況にあることがわかる。しかし当研究会の肌感覚としては、現在でも「中小企業では人材不足などの理由で情報化推進が十分できていない企業が多くあります」という点は解消されていない。なお、2016年版の中小企業白書にも「...IT投資が重要であると考えているものの、現在IT投資を行っていない企業に対して、IT投資を行わない理由を尋ねたものである。これを見ると、ITを導入できる人材がいないと回答した企業が最も多くなっており...」との記載がある(<資料2>を参照)。ここからも、人材不足が中小企業の情報化を困難にしている大きな原因であることがうかがえる。201802_1_1.jpg

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 当研究会では2003年からWebサイト(以下、サイトと記載)の診断・改善を中心に、およそ20社に対してコンサルティング活動を行ってきたが、クライアントからは「よい提案だけれど、当社には手を動かせる人材がいない」という声が多かった(<資料3>参照)。この活動の中で、いわゆる「企業内診断士」の集まりである当研究会が、クライアントのシステムの実装部分までどうサポートするかが課題として見えてきた。この論文では実装部分まで研究会として支援した「一歩踏み込んだ」点を中心に紹介したい。

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2.クライアントからの要望
(1)クライアントの概要
 2014年1月に三多摩支部経由で化粧品を製造販売しているR社から、サイトの改善について提案してほしいとの要望をいただいた。R社の概要は<資料4>のとおり。

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(2)1回目のクライアントとの打ち合わせ
 まず、R社へのヒアリング実施に向け、確認したい事項について論議した。限られた時間内に効率的かつ確実に必要事項を聞き出すための工夫として、当研究会では事前準備(化粧品業界の調査、R社サイトの評価、同業他社のサイト調査など)を進めつつ、<資料5>のヒアリングシートを作成した。

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 4月にクライアントを訪問し、社長と専務に対してヒアリングを実施した。ヒアリングシートに沿ってポイントを絞って話を進めたいが、なにせ初対面、第一印象は大切である。クライアントの反応をひとつひとつ確認しつつ、打ち合わせを進めることを意識した。打ち合せ室には、主力の基礎化粧品が展示されていたので、「主力製品のアピールポイントは何ですか」と製品の話から会話を始めた。これが功を奏して話が弾んでいく。一般的に、経営者はアイデアマンなので、自社のやりたいことをうかがうと発散思考となり話は尽きない。

 たくさんの話を聞けたことは提案する側にとっては収穫だが、クライアントの要望は多様で、必ずしも話に一貫性があるとは限らない。当然ながら経営資源には限りがあるので、やりたいことを全て実現することもできない。この点は経営者も十分承知しているものの、気持ちよく話をしている経営者に対し、どのタイミングで話題を変えるかが難しい。今回は、展示してある主力製品に話を戻しつつ、ヒアリング後半はR社の現状を冷静に確認する時間とした。R社では振興公社などが主催する展示会に出展したり、皮膚科専門医と提携したりなど、売り上げ拡大に向けた施策を地道に実行しているものの、なかなか成果として現れていないことがわかった。将来を見つめつつ現状の経営課題や自社の強みなどを十分に話し合った結果、自社のブランド力を高めることをサイト改善の主目的とし、ネット経由での販売拡大を副次的な目的とすることで合意した。

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(3)2回目のクライアントとの打ち合わせ
 1回目のヒアリングが発散フェーズであるとすれば、2回目のヒアリングは収束フェーズである。研究会として考えうる提案の中から、先方の体力や事情を考慮して、提案内容の絞り込みとその妥当性をクライアントに確認するため、2回目の打ち合わせを行うことにした。

 研究会での経験則だが、一般的に自社のサイトを見ながら「ここを改善してはどうか」と提案しても、自分が作成した文書を他人が指摘しても簡単には修正しないように、苦労して製作した自社のサイトを簡単に修正する気持ちになってもらえない。その気にさせるには、競合他社のサイト(それも完成度の高いサイト)をクライアントに見せるのが効果的である。これによって、「他社では、ここまでサイトを工夫しているのか。それなら当社もこのように修正したい!」という具体的な要望を引き出すことができる。そこで、R社と競合他社数社のサイトを比較した<資料7>を作成し、これに基づいてR社のサイトを具体的にどう改善するか議論した。専務いわく「同業者の視点でみると、原料、設備、化粧品の使い方などごくあたり前のことでも、きれいな画像付でサイトに掲載した方がよいとわかった」との感想だった。

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 このとき困ったことが発生した。競合他社のサイトを確認していると、「新たに外国人観光客向けに旅行代理店・三多摩地域の他業種と連携して商品を販売するアイデアがある」、「自分専用の石鹸、化粧品を欲しがっているお客様もいるのでこのようなお客様もターゲットにできるのではないかと考えている」、「自社内の接客設備を活用して、口コミで自社の商品を浸透させていきたい」など専務の中でアイデアが数珠繋ぎに浮かんできて、予想外に話が拡散したのだ。研究会としては、2回目のヒアリングで提案する内容を絞り込む意図だったので、ここにきて新しい話が出ると、前提条件が覆ってしまいかねない。
 そこで、議論の収束を図るべく、1回目のヒアリング結果を振り返り、当初のゴールイメージを再確認することにした。その結果、化粧品の成分抽出を他社から供給を受けずに自社で行っている点をアピールするサイトに改めて、自社ブランド製品のサイトでの拡販を図るという方向性が固まった。

3.成果と今後の課題
(1)提案書のとりまとめ
 研究会にはシステムエンジニアもいれば、ユーザーとしてシステムベンダー向けにユーザー部門の要件をとりまとめる人材、システムの運用を行っている人材など多様なスキルを持ったメンバーが在籍している。今回はクライアントへヒアリングしたメンバーが、クライアントの要望を研究会の定例会で他のメンバーに詳しく説明し、各メンバーの得意分野を活かした提案ができるよう役割を分担した。これによって、サイトに掲載するコンテンツやサイトの構成をユーザー(サイト訪問者)視点で整理しつつ、通販機能の具体的な改善についても提案に盛り込んだ。通販機能については、R社が投資可能な金額内で、商品特性や既存販売ルートとの競合など考慮し、「まずはやりたいことへの一歩を踏み出す」ために最小限の機能で実装することとした。

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(2)サイトの改善
 改善案が固まっても、改善を実装できる人材がいなければ絵に描いた餅と同じである。とはいえ、診断士はクライアントの要望をまとめ、改善の方向性を提示することまでがタスクで、実装についてはクライアント側で進めるという考えもある。
 10月に実施した最終報告会は好評で、R社からは早々に実装したいとの発言があったものの、社内に人材がいないと相談を受けた。これまで研究会では、実装までは請け負わない方針を採っていたが、クライアントの熱意を強く感じるとともに、実装部分までどうサポートするかという課題を乗り越えるために、今回は実装のサポートまで提案することを決定した。その方法を検討し、案出しした諸策の中から、研究会の古参メンバーの知人で、そのメンバーが技術レベルと実績に太鼓判を押しているK氏をR社に紹介することにした。K氏によるサイト改善をスムーズに行うため、研究会の提案内容を事前にK氏に伝え、十分に連携したうえで、11月にK氏と研究会メンバーでR社を訪問し、R社からの了解を得た。
 サイトの見栄えは画像に大きく左右される。K氏は写真の腕もプロ並みなので、訪問日に撮影機材を準備し、サイト用の撮影を実施した。これにより、別途写真撮影する機会を設ける必要がなくなり、画像作成のコストを削減することができた。
 後日、R社のサイトがリニューアルされた(<資料9>参照)。

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(3)成果
 <資料10>のとおりサイト経由での問い合わせ件数やPV(※)をみれば、「自社ブランド製品のサイトでの拡販」に十分な成果があったといえる(なお、サイト経由での売上高は非公表である)。

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(4)今後の課題
 R社の課題としては、サイトからの受注状況、受注内容をにらみながら、サイトでの販売製品の見直し・拡大、受注処理の自動処理化などである。
 当研究会の課題としては、①実装できる人材の確保、②資金面の提案力(各種施策面などを含め、三多摩支部と連携し提案した内容をクライアントが実行に移せるように)、さらには前出の①と②をパッケージで提案できるスキルの開発が挙げられる。この点については、今回の対応を検証しつつ、今後整備を図っていきたい。

※最新IT活用研究会メンバー(本論文に関わったメンバーのみ記載)
 三村雅彦(代表)、吉沢正男、辻本一、硯靖洋、大西伸弘、小川博幹、高木望、茅野耕治、西田吉希、宮下博之

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