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2018.02.28
ハンズオン支援型研究会の活動事例 新たな研究会モデル~ある企業様への密着支援から~

ハンズオン支援型研究会の活動事例
新たな研究会モデル~ある企業様への密着支援から~


城西支部 コンサルティング実務研究会 浅利 栄文
E:yuinao@w4.dion.ne.jp


1.はじめに
 当研究会は、設立後約40年に渡る長い歴史を持ち、実務的なコンサルティング活動を主な目的として研究活動を行っている。具体的には、実務で多彩な企業を支援することで会員の診断/支援能力の向上および各種ノウハウの蓄積を図り、業種業態を限定することなく幅広くコンサルティング能力を高める活動である。そのため実際に企業診断をする機会が多く、自己研鑽を積みながら実務ポイントが取得できる。一方で、毎年1社の支援企業に対し年間を通じて診断から報告会の実施サイクルの繰り返しで、研究会として提案した各種施策を支援企業の現場に踏み込んで継続してフォローアップすることが長い間の課題であった。
 最近では「密着支援」「3現主義」を旗印に当研究会が新たに支援している企業の中で、数社において、より深く長く密着して支援し、秘密保持契約を締結し有償事業に移行している成功事例が現れている。中小企業診断士の研究会活動のフィールドから脱皮して、まさしく実務的で密着した継続支援で企業経営に貢献し、その見返りとしての収益事業を加えた研究会であり、「稼げる診断士」を養成し輩出している。
 当研究会の全体的な活動内容と、4年前よりハンズオンで経営支援をしているA社に焦点を当てここに紹介する。

2.現在の研究会活動概要
1)継続支援対象先および主な取組内容

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2)継続支援対象先の特徴
 当研究会の経営支援対象企業様は、中小企業の中でも比較的経営規模の大きな先を対象とし、研究会全会員の多彩な得意分野、専門分野をフル活用し貢献できるような環境を構築している。対象企業とは秘密保持契約の締結を徹底し、経営者と会員との密接な接点や関係を増やし信頼関係を築き、あらゆる情報を開示いただけるような風土を醸成している。

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3.活動の背景、経緯

 A社とは、4年前から当研究会としての研究支援対象先として1年間の経営支援を実施することで合意した。当初は、社長ヒアリングおよび決算書等開示資料から経営診断を行い、報告会を企画するなど、中小企業診断士として研鑽し実務ポイントの取得の場であった。 
 当研究会では、支援企業に即した実務的で具体的な提言と提案を行うことを研究会の場で議論しているが、その提言内容に社長の高い評価をいただき、次年度も引き続きご支援する機会を頂戴した。その後幹部社員を対象としたヒアリングやセミナー、全社員を対象とした従業員意識調査(当研究会開発のオリジナルシート)を実施し、より一人ひとりの社員と密接な関係作りの中で支援を図ることに成功し、当研究会の存在価値がA社全社員の間に浸透した。また当研究会が提言した中で、「社員間コミュニケーションの活性化」の課題を解決するために、チームワークを組織内に醸成するための「チームビルディング研修」を全社員対象に、北海道や各支店から東京の品川に場所を替え、1月から3月にかけ3日程に分けて一泊二日で実施した。その後も社員教育の一環として1、2年目の社員を対象に北海道本社で「若手研修」を実施した。いずれも有償化支援(研修提案モデルおよび研修ツールの活用)に移行している。
 社長や役員をはじめ社員一人ひとりと密着支援してきた当研究会は、A社から引き続き継続支援の依頼を受けている。これは当研究会が信頼されると同時に期待され、なくてはならない存在となっている証でもある。
 
4.A社への取組み概要
1)昨年度までの主な取組
 ①幹部社員対象の経営診断報告会の実施
 社長/幹部ヒアリング、決算書等の資料分析等を実施し、定期的に経営診断報告会を企画実施している。社長および各支店幹部は東京に集結し、当研究会との熱い議論のやり取りが行われる。
(場所:港区商工会館)

 ②「第48期経営計画発表会」へのオブザーバー参加
 毎年期初(4月上旬)に社長の新年度会社方針と幹部社員による各支店の営業戦略(SWOT分析戦略立案セミナーツールを活用)の発表が行われる。
 参加者は、全社員、メインバンク様(2社)、お取引様、当研究会から5名が一泊二日でご招待いただいている。
(会場:京王プラザ札幌)

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 ③全社員対象「従業員意識調査」の実施。問題・課題の把握
 当研究会のオリジナル従業員意識調査シートを全社員に協力いただき、100%回収した。集計結果から従業員が抱える問題や会社への提案/要望事項を収集整理。社長へ「意識調査結果報告会」を実施した。

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 ④幹部社員対象「グループワーク研修」の実施
 幹部社員が従業員意識調査結果を共有し、グループワークを実施。ブレーンストーミング等を行い、問題・課題の把握から改善提案までを議論し優先課題を抽出した。
(場所:港区商工会館)

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 ⑤拠点長対象の「SWOT分析戦略立案セミナー」の実施
 支店長・所長が自部門・エリアの特色・特性に応じてSWOT分析から戦略立案し使いこなせるまでセミナーを数回・各拠点にて実施。
 各拠点長が年度はじめに戦略を立案し、前掲載の「経営計画発表会」で披露している。
(場所:長野オリンピックセンターおよび札幌篠路コミュニティーセンター)

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2)今年度の主な取組

 ①「チームビルディング研修」(25名/回を3回実施)を全社員対象に実施
 組織/チーム力を醸成する社長の意向を受けコミュニケーション系研修を企画開催した。社員が自ら考え提案する場を創出した。
(場所:品川の研修センタ-)

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 ②「若手研修」を1、2年目社員対象に実施
 「お客様第一主義」を掲げるA社においてそれを実現できる若手を育成する。主にCSに関するセミナー/自職場での課題発表/事例を背景としたロールプレーングを実施し、チャレンジ目標を設定した。
 (会場:A社札幌本社)

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 ③「第49期経営計画発表会」にオブザーバー参加

 今年度も京王プラザ札幌にて4月8日、9日の経営計画発表会に当研究会より4名を招待いただいた。

(場所:京王プラザ札幌)

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5.A社への提案手法

1)有償事業獲得スキーム
 A社においては、下図のプロセスを踏んで継続的な経営支援に至っている。特に全社員を対象に従業員意識調査を実施し、経営診断報告会での仮説を立証し、この調査結果の分析内容を題材にした幹部社員グループワーク研修を実施し当社の課題を炙り出した。
 外部コンサルとしての客観的な提案だけにとどまらず、社員や幹部の考えを巻き込み提案材料とした「ボトムアップ型の主観的な提案」がA社経営層に響いたと考えられる。

【継続的有償事業獲得スキーム】

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2)開発ツール
 

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①当研究会オリジナル従業員意識調査シート(オリジナルシートおよびその解析モデル)

 人・物・金・情報等、経営資源別にアンケート項目を作成し、特に経営診断レベルで仮説として挙げた問題・課題に焦点を当て、オリジナル標準シートをA社用にアレンジし、潜在するリスク情報を顕在化した。さらに解析段階で項目別に定量化し重要事項を炙り出し、解決するべき事項の優先順位を明確にした。一方、オリジナル標準シートは、現在支援している他の企業へも活用できるよう汎用性が高くアレンジできる。


 ②従業員研修提案モデル
 当研究会の人的資源から研修可能な項目(コミュニケーション系および知識系)を網羅した俯瞰図を作成し、経営診断および意識調査資料等によりA社現状とあるべき理想像を示し、そのギャップを埋めるべく研修項目を提案するモデルである。

 ③各種研修ツール
 現在実施済みの研修カリキュラムは当研究会のオリジナル作品であり、貴重な収益事業資源として蓄積している。現在支援している他の企業へも展開可能なツールである。

6.主な活動成果

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7.今後の予定
 まず、すでに実施してきた「チームビルディング研修」および「若手研修」で各社員が職場で実施するチャレンジ目標を設定している。その実施フォローと定着に向けた支援を行う。
 次に、今年12月から来年の3月にかけて全社員対象のモチベーションマネジメントコーチング研修もしくは中堅社員対象の階層別研修を実施する予定である。さらに来期以降は、A社の重要課題である人事評価制度構築に向けその診断と再設計支援に向けた提案を行う予定である。

8.おわりに
 コンサルティング実務研究会では、よりコンサルの実務としてステージアップした研究会を目指し、今回報告のA社をはじめとして、3年目の支援となる階段製造業C社や昨年から支援を開始した鋳物製造業B社を加えた3社の同時支援体制となっている。会員のノウハウや経験の貴重な蓄積の場として、実際に現場での企業支援に多くの時間を携わり、経営者から高い評価をいただけるようになった。またその評価の証として、A社から継続的な社員研修とB社から補助金等申請業務等の支援依頼も入り、有償支援へと定着している。有償になってより我々の緊張感や士気も高まり、さらに会員全員で日々真剣に取り組んでいる次第である。
 A社は来年創立50周年の記念の年を迎えようとしている。さらなる飛躍に貢献するため、当研究会はA社を中心とした支援先とともに歩み続ける。

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