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2018.06.26
葬儀社の実態と課題、これからの支援

終活ビジネス研究会 
濱田 良祐

1.はじめに
 葬祭業界といえば、どのような印象をお持ちだろうか。高齢化社会が進む中、葬儀の需要が増加し、「正直なところ儲かっている」という印象をお持ちのかたもいるのではないだろうか。葬祭業界は本当に儲かる産業なのか、今後の展望や課題はいかなるものなのか。葬祭業界の現状と葬儀社の課題を確認し、診断士がどのようにかかわっていくことが重要なのかについて考察する。なお、当研究会が行った提案などご紹介するが、葬儀に関する慣習は地域によってかなり違いがあること、我々がご紹介するのは、主に関東近郊の葬儀社の事例であることをご承知おきいただきたい。
 
2.葬祭業界の現状
 日本の人口構成はどうなっているか確認する(下図)。

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 高齢化が叫ばれて久しいが、65歳以上の人口は2040年ごろまで増加し、その後も全人口の内、高い割合を維持していくと推計されている。また、2040年頃までは、死亡者数が増加するという予測であり、単純な葬儀の機会という意味では、確実に増加すると考えられる。葬儀社が活躍する場面は、過去と比較しても多くなっているといえる。
 では、「葬儀社は儲かっている」といえるのだろうか。実際の葬儀件数と葬儀社の数をまとめたものが次の表である。

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 2000年と2017年を比較すると、売上高が約2.3倍、取扱件数が約2.4倍の増加を示しているのに対し、事業所数は約4.3倍の増加を示している。高齢化社会の中で、葬儀の件数は増加しているが、それ以上に葬儀社の数が増えており、1事業者あたりの売上高でみると、2000年よりも減少している。また、家族葬に代表されるように葬儀規模の縮小も葬儀社にとって重大な課題である。取扱件数の伸びよりも売上高の伸びが小さいことからも、より安価で小さな葬儀が普及しつつあるといえる。葬儀業界は、現状維持の経営施策を続けていれば何もしなくても収益が増加する、というわけではない状況にある。
 葬儀社が増加した要因についても考察する。葬儀社は「電話一つあれば開業できる」と例えられるほど、開業が容易な業種といえる。実際に葬儀を行う場合には、葬儀を行う場所、宗教儀式のための祭壇など多様な設備が必要となるが、場所は区民館などの公共施設を使用、レンタルの器材を利用するなどして、自らが建物や設備を必ずしも抱える必要がない。高齢化社会に伴う需要増加予測と、開業の容易さから事業所が大幅に増加したと考えられる。
201807_5_1.jpg インターネットを介した新たな葬儀仲介サービスも増加している。インターネット葬儀仲介サービスは、自社では葬儀を行わず、地域ごとに提携している葬儀社を紹介することで、葬儀費用から一定の紹介手数料を得る業態である。インターネット葬儀仲介サービスの特徴として、追加料金が発生しないプランを用意している点が挙げられる。葬儀は、料金形態が複雑で、消費者にとっては不明瞭に映りがちである中、インターネット葬儀仲介サービスが提供する葬儀プランは、一部追加料金が発生するものもあるが、基本的には固定料金であるという点が大きなアドバンテージとなっている。また、実際の葬儀は提携している各地域の葬儀社が行うため、地域を絞っているわけではなく全国に同じ葬儀を提供していることも、インターネット葬儀仲介サービスの大きな特徴である。従来あれば、葬儀社はサービスを提供できるエリアが限定されており、消費者も自身の生活圏を中心としたエリアにある葬儀社を選択する必要があった。インターネット葬儀仲介サービスであれば、固定料金となっているプランを選択し、葬儀を申し込めば、葬儀社を探す必要なく葬儀を行うことができる。地域での営業力が乏しい葬儀社にとっては、仲介によって葬儀を行い、売上げを得ることができるという利点もあるが、インターネット葬儀仲介サービスを通した葬儀プランは固定料金であることが多いため、通常であれば追加料金が必要なサービスを無料で提供せざるを得ないケースがあるなど、葬儀社の収益を圧迫するという側面もある。葬儀社にとっては、インターネット葬儀仲介サービスに負けない営業力が必要ともいえる。
 このように、高齢化社会の中で葬儀の需要は増えるものの、個々の葬儀社にとってみると競合や新たな葬儀サービスの出現によって、決して明るい展望が開けているとは言えない状況である。葬儀社が生き残るためにどういった活動が必要か、当研究会で実際に行った経営支援の例も交えながら考察する。

3.葬儀社のマーケティングについての考察
 多くの業界では、良い商品やサービスを開発することで、その商品への関心が高まり、流行が発生、販売数が増加するといった形で需要を喚起することができる。しかし、葬儀に関しては、急激に日本全体の葬儀件数を増加させるといったことは不可能である。そもそも葬儀社の商圏は狭く、基本的には地域密着型の企業であるため、葬儀社にとっては、展開するエリアの中での葬儀件数をライバルと奪いあうシェア争いに主眼を置く必要がある。
 消費者にとって葬儀社に葬儀を依頼する場面というのは、突然やってくることが多い。病院で亡くなった場合などは、病院から葬儀社を紹介されることもあるが、葬儀社が選ばれるためには、消費者が葬儀社を選択する際に、その選択肢の中に入っている必要がある。葬儀社としては、認知度を高め、消費者の選択肢の中に入る努力が必要となる。そのための施策を以下に紹介する。
 ① 会員制度
 自社の会員制度を作り、潜在顧客の囲い込みを行う。入会金や年会費を設定することもあるが、無料としている葬儀社も存在する。会員には、◦会員価格での葬儀や、◦会員限定でのイベントなどのメリットがある。一方葬儀社側としては、◦会員に対して定期的に情報発信できることや、◦ある程度将来的な葬儀件数の予測ができる、といったメリットがあるが、もっとも大きなメリットは、事前相談や見積もりを行うことで、生前から葬儀の準備を行うことができる点である。会員自身が葬儀社と葬儀の内容や見積もりを行うことで、実際の葬儀の場では喪主となる家族に対して、会員自身が葬儀についての意思表示をすることになる。
201807_6_1.jpg ② イベントの開催
 イベントの開催も有効である。葬儀に関連するテーマでセミナーを行うことや葬儀とは全く関係なくいわゆる楽しい催しを行うこともある。一例を右図に示す。
 遺影撮影会や人形供養祭など葬儀社ならではのものもあれば、アレンジフラワー教室といったカルチャースクールのようなもの、家族で楽しめるような縁日といったイベントなどさまざまである。
 セミナーを開催することも多い。葬儀や終活といった関係性の高いテーマから、LINE講習会といった葬儀とは違ったテーマで行うことも効果的である。
 いずれにしても、まずは葬儀社に来てもらい、地域での認知度を向上させることが最も大きな目的となる。そのうえで、会員への登録や事前相談の実施など消費者とかかわる場面を増加させるためにイベントを行う。
 ③ ポスティングチラシ、新聞折り込みチラシ
 地域へのPRのため、ポスティングチラシや新聞折り込みチラシを活用することが有効である。用いられることの多いコンテンツとして、◦葬儀プランや価格、◦イベントの告知、が挙げられる。
 葬儀プランや価格についてのチラシでは、他社との比較を行うなど、価格やプラン内容で優位性を示すものが多いが、消費者にとっては、そのプラン内容が複雑であることも多いため、できるだけシンプルにわかりやすい内容とすることが重要である。「家族葬専門」や「追加料金なし」といったプランを掲げている葬儀社も多くなっている。しかし、価格やプランの優位性などで強みを示そうとしても、上述のインターネット葬儀仲介サービスの台頭もあり、なかなか効果的なPRを行うことが難しくなっているのも現状である。地域密着型の産業としては、イベント告知を主としたチラシのほうがより効果的ではないかと考えられる。
 上記のような施策を用い、葬儀社は地域での認知度・親和性を高めていくことが重要である。消費者にとって突然やってくる「葬儀社選択」の場面で、いかに選択肢の中に入るのか、生前から選択されている状態にできるのか、ということが葬儀の依頼を増加させるために重要なポイントである。

4.葬儀社の業務や従業員に対する考察
 「働き方改革」へ注目が集まっているが、葬儀社にとっても従業員の管理は非常に大きな課題として挙げられる。葬儀社の特徴的な部分として、短期的な予測が難しいというところが挙げられる。他のサービス産業では、土日祝だから顧客は多いだろう、天気が荒れるから仕入れを減らしておこう、といった予測が可能であるが、葬儀に関してはそういった予測が非常に難しい。そのため、従業員が有給休暇を取りづらい、暇な時間も長いが残業も長い、といった悪循環に陥ってしまうことがある。どんなにマーケティングをうまく行い、会員が増加し、年単位でみると葬儀件数が増加したとしても、短期的に見れば、日ごとに業務にばらつきが出てしまう。おのおのの従業員が、葬儀がなく空いている時間に何ができるかを整理し、やるべきことを見つけられるように管理することが重要である。そのためのツールの一例して「週間やることリスト」を紹介する(下図)。

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 週次で何ができ、何ができなかったかを整理することで改善活動を重ね、業務効率化を図る狙いがある。
201807_8_1.jpg 業務効率化は、葬儀単価下落への対策としても有効である。「家族葬」に代表されるように、葬儀の小規模化が進み、1件あたりの価格が減少している。葬儀の規模や慣習は地域によって異なるが、会葬者が減少していることや、消費者からの葬儀価格の透明性向上への期待、消費者自身がさまざまな情報を得ることができるようになり、価格比較が容易になったことなどが要因として考えられる。葬儀社によっては、価格での優位性や高付加価値サービスを強みとするなどさまざまな戦略が考えられるが、葬儀費用の低価格化は避けられない状況となっている。つまり、従業員がより効率的に葬儀を行っていく必要があるということである。業務に無駄やロスを発生させず、一定の品質を保つために、業務マニュアルの作成も有効である。とくに、文字だけのマニュアルではなく画像や動画を用いて、実際にどういった動きをするのかが確認できるよう工夫することが望まれる。動画マニュアルについては、作成用ツール(Teachme Biz など)を用いれば、比較的容易に作成が可能であり、従来のマニュアル作りよりも大幅に作成コストが削減できる。また、視覚的に内容を確認できることで、OJTで行うことが多かった技術指導と比較すると、教育コストの削減にもつながる。

5.診断士が役に立てること
 現代の葬儀社は決して楽な業界ではなく、限られた顧客を多くの競合と奪い合う状況にある。さらに、葬儀社自体は地域密着を基本としたサービス業であるが、全国に展開する葬儀関連サービスにもうまく対応する必要がある。また、消費者自身が多くの情報を得ることができるなど価格やサービスに対する要求事項も多種多様なものとなっている。
 葬儀社を取り巻く環境は常に変化している中で、従来の経営手法を変えることができていない葬儀社が多い。診断士には、多様な変化に対応するための、従来の葬儀業界の慣習にとらわれない提案が求められていると考えられる。当研究会では、他業種の取り組みを参考に、葬儀社で活用するにはどうしたらよいかといった視点で提案を行うことも多い。葬儀の知識を有することも重要であるが、より広い視点から葬儀社にかかわることが診断士にとって重要なポイントである。
 葬祭業界は、今回紹介している葬儀社以外にもさまざまな業種がかかわる非常に幅広いものである。当研究会では葬儀社以外の業種にも幅広く知見を広め、「葬祭業界のNo.1シンクタンク」を目指すとともに、葬祭関連企業の向上を支援することで、ひいては消費者に貢献することを目標として、今後も活動していく所存である。

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