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2015.12.26
中小企業施策で診断士に期待・大岡敏孝衆院議員

~中小企業診断士稲門会30周年記念講演にて~

城北支部 日景 聡

 国会で唯一の中小企業診断士としてご活躍中の大岡敏孝衆議院議員(自民)が11月1日(日)午後、ホテル椿山荘東京で開かれた中小企業診断士稲門会の特別記念講演会に登壇し、「中小企業政策と中小企業診断士の在り方と今後の方向性」をテーマに講演されました。認定支援機関制度の抜本的見直しも含め、中小企業振興のために診断士の皆さんのアイデア、お力をお借りしたいなどと熱く呼びかけられました。


【国会議員で唯一の診断士】
 本講演会は早稲田大学校友の診断士で組織する診断士稲門会の設立30周年を記念して開かれたもので、早大出身の診断士である大岡議員を講師としてお招きしました。今回はオープン開催として広く参加を呼びかけたこともあり、三宅茂樹東京都議会議員、小黒光司東京都中小企業診断士協会会長をはじめ、70名近くの出席者が、1時間半にわたる大岡議員の熱弁に真剣なまなざしで耳を傾けました。

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 大岡議員は1972年、滋賀県甲賀市の生まれ。95年に早大卒業後、民間企業に就職。その後、政治の迷走に危機意識を感じて浜松市議会議員に転身し、地域の産業政策に関心を寄せる中で、診断士資格取得を思い立ったとのこと。2005年度の診断士試験に合格。資格取得後、静岡県議会議員に当選、さらに、生まれ故郷の滋賀県の選挙区で自民党が候補者を公募していることを知り、2012年12月の衆院選で滋賀1区から立候補して初当選されました。現在2期目。衆参710名余りいる国会議員の中で弁護士や税理士出身は多いものの、診断士としては唯一の国会議員で、中小企業施策の立案、立法に力を入れておられます。


【診断士の一層の活躍を】
 講演では、まず中小企業が置かれている現状を分析しつつ、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金など、現在実施中の中小企業・小規模事業者向け施策の趣旨や導入経緯を解説。日本は開業率、廃業率が低水準で少産少死の企業環境になっており、経済活性化のためにも、開業率を高めて新陳代謝を促す必要性を強調されました。201601-4p-2.jpg
 特に、①中小企業の人手不足を解消するための人材マッチング策②経営環境が厳しい時にこそ将来を見越した投資を促す設備投資促進策③都道府県ごとばらつきがある地域金融機関の融資審査向けに一次審査用のスコアカードを設ける案など、さまざまな面で診断士のアイデアや力も借りていきたいとの考えを披露されました。


【認定支援機関の見直しも】
 講演では、今後期待される「診断士」の位置づけにも言及され、まず、認定支援機関のあり方について、認定された全国24,316機関のうち診断士は430人に過ぎないと指摘し、それ以外は記帳指導の域を出ていない支援機関が多い状態ではないかと問題提起されました。
 そのうえで、売上拡大や競争力向上など、診断士のように幅広く経営全般を支援できる役割を重視する方向で、来年度以降、制度を抜本的に見直す意向を繰り返し表明されました。
 また、中小企業支援法に「中小企業診断士」の資格名称が明記されていない点にも触れ、診断士の側からも法改正に向けて声を上げてもらいたいと強調されました。「すでに診断士の名前は定着しており、中小企業庁のもとで試験制度も存在しているので、法改正自体はそれほど問題ないだろう。ただ、独占業務を新たにどのように盛り込むか次第では、他士業との調整で時間が掛かるかもしれない」と語られました。
 このほか、診断士登録者が23,281名にのぼる一方で、民間企業に勤務する診断士が12,723名と半数を占めることを指摘され、これらの企業内診断士を活用するため、有給休暇を利用して一時的に公的機関の仕事をするなど、出身企業と利益相反しない形で中小企業の支援、助言にあたる案などで可能性を探れないか、政府としても企業内診断士の一層の活用に向けて問題意識を持っていることを明らかにされました。

201601-5p-1.jpg 講演の締めくくりでは、現在議論が行われている軽減税率について、診断士側の見解を尋ねられ、低所得者層の負担軽減策と中小企業実務との兼ね合いもしっかりと視野に入れたうえで、税制の方向性を検討していく意向も示されました。
 中小企業施策を推し進める診断士出身国会議員として、自民党の中小企業政策に関する部会で各種提案を行う一方で、10月に就任した財務大臣政務官として査定する「マッチポンプ状態」と自身の立場に苦笑いしつつも、終始一貫して中小企業支援への熱い想いを強調する講演となりました。

【他士業校友会や他大学診断士会も参加】
201601-5p-2.jpg 講演会には早大5士業の校友会「稲士会」の各稲門会、慶応大校友による中小企業診断士三田会、明治大校友による中小企業診断士紫紺会の会員など数多く参加してくださり、懇親会に席を移してからは、活発な情報交換の輪が広がりました。

2015.10.29
日本政策金融公庫のご案内

日本政策金融公庫のご案内
~小規模事業者や創業企業の資金繰りを支援します~

 ㈱日本政策金融公庫(略称:日本公庫)は、政府系金融機関として小規模事業者の皆様をサポートする事業資金融資のほか、お子様の入学資金などを必要とされる皆様への教育資金融資など、国民生活に密着した融資を行っております。
 東京協会様と日本公庫国民生活事業都内14支店とは平成26年10月27日に業務連携の覚書を締結いたしました。これを契機に会員の先生方からクライアント企業を支店にご紹介いただいたり、また弊社都内支店職員研修に講師として池田副会長様にご登壇いただくなど連携が進んでおります。
 会員の先生方におかれましては、クライアント企業様から融資に関するご相談(事業拡大時における資金や日頃の運転資金、年末資金など)を受けられた際には、お近くの弊社支店、あるいは東京広域営業推進室(03-3553-3443、上杉、樋口)にお気軽にお問い合わせください。


(日本公庫国民生活事業都内支店連絡先)(※担当者は各支店の営業担当課長)

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2012.12.29
シリーズ 営業秘密管理 第3回 営業秘密管理の方法について
特別寄稿
シリーズ 営業秘密管理
第3回 営業秘密管理の方法について
経済産業省経済産業政策局知的財産政策室
企画一係長 根橋 広樹
 「シリーズ 営業秘密管理」(全3回)の第3回目は、営業秘密の管理方法について説明する。
 
1.営業秘密の管理方法について
 前回は、営業秘密とするべき情報の把握方法に関して概観してきたが、次の過程としては、営業秘密として管理する情報資産について、現時点の管理水準を十分把握することが必要となる(※1)。現状把握を行う際には「営業秘密管理指針」参考資料1「営業秘密管理チェックシート」(※2)が参考になるものと考えている。本資料は、裁判例の分析を踏まえてチェック項目等を示しているものであり、不正競争防止法で保護される営業秘密となり得ているかどうかの目安となるものである。
 対策が取られていない項目については、業務の効率性等も考慮しながら、何らかの対応を取るかを検討し、企業の競争力に特に影響を与える重要性の高い情報資産については漏えいを極力避けるために、不正競争防止法で保護される水準か否かにこだわらず、さらに高度な管理方法をとることも検討すべきである。その際、新たな管理方法が現状と大きく乖離し、実現性のないものとならないようにするため、できるところから実施していくことが重要である。以下では、他企業との契約、アクセス権者の指定・人的な管理、物理的・技術的な管理の内容など営業秘密の管理方法について順次説明していく。
 
2.取引先との契約について
 経営上の戦略として営業秘密を他社にライセンスすることがあり得るが、ライセンス先から営業秘密が漏えいした場合には、企業の経営に大きな損失が生じる可能性がある。特に、当該企業にとって非常に重要な営業秘密が漏えいした場合には、企業の存続に関わる問題にもなりかねない。一方、業務提携や新たな製品の開発等のために積極的に営業秘密をライセンスした方がよい状況も考えられ、営業秘密の活用は企業の経営戦略の幅を広げることにつながる可能性がある。
 このようないわば諸刃の剣ともいえる営業秘密のライセンスに関して、中小企業の経営に関するコンサルタント業務を行う方々の役割が期待される。
 不正競争防止法上の営業秘密として保護されるためには、秘密管理性を維持しなければならず、そのためには秘密保持義務が盛り込まれた契約を締結することが重要となる。契約内容には、対象となる情報の範囲、秘密保持期間、義務違反の際の措置等を盛り込むべきであると考えられるが、開示されたすべての情報を守秘義務の対象とするなど、情報を受領する側にとって遵守することがきわめて困難な場合には公序良俗違反として契約が無効となる余地もあるので、秘密保持の対象については明確に定めておくことが望ましい。
 しかしながら、平成20年度に実施された調査(※3)では、小規模企業において得意先(委託元)と秘密保持契約を締結していると回答した割合は約42%に留まっているなど、規模の小さな企業において取引先との秘密保持契約はあまり締結されていない状況にある。
 次に、企業との秘密保持契約に関して、簡単な例を元に改善方法について考えてみたい。
  
 ⅰ)
取引先への営業秘密の開示について、内部の明確なルールがなく、担当者が口頭にて競業他社などの第三者に開示しないように依頼している状況にあることが判明した。
   (営業秘密の管理手順②:現状把握)
 ⅱ)
後々のトラブルを避けるために、重要情報を指定し、これらについて秘密保持の契約を結ぶように改善することにした。
   (営業秘密の管理手順③:管理方法の改善)
  
 ⅱ)の改善を行う際に、秘密保持契約を締結するべき営業秘密を事前に企業内で特定(※4)しておくとともに、秘密保持契約の条項についてあらかじめ企業内の取決めを定めておくことが大切である。これにより、個々の事案における契約担当者の負担を軽減とともに、どの取引先にも公平に秘密保持契約の締結を依頼することができる。
 なお、「営業秘密管理指針」参考資料2「各種契約書等の参考例」の第4~8(※5)では、企業間の契約書例を掲載しているので、企業内のルールを作成する際や契約書を締結する際の参考としていただきたい。
 
3.人的な管理(アクセス権者の指定を含む)について
 過去の調査等からは、中途退職者等の企業の内部者から情報が漏えいしている場合が多いことが明らかになっている。たとえば、平成24年に実施された調査(※6)では、過去5年間に情報漏えいが明確に発生したと回答した企業のなかで、「中途退職者(正社員)」が漏えいに関わっていたと回答した割合は50%となっており、かなり高い割合となっている。
 内部者からの情報漏えいを防ぐためには、重要な情報資産へのアクセス権の制限を中心に、人的な管理が重要な要素となる。「営業秘密管理チェックシート」の指定編においても、「秘密指定」とともに「アクセス権限の範囲指定」の配点割合が高くなっており、漏えいした場合に保護されるか否かという点でも重要な要素であると考えている。
 しかし、平成20年度に実施された調査では、経営情報に関して「アクセス権者の特定」を実施している小規模企業は約24%、中規模企業では約36%に留まっていた。顧客情報や技術情報等ではさらに実施率が低くなっており、特に中小企業ではアクセス制限があまり行われていない状況が伺える。一方、個別の情報について細かくアクセス権限を付与することや従業員が数名の企業において無理をしてまでアクセス制限を行うことは、企業の業務効率を悪くするばかりでなく、ルールの形骸化を誘発する可能性があるため、中小企業の場合にはアクセス制限を行う情報資産を絞った方がよい場合もあり得る。
 また、アクセス権限を有している従業員とその他の従業員が同じフロアにおいて業務を行うことも多くあり、アクセス権者以外の従業員が重要情報を不正に入手して漏えいさせる可能性も否定できない。そのため、アクセス権者以外の従業員についても人的な管理が必要となる。
 人的な管理の内容としては、①従業員等との秘密保持契約の締結や、②営業秘密の取扱いに関する従業員への教育・指導、などが人的な管理の方法として考えられる。
 ①従業員等と秘密保持契約を締結する際には、秘密保持の対象となる情報の範囲をできるだけ明確にすることが重要である。秘密保持の対象となる情報について、契約当事者双方(企業と従業員)が共通の認識を持つことができるように、ある程度の特定をすることが必要となる。「在職中に知り得た全ての情報」など過度に広範な秘密保持義務規定では、企業が守りたい秘密情報を従業員が認識できないことにより、契約上の観点からも公序良俗違反とされ無効とされる可能性すらある。また、秘密保持契約を締結するタイミングについては、入社時には概括的な規定しか置けないので、退職時やプロジェクト参加時に締結することが秘密情報の特定という観点からも有効といえる。
 ②従業員への教育・指導に関しては、まずは営業秘密を取り扱うアクセス権限を持っている者に対して、その営業秘密の重要性や取り扱うときの留意点などを定期的に注意喚起することが重要である。また、営業秘密に関するルールを定めている場合には、社内研修などにおいてそのルールについて広く周知し、従業員に理解してもらう必要がある。
 具体的には、前回お示しした仮想的な事例「検査機器を製造・販売している企業」を例に見ていきたい。
  
 ⅰ)
重要な情報資産である「設計情報」について、実質的には設計開発部と製造部に所属する従業員のみが見られるようになっていたが、特段規程等はなかった。この状況では、「設計情報」が秘密情報であることについてアクセス権限を持っている従業員が認識できていない場合もあるため、「秘密管理性」の水準を下げている可能性があると判断した。
   (営業秘密の管理手順②:現状把握)
 ⅱ)
業務の効率性を考えて、アクセス権者は従前の通りとしたが、「設計図等に関する取扱いについて」と題する書面にアクセス権者を明記し、関係者に周知した。
   (営業秘密の管理手順③:管理方法の改善・周知)
 ⅲ)
さらに、従前は就業規則に秘密保持義務規定を設けていたが、従業員の秘密保持義務を明確にする必要があると判断した。
   (営業秘密の管理手順②:現状把握)
 ⅳ)
アクセス権者以外の従業員に対しても、営業秘密として指定した情報に関して秘密保持契約を締結し、さらに従業員全員を対象とする定期研修の中に営業秘密管理の重要性等に関するカリキュラムを導入し、実施した。
   (営業秘密の管理手順③:管理方法の改善・周知)
  
 以上のような営業秘密に関する人的な管理を適切に行うためには、さまざまな担当者が関わる必要がある。中小企業の経営に関してコンサルタント業務を行う方々には、これらの担当を橋渡しする役割を担われることを期待している。
 
4.物理的管理・技術的管理について
 「営業秘密管理チェックシート」の管理編では、「書面等の管理」などの物理的管理や「コンピューター管理」などの技術的管理の配点が高く、重要視されている。

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 「物理的管理」および「技術的管理」として営業秘密管理指針で示している管理方法は図表1の通りである。これらの内容については、どれか一つを実施していれば「秘密管理性」が認められるわけというわけではなく、逆にどれか一つを実施しなければ「秘密管理性」が認められないわけでもない。「秘密管理性」は、総合的な管理の状況によって判断されることとなる。
 なお、不正競争防止法で保護を受ける要件である「秘密管理性」の水準を満たしたとしても、営業秘密を完全に守られる水準となっているわけではない。自社の非常に重要な情報資産の流出を防ぐためには、漏えいを生じないためにどの程度の情報セキュリティが必要なのかという視点も大切である。
 これらの管理に関する助言については、中小企業の経営に関するコンサル業務を行う方々には馴染みが薄い分野かもしれない。しかし、営業秘密管理の厳重さと業務の効率性を両立させるためには、企業の経営全体から考えることが必要であり、中小企業へのコンサルティングを行っている方々に参画いただきたいと考えている。
 具体的には、「検査機器を製造・販売している企業」の仮想的な事例を通じて見ていきたい。
 
 ⅰ)
「設計情報」について、従前は、①書面情報に関して、原本を部長の引き出しに保管(無施錠)しており、複製は各保管者がその引き出しに保管(無施錠)していた。
   
②電子データに関しては、外付けHDDは部長の引き出しに保管(無施錠) しており、サーバーに保存されている電子データに関してもファイル自体にはパスワードによるアクセス制限等を行っていなかった。そして、設計情報を利用する場合には、電子データのまま利用することを推奨しているが、印刷した書面の利用も多いという状況であった。
   
これらの現状の管理状況では秘密管理の水準が低いと判断し、改善することにした。
   (営業秘密の管理手順②:現状把握)
 
 ⅱ)
管理状況を改善するため、書面に関して、原本は部長が秘密文書を保管するキャビネットにファイルに綴って施錠保管することに変更したが、複製の取扱いは従前の通りとした。電子データに関しては、外付けHDDは部長が秘密文書を保管するキャビネットの中に施錠保管することに変更し、さらにサーバー内にある設計情報フォルダにもパスワード制限をかけるなど管理方法を改善した。
   (営業秘密管理手順③:管理方法の改善)
 
 この例では、書面情報の複製に関する管理方法を変えておらず、管理に関して不十分なところがあるかもしれない。しかしながら、たとえば複製を許可制にするという管理方法を選択すると、複製するのに当初よりも時間がかかり、業務の効率性が悪くなるという負の側面が表れる可能性がある。
 このように、秘密管理性と業務効率のバランスを考慮した上で管理方法を選択することが重要となるが、その際に経営全体に対する広い視野が必要となる。また、広い視野から管理方法を考えることにより、人的管理などの他の方法で物理的な管理体制を補う手段を選択し、管理に関して脆弱な部分を強化できる可能性がある。
 なお、物理的管理や技術的管理に関係する資格もあるため、実践の場では、これらの資格の保有者などと連携して管理体制を構築していくことが考えられる(※7)。
 
5.管理情報の確認・見直しについて
 しっかりとした管理ルールを構築したとしても、そのルールが実践されなければ、営業秘密として認められない可能性がある。そのため、構築した管理ルールが実効的に機能しているかどうかの確認することが必要となる(営業秘密の管理手順④)。
 また、営業秘密として管理するべき情報資産についても、当該企業の経営方針や技術の発展などに応じて変化する可能性があり、必要に応じて、自社の強みとなる情報資産の見直しを行うことが望ましい。
 自社の強みとなる情報資産の見直しは、前回の「3.自社の強みとなる情報資産の把握について」でも述べたように、新たな強みの発見など経営改善への示唆を与えるものであり、このような取組を行う企業が増えることを期待している。
 
 3回にわたり営業秘密管理について説明してきたが、営業秘密を適切に管理するためにはさまざまな要素を検討していかなければならず、広く経営全般の観点から考えることが重要であることを最後に強調したい。そして、この業務の遂行にあたり、経営全般のコンサルティングを行う中小企業診断士の役割を期待している。
 
※1 営業秘密管理体制の導入として、手順① 自社の強みとなる情報資産の把握(営業秘密として管理する情報資産の把握) → 手順② 管理状況・管理水準の現状把握 → 手順③ 営業秘密・管理ルールの指定・周知・実施 → 手順④ チェック・見直し という流れを想定している。
※2 営業秘密管理指針」参考資料1「営業秘密管理チェックシート」は経済産業省のホームページに掲載されている。<http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html
※3 経済産業省(委託先:株式会社帝国データバンク)「平成20年度知的財産の適切な保護・活用等に関する調査研究,各種主体における営業秘密の適切な管理手法調査研究」P78を参照<http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2009fy01/0019931.pdf
※4 秘密保持契約を締結する営業秘密を特定する際に、原則として開示は行わない営業秘密をあわせて特定することも考えられる。
※5 「営業秘密管理指針」参考資料2「各種契約書等の参考例」は、参考資料1と同じく、<http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html>に掲載されている。なお、就業規則の例や営業秘密管理規程の例、従業員との秘密保持契約の例なども掲載されているので、参考にしていただきたい。
※6 営業秘密の管理実態に関するアンケート調査」結果概要(速報版)<http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/121015HP.pdf>を参照
※7 技術的管理に関係する資格としては、独立行政法人情報処理推進機構が情報セキュリティの高度な専門性を持つIT技術者として認定する「情報セキュリティスペシャリスト試験」などがある。物理的管理の関係では、一般社団法人ニューオフィス推進協会が実施する「オフィスセキュリティコーディネータ資格試験」(民間資格)などがある。なお、同団体では、オフィスにおける経営資産を適切に保護している組織に付与する「オフィスセキュリテイマーク」の認証も行っている。
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2012.11.28
シリーズ 営業秘密管理 第2回 営業秘密管理の手順等について
済産業省経済産業政策局知的財産政策室
企画一係長 根橋 広樹
「シリーズ 営業秘密管理」(全3回)の第2回目は、知的財産としての営業秘密管理の利点や営業秘密の指定の手順等を扱う。
1.知的財産としての営業秘密について
まずは、営業秘密を管理することの意義を考えるため、知的財産としての営業秘密の利点を特許権と対比することにより確認する(※1)。
第1に、当該知的財産を独占的に使用できるという点がある。特許権を例に考えると、特許権の取得により譲渡可能な排他的な権利を取得することができるが、その期間は原則として最大20年間に限られる。一方、知的財産を営業秘密として秘匿していれば、情報漏洩等によってその内容が明らかにならない限り、期間の制限なく独占的に使用することができる(※2)。
第2に、営業秘密を使用した製品等の模倣を防ぐという点がある。特許権の取得に際して、特許出願の内容は出願から一定期間後に公開されるため、他社に模倣されるおそれや周辺特許を取得され実施が困難となるおそれがある。一方、営業秘密に関しては、それが化体した製品等を解体され分析されることなどにより、営業秘密の内容を模倣されるおそれはあるものの、完成品から特定することが困難な情報については、模倣されるおそれが低い。
第3に、法律で保護されるために手続関係の費用が発生しない点がある。特許権の取得に当たっては出願料や出願審査請求料が必要となり、さらに特許権設定の登録がなされた後も特許権を維持するためには特許料の納付が必要となる。また、国際出願を行った場合にはそれに係る経費が必要になるなど、特許権の取得・維持にはさまざまな手続関係の経費が必要となる。一方、営業秘密に関しては、管理のための費用は発生するものの、不正競争防止法で保護される営業秘密とされるために義務づけられている費用負担はない。そのため、工夫次第では特許よりも経費を抑えることができると考えられる。
なお、知的財産の管理に関しては、営業秘密として秘匿することや特許権などの産業財産権を取得すること以外に、「積極的に公開」し、産業全体の発展や参入企業の増加を図ることで、最終的に当該企業の利益獲得につなげていくという方法もあり得る。
知的財産を戦略的に運用し経営に活かしていくためには、特許権等の産業財産権の取得・実施だけを目指すのではなく、企業の経営戦略に沿って個々の知的財産についてどの管理方法を取るかを選択し、それぞれを組み合わせながら活用していくことが必要である。
しかしながら、経済産業省が平成20年度に実施した調査(※3)によると、中規模企業において「情報の秘密区分の設定」を行っていると回答している割合が「技術に関する情報」では約28%であり、最も高い「経営戦略に関する情報」でも約38%に留まっている。また、平成24年度の調査(速報版)においても、営業秘密とそれ以外の情報を区別していると回答したのは、製造業の従業員300名以下の企業では約48%、非製造業の従業員300名以下の企業では約54%に留まっており(※4)、中小企業ではそもそも秘密として管理するべき情報の設定があまり行われていないことが伺われる。このことから、特に中小企業においては、営業秘密を有効に管理・活用し、企業の経営戦略に活かしている企業はまだ限られていると示唆される。
2.営業秘密管理の手順について
営業秘密を有効に活用した、戦略的な知的財産の活用を行うためには、営業秘密として管理するべき情報資産を見極め、適切な管理をすることがまずは必要となる。
以下では、「営業秘密管理指針」参考資料4「営業秘密を適切に管理するための導入手順について」(以下「参考資料4」という。)等に基づき営業秘密管理の方法に関して説明していく。まず、営業秘密管理の手順を概観すると、以下の通りとなる(※5)。
①自社が保有する情報資産(※6)の中から「自社の強みとなる情報資産」を把握し、さらにその中からどの情報資産を営業秘密として管理するかを判断する。
②営業秘密として管理すると判断した情報資産について、現状の管理体制(保管状況、従業員の認識状況等)の水準を把握する。
③事業者の規模や業種、現状の管理体制等を踏まえながら、情報資産の重要性に応じた管理のルール(営業秘密として管理する情報資産の決定手続を含む)を具体的に規定し従業員に周知するとともに、重要な情報資産を実際に決められた方法で管理する。
④営業秘密の管理体制を構築した後、指定された管理ルールが適切に実践されているかについて、確認し、それに基づき見直しを行う。また、営業秘密として指定すべき新たな情報資産が創出される場合等、必要に応じて、自社の強みとなる情報資産を適切に把握するための見直しを行う。
原則としてこの手順に沿って営業秘密管理の体制を整備することが望ましいと考えているが、実施する際の注意点として、情報資産の管理に投資できる資源が限られる中小企業においては、複雑な管理体制を構築した場合には十分に実践できないことが考えられる。そのため、まずは無理のない範囲内で管理体制を構築し、企業内で実効的に管理できていることを確認してから、必要に応じて、追加の管理方法等の導入を検討するなど、段階的に管理体制を充実させていくことが望ましい。
例えば、情報資産の重要性等の水準に応じて、管理方法を複数設けていると、従業員がそれぞれの管理方法を認識することが難しく、十分に実践できないことが考えられる。このため、はじめて管理体制を構築する際には管理方法を過度に分類しないことなどが対策として考えられる。以下では営業秘密管理の手順①~④について、順番に説明していく。
3.自社の強みとなる情報資産の把握等について
手順①「自社の強みとなる情報資産の把握」の過程については、一見すると営業秘密管理との関係が希薄なように思えるが、重要な情報と認識していないものを十分管理することは非常に困難であることから、適切な管理をするための前提条件を備えるという点で重要な過程である。
「自社の強みとなる情報資産の把握」の方法としては、一連の事業活動の成果物である製品・サービス等のなかで売上高に占める割合の高いものから順番に、高い売上を達成するに至った「強み」を把握し、さらに「強み」を基礎づける情報資産の把握を行うことが考えられる。
具体的な事例に則して考えるために、検査機器を製造・販売している企業が情報資産を把握する手順(※7)を仮想的に検討してみると、
ⅰ)売上が最も高い検査機器について、高い売上を達成するに至った「強み」を検討すると、本商品は、精密な検査が可能である上、その品質が安定していることにより、同業他社の商品に比べて、相対的な優位を有していると判断した
ⅱ)そして、これらの「強み」をもたらしている要因としては、「ミクロン単位で検査位置を調整する技術」と完成品に安定した機能をもたらす「製造工程、設計図面」の2種類の情報資産であると当該企業は認識した
ⅲ)次に「強み」をもたらしている情報資産の管理方法を検討することとなるが、製品を解体することなどにより容易に模倣が可能な「ミクロン単位で検査位置を調整できるための技術」は特許権を取得して管理する一方、不正に使用された場合の立証が困難である上に解体しても技術情報の判別が困難である「製造工程、設計図面」については営業秘密として管理することを決めた
という手順が考えられる。
検査機器の例は技術上の情報に関するものであったが、営業上の情報に関してもソフト販売やソフトウェアの受託開発を主たる事業とする企業の手順を仮想的に検討してみると(※8)、
ⅰ)売上が最も高いソフトウェアの受託開発について、高い売上を達成するに至った「強み」を検討すると、取引先事業者からの細かいニーズに迅速かつ丁寧に対応することによって、信頼を得ていることだと判断した
ⅱ)そして、この「強み」をもたらしている要因としては、長年をかけてデータベース化し、活用している「取引先に関する詳細な情報」だと認識した
ⅲ)次に「強み」をもたらしている情報資産の管理方法を検討することとなるが、有名企業との取引経験があることは「積極的に公開」して広報する一方、個別の取引先のニーズ情報や個別の取引履歴等に関しては当該企業の「強み」の源泉であるとともに同業他社においても営業上の参考となるものであるため、営業秘密として管理することを決めた
という手順が考えられる。
なお、有用な情報資産を把握する過程では、経営戦略を考える上で有用な示唆を得られる場合もあるものと考えている。例えば、ソフトウェアの受託開発等を主たる事業とする企業の例において、最近取引先事業者からニーズが満たされていないなどの苦情が増加しているとする。そこで、細かいニーズに迅速かつ丁寧に対応するために有効だと認識していた「取引先に関する詳細な情報」を精査してみると、最近更新状況や引き継ぎ状況等の不備があって、取引先情報をうまく活用できないことが浮かびあがってくるかもしれない。また、業務プロセスの分析を徹底的に行う中で、どの工程で時間がかかっているのか、不良率が高くなっているのかを社員全員が参加して議論することで、取引先の多様化、製品工程での確認項目の追加など現場レベルでの改善策を決定、実施できることもある。このように、有用な情報資産を把握する活動は、経営改善への示唆を与える可能性をも有している。
図表2は、営業秘密管理の手順①を行う中で抽出されることの多い要素の例がまとめられたものである。これらの内容は、自社にとっては、日々目にするありふれた情報であるかもしれないが、それらの情報資産が「自社の強みとなる情報資産」となっていることが分かる。まずはこのような情報資産を把握することが適切な営業秘密管理の第一歩である。
なお、自社の強みとなる情報資産の特定は、経営改善に関するコンサルタント業務等を行う際にも有効であり、製造プロセスの改善、顧客との関係強化、従業員教育の充実化など多目的で活用されることが期待される(※9)。
次回は、契約等の注意点等を中心に、営業秘密管理の手順②~④について説明することを予定している。
※1 営業秘密のデメリットとしては、自社が開発した後に、他者が同じ技術等を独自に開発した場合には独占できないことなどが挙げられる。
※2 特許権として保護され得る情報資産(発明)をノウハウとして秘匿することを選択した場合は、発明を実施しているまたはその準備をしていれば、その後、他社が特許権を取得したとしても、無償の通常実施権を得られる制度(先使用権制度)がある。
※3 第1回の図表1または経済産業省(委託先:株式会社帝国データバンク)「平成20年度知的財産の適切な保護・活用等に関する調査研究,各種主体における営業秘密の適切な管理手法調査研究」P12を参照<http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2009fy01/0019931.pdf>)
※4 「営業秘密の管理実態に関するアンケート調査」結果概要(速報版)を参照
   <http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/121015HP.pdf>
   なお、「平成20年度知的財産の適切な保護・活用等に関する調査研究,各種主体における営業秘密の適切な管理手法調査研究」とは質問の内容等が違うため、一概に比較することはできない。
※5 「営業秘密管理指針」参考資料4「営業秘密を適切に管理するための導入手順について」P3を基に筆者が一部改変し記載した。
※6 知的財産基本法第2条では、「『知的財産』とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう」としており、知的財産以外の有用な情報を含める意味で、「情報資産」としている。
※7 「営業秘密管理指針」参考資料4の実践例2を基に作成した。
※8 「営業秘密管理指針」参考資料4の実践例1を基に作成した。
※9 有用な情報資産の把握は、「知的資産経営」を行う上でも重要な要素であると考えられる。知的資産経営に関しては、知的資産経営ポータルを参照されたい。
   <http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/index.html>  
2012.10.23
シリーズ 営業秘密管理 第1回 営業秘密管理に関するこれまでの施策について
経済産業省経済産業政策局知的財産政策室 企画一係長 根橋 広樹
 
 営業秘密の管理について、中小企業へのコンサルティング業務などを行っている方々に知ってもらいたいことなどを3回に分けて情報提供する予定である。今回は経済産業省の取組や現状について説明させていただく。
 
1.知的財産の秘密管理が求められる背景について

 知識集約型経済の急速な発展に伴い、各企業がその競争力を強化していくためには、無形の経営資源である技術やノウハウなどの知的財産の管理・活用を重視した経営方法やビジネスモデルの構築が重要となる。すなわち、事業者は、自身が保有している知的財産に関して、それぞれの知的財産の内容・性格に応じて、権利は取得せず積極的に広報していくか、特許等の産業財産権を取得するか、秘匿し秘密管理下に置くべきかなどの選択肢から適切な方法を選び、管理した上で、それぞれの知的財産を組み合わせて活用することにより、新たな価値を生み出す力を得ることができると考えられる。

 特に、知的財産の管理においては、顧客情報などの特許等になじまない営業情報や、出願公開によって情報の内容が公になることで大きな支障が生じるなど権利取得になじまない技術情報に関しては、秘密として管理することが必要となる。

 各企業が秘密として管理している知的財産の多くは、事業活動を支える現場の労働者や技術者の長年の努力と事業者の多額の投資の結集であり、事業者の収益を生み出す源としての価値を有している。また、国際競争を勝ち抜いていくために、自社の技術等に加え、組織外部の技術等も活用しつつ、新しい価値等を創造するオープンイノベーションの促進が求められており、これを実現するためには、事業者間で相互に競争力の源泉となる企業秘密を開示しなければならない場合もある。これらの状況から、知的財産を企業秘密として管理・活用する場合には、保管方法や秘密保持の契約内容等を十分検討し、実践する必要がある。

 さらに、最近、鉄鋼メーカーが高機能鋼板の製造技術を不正に取得・使用したとして元従業員と韓国企業に対して、不正競争防止法(以下「不競法」という。)に基づく損害賠償請求等を求めて民事訴訟を提起する事件や、工作機械メーカーに在職していた中国人の従業員が、同社のサーバーにアクセスし、秘密情報を不正に複製して持ち出していた疑いで立件される事件など、企業秘密の流出が疑われる事例が明らかになり、知的財産の管理に関する関心が高まっているものと考えられる。

2.これまでの経済産業省の取組

 前述のように知的財産の管理等が求められる中、経済産業省においても、これまで技術情報や顧客情報などの漏えい対策として不競法の改正を中心に対策を進めてきた。

 不競法に営業秘密に関する規定がはじめて置かれたのは、平成2年のことである。WTOの前身であるGATTのウルグアイランド交渉において、営業秘密の保護のニーズに関して国際的な議論がなされたことを受けて、不競法において、営業秘密の不正取得行為等を「不正競争」とし、新たに差止請求等の対象とした。

 平成15年には、平成14年に策定された「知的財産戦略大綱」を受けて、営業秘密の不正取得等に対する刑事罰が新たに不競法に規定された。その後も、平成17年に営業秘密の日本国外での使用・開示行為や一定の条件を満たす退職者の営業秘密の使用・開示行為を処罰する旨の規定が設けられ、また、平成21年には目的要件を拡大(「不正の競争の目的」から「図利・加害の目的」に変更)するとともに営業秘密を不当に保有する行為(領得行為)について新たに処罰対象に追加するなど罰則に関する規定の整備を行ってきた。さらに、平成23年の改正によって、営業秘密の内容を公開の法廷で明らかにしない旨の決定(秘匿決定)等を行えるようにするなど刑事訴訟手続の整備を行っている。

 また、「知的財産戦略大綱」には、「企業が営業秘密に関する管理強化のための戦略的なプログラムを策定できるよう、参考となるべき指針を2002年度中に作成する」ことが盛り込まれており、これを受けて不競法による保護を受けられる情報の管理方法等を説明する「営業秘密管理指針」を策定・公表した。さらに、製造業を主な対象に、海外展開等をする場合において、意図したまたは想定していた技術移転の範囲を超える「意図せざる技術流出」が起こることを防止するために、技術流出が発生する主なパターンを紹介するとともに、その対策を提示する「技術流出防止指針」を策定・公表している。なお、営業秘密管理指針については、事業者の実態を踏まえた合理性のある秘密管理方法の提示や、中小企業等による管理体制の導入手順例や各種契約書の参考例等の提示を行うなど、累次の改訂(最終改訂:平成23年12月1日)を行っている。(※1)
 
3.各企業における営業秘密管理に関する取組の現状について

 不競法における営業秘密保護の規定の整備に伴い、各企業において知的財産を秘密として管理する際に、「不競法の保護を受けられるように体制を整えること」と、「確実に管理し絶対に漏えいしないようにすること」を区別することが重要となってきているものと考えられる。

 絶対に漏えいしないように万全の管理体制を敷くことは企業にとって大きな支出も伴うこととなるため、すべての重要な情報をそのように管理することは現実的ではない。そこで、企業にとって重要な知的財産の中でも事後的な保護(損害賠償請求等)を受けることで対応が可能なものについては、漏えいした際に不競法を活用できるようにするため、最低限不競法で保護を受けられる管理を目指すことが重要となる。

 不競法の保護を受けるためには、不競法第2条第6項に規定される3つの要件、すなわち、?秘密として管理されていること(秘密管理性)、?事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)、?公然と知られていないこと(非公知性)、を満たすことが必要となる。(※2)

 しかしながら、過去の調査によると各企業の情報管理の状況はそれほど芳しいといえる状況にはない。(※3)

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 例えば、平成20年度に経済産業省が実施した調査(※4)(図表1)では、「特に管理を行っていない」企業の割合は低いものの、個別の項目について見るとほとんどの企業が実施している項目はないという状況が伺える。その中でも、「媒体の廃棄」、「外部からの侵入に対する防御」は他の項目と比較すると実施率が高く、逆に「持出制限」、「施設などの入退室管理」は全体的に実施率が低い。


 また、「技術に関する情報」は他の情報資産に比べるとやや実施率が低いという結果になっている。さらに、ここでは技術に関する情報のみを示しているが、いずれの情報資産においても概ね企業規模による実施率の高低が見られる(図表2)。

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 当該情報が営業秘密であるという認識可能性を高める観点などから、人的な管理において重要性が高いと考えられる秘密保持契約等の締結状況について、企業規模別に取組が大きく異なっており、小規模企業では何もしていない企業が4割弱になっている。また、大規模企業においても、一般的・包括的な秘密保持義務しか課すことのできない「入社時」や「就業規則」での対応が多く、秘密としなければならない内容が明らかとなる「プロジェクト毎」や「退職時」に契約を締結している割合は低くなっている(図表3)。

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 以上のように、物理的管理、技術的管理、人的管理のいずれについても、我が国の企業全体を見渡すと不十分な面があることは否めず、企業にとって重要な知的財産が漏えいしてしまった場合にも不競法の保護を受けられない場合があり得るものと考えられる。
 
4. これからの施策について

 各企業の営業秘密の管理に関する取組が未だ不十分であり、また、実際に大規模な流出事例が発生したことなどから、平成24年5月29日に知的財産戦略本部において決定された「知的財産推進計画2012」(※5)では、「技術流出に関する実態について、調査・分析を行い、技術流出防止に関する取組を推進する」ことが盛り込まれた。これを受けて、当室では人材を通じた技術流出に関する調査研究を進めている。

 具体的な調査内容としては、
  ? 営業秘密の管理や流出の規模等に関する実態調査
  ? 実態調査の結果を基に企業における営業秘密管理の実態を更に詳細に把握するためのヒアリング調査
  ? 競業避止義務契約や秘密保持契約など人を通じた技術流出を防ぐための効果的な対策を取るための文献および裁判例の調査
  ? ???の調査結果等に基づき、学識経験者等により構成される調査研究委員会において企業の取り得る対応策のあり方の検討
 などを行うこととしている。

 これまでも、必要に応じて営業秘密の流出や管理実態に関する調査を実施してきたが、営業秘密の流出が日本経済に与える影響などに関しては必ずしも十分な調査を実施できていなかったため、?の実態調査では営業秘密の漏えいによる損害規模などに関して調査を実施している。

 ???までの調査内容については、平成24年度末までに取りまとめ、今後の施策に反映させていくことを予定している。
 
 
5.中小企業へのコンサルティング業務を行っている方々への期待

 上述のように、経済産業省では、知的財産の管理を推進するためのさまざまな取組を行っており、現在もさらなる取組強化に向けて検討を行っている。しかしながら、知的財産の管理に関する取組を進めていくためには、経済産業省において取組を進めていくのはもちろんではあるが、知的財産を現に有し、活用している企業等において営業秘密の管理に関する意識の向上や実効性の確保を進めていくことが不可欠である。

 特に、中小企業においては、情報の管理があまり進んでいない状況にあるため、中小企業の経営診断や助言を行う際には、当該企業における企業秘密の管理に関しても念頭においていただきたいと考えている。

 次回以降は、主に中小企業へのコンサルティングに関わる方が各企業に助言するにあたり、知っておいていただきたい情報(営業秘密として管理するための手順等)を「営業秘密管理指針」の内容を中心に紹介することを予定している。
 
 
※1 「営業秘密管理指針」および「技術流出防止指針」は、経済産業省ホームページ
<http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html>に掲載している。また、同ホームページには、営業秘密管理指針の内容をコンパクトにまとめたパンフレットに関しても掲載している。
※2 不競法第2条第6項では、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう」と規定している。
※3 ここで取り上げたすべて項目を実施していないと秘密管理性が満たされないというわけではない。「営業秘密管理指針」の「参考資料1 営業秘密管理チェックシート」は、過去の裁判例を踏まえ、管理方法を中心として項目化し、特に重用視されているものについて重み付けすることで、不競法の営業秘密の要件である秘密管理性が肯定される可能性の高い管理を実践しているか否かについて診断するために作成されているので、参照いただきたい。
※4 経済産業省(委託先:株式会社帝国データバンク)「平成20年度知的財産の適切な保護・活用等に関する調査研究,各種主体における営業秘密の適切な管理手法調査研究」
<http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2009fy01/0019931.pdf>
※5 知的財産推進計画は、知的財産基本法第23条に基づき、知的財産の創造、保護および活用のために政府が集中的かつ計画的に実施すべき施策に関する基本的な方針などの事項を定める計画である。
「知的財産推進計画2012」については
<http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku2012.pdf>参照

2009.03.22
隣接専門職からのエール!

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東京土地家屋調査士会
会報編集委員 吉田 百合子

 

 

 昨今のアメリカにおけるサブプライムローンに端を発した世界経済の成長鈍化と、金融危機の影響により、私ども土地家屋調査士を取り巻く環境も、当然のように厳しい状況にあります。貴会の会員の皆様はいかがでしょうか?

 しかし、このような状況下でこそ、中小企業診断士という職業の必要性はますます増してくるのではないかと、感じております。

 事業主の一人でもある私どもも、中小企業診断士の方々を重要なパートナーだと考えておりますので、今回寄稿させていただくことになり、これをいい機会と捉え、土地家屋調査士の広報をかねていい話(嬉しい話)を紹介させていただきます。

 土地家屋調査士は、昭和25年、議員立法により土地家屋調査士法が制定されたことにより、所有者に代わって不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は建物の調査、測量、申請手続または審査請求の手続を主な業とする資格者として誕生しました。

 業務内容としては、権利の対象である不動産(土地・建物)の物理的状況(所在、地番、地目、地積、床面積等)を公示する登記であり、権利に関する登記の前提となるものです。
ちょっと長く、あまり聞き覚えのない名前のため、一般の方は二度聞き返されたり、登記をするということから、司法書士と間違えられたりします(司法書士は権利の登記を行いますが、土地家屋調査士は表示の登記を行います)。

 平たく言えば、仕事を受託して初めにする作業は、机上での書類作成ではなく、現場に赴き、敷地の測量をすることです。

 例えば、境界石を探すため、冬でも汗をかき、泥まみれで穴掘りをしたり、固いコンクリートを毀し、その下にあるかもしれない境界石を探したり(ちょっとした宝探しです)、建物と建物の狭い空間におなかをへこませ入って行ったり、高めの塀の上を伝って歩いたり...。

 そして、隣接者にわかりやすく境界の説明をし、理解してもらい、承諾印を取り付けます。

 このようなハードな部分が終わると、次はソフト部分に入ります。

 図面を作成して、法務局に申請し、正しい登記簿ができ上がってきたら、依頼者に納品します。ここまでやると、個人的には、一から作り上げた作品のような気持ちになります。

 この2面性が土地家屋調査士の醍醐味と言えます。事務所でじっとしているより、動いている方が性にあう方には、とても魅力的な仕事ではないでしょうか。

 さて、そんな仕事とは別に、もう一つ大事な仕事があります。事務所経営です。

 いくら調査士としてしっかり仕事をしていても、経営、経理に疎いと、事務所が立ち行きません。私自身、昨年、とある事務所から独立し、新たに1人で事務所を起こすことになりました。最低限必要な測量器械と現場用車両購入の資金が無いため、区の融資制度を利用し、資金を借りることにしました。

 その際、今後の事業計画を具体的に書面にするよう言われましたが、何をどう書けばいいのかわかりません。そこにおられたのが中小企業診断士の先生でした。

 事業計画の基本から教わり、無事融資を実行してもらうまで、何回も相談し、やっと理解することができました。中小企業診断士という名前は知っておりましたが、具体的な仕事の内容は知りませんでしたので、今回、初めて相談させていただいて、経営に関して、自分でも気づかなかった現状の問題点や、将来のことを数字で考える方法など、会計士とも違う別の面でのアドバイスを受けました。

 最後にいただいた「大丈夫、あなたならやっていけますよ」の一言におおいに励まされました。

 今後も経営を進める上でわからないことが出てきましたら、また、相談に伺いたいと考えております。私事になりますが、よろしくお願いしたいと思います。

 ちなみに私は女性ですが、中小企業診断士にも女性は多くおられるのでしょうか......ちょっと知りたいです。

2009.02.24
中小企業支援を通じて日本を元気に!
 

曽田様.jpg東京都社会保険労務士会

広報委員会副委員長 曽田 究

 社団法人中小企業診断協会東京支部会員の先生方には、昨年で第14回目を数えるに至った「東京の10士業暮らしと事業のよろず相談会」、共に災害復興まちづくり支援機構の構成団体として開催させていただいた「第2回専門家と共に考える 災害への備え 企業復興編」といった東京都全体での活動、また都内各支部でのより地域に根差した活動を通じて大変お世話になっており、初めに厚く御礼申し上げます。
 さて、折角頂いた機会ですので、私共社会保険労務士会の現況を少しばかりお話しさせていただきます。
 先ずは、一昨年来の年金の加入記録問題に関して。この問題が広く報じられた直後に開設された「ねんきんあんしんダイアル」の相談対応要員として、多数の会員が積極的に協力させていただきました。また、その後に設置された総務省の第三者委員会及び各地の社会保険事務所等においても会員が多種の役割を担うことにより、市民の高齢期等の生活に直結し、それ故に関心の高いこの問題の解決に継続して取り組んでおります。そして将来に向けても、法定の年金分野の専門家としてその使命を果たして行くべきところであります。
 次に個別労働紛争の解決に関して。平成13年10月に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、7年が経過しました。厚生労働省の発表による平成19年度におけるこの制度の利用状況は、全国の総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数が約100万件で、この内の約7千件のあっせん申請が受理されています。人事労務管理の個別化、多様化等を反映してか、年度を追う毎に確実に件数が増加しています。この間に社会保険労務士法も改正され、平成19年4月から特定社会保険労務士制度が本格的にスタートし、我々が行うことが出来るあっせん代理業務等の範囲が拡充されました。これと相まって、全国社会保険労務士会連合会では、法務大臣の認証を受けてADRを行う機関である「社労士会労働紛争解決センター」を開設、東京都社会保険労務士会でも開設に向けた準備を進めております。
 また、紛争を未然に防止すべく、平成20年10月以降全47都道府県で社労士会セミナー『ご存知ですか「労働契約のルール」』を開催、東京都社会保険労務士会では、全22支部で個別相談を含めた取り組みを実施したところであります。
 私共社会保険労務士は、お陰様で昨年、法制定40周年を迎えることができました。携わる労働及び社会保険に関する法令に関しても、近年改正や新法の施行が相次いでおります。企業の経営者が良心を持ってさえいれば、そうそう法令に違反することは無いといった時代は、とうに過ぎ去ってしまっています。企業のコンプライアンス(法令遵守)体制における「人」を軸とした部分、しかもそれを単に法律の条文を適用するのでは無く、企業経営にとってプラスに作用するものとして整備しなければなりません。
 経営者の方々から厚い信頼を得ておられる中小企業診断士の先生方と手を携えて、我国の企業数の約9割、労働者数の約7割を占めると言われる中小企業を支援することを通じて、日本をより元気な国にしなければならないと考えております。
 今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

2009.01.29
中小企業の発展を願って
山川会長.jpg  

東京税理士会
会 長  山川 巽

 

 

  

 

 中小企業診断士の皆様には、日頃より10士業で開催している「暮らしと事業のよろず相談会」をはじめ、日常業務においても中小企業の発展を共に願う職業専門家として、ご協力を賜りありがとうございます。中小企業診断士は中小企業の経営・業務コンサルティングの専門家、税理士は税務に関する専門家として、中小企業の発展に共に寄与しており、業務上の関係も深いものと存じます。
 ここ数十年を振り返りますと、乱高下の激しい経済環境の中で、税理士は関与先である中小企業の発展のために税制改正の提言、経営改革のコンサルティング、金融支援の施策などを通じ中小企業とともに時代の荒波を乗り越えてきました。それは、中小企業診断士の皆様方も中小企業の発展を願う気持ちは共通だと思料いたします。
 東京税理士会では、社会貢献事業である税務支援の窓口として「東京税理士会納税者支援センター」を開設しております。これは、東京税理士会の常設機関として広く一般の納税者からの相談事項に専門の相談員である税理士が対応するものであり、税務について市民の利便性に応えるばかりでなく、成年後見制度への対応や、近い将来は「司法ネット」とも連携して、幅広い納税者支援の拠点となっていくものであります。
 文頭で触れさせていただいた「暮らしと事業のよろず相談会」の過去数年の相談件数の実績を見ますと税理士等の「士業単独相談件数」よりも「士業合同相談件数」が増加傾向にあり、また総相談件数も同様に年々増加傾向にあります。これは、相談者の相談内容が多岐に亘っており、各士業の相互協力が益々必要になってきているからと存じます。
 さて、最近の日本経済に鑑みますと、米国の金融市場に端を発する世界的な金融不安の高まりは、わが国の経済活動にも深刻な影を落とし、中小企業診断士、税理士が関与する多くの中小企業においては、融資が滞るという状況に直面しております。
 政府は、昨年8月に「総合経済対策」、10月に「追加経済対策」を取りまとめ、中小企業向けの金融支援の事業規模を拡大しておりますが、金融機関と中小企業との間で貸し渋りや貸しはがしが無くならなければ、その実効性は充分とは言えません。わが国には多数の中小企業が存在しており、国内の全企業数における中小企業の数の割合は、99.7%に達しています。中小企業の衰退は、わが国の経済活動の衰退といっても過言ではないと思います。
 今年も厳しい経済状況が続くことと思いますが、中小企業診断士、税理士が関与する中小企業のために一層の相互協力を行い、中小企業が発展することを祈念しております。

2008.12.24
専門性を生かした中小企業支援

小村氏ph.jpg専門性を生かした中小企業支援

東京司法書士会
会 長 小村 勝

 

中小企業診断士の皆様には、日頃、東京都内の専門職業家10士業で毎年行っております合同無料相談会「暮らしと事業のよろず相談会」や大規模災害時における緊急・応急対策や復興対策を迅速かつ円滑に進めるために専門職業家の連携を目的に設立された「災害復興まちづくり支援機構」の活動等を通じて大変お世話になりまして誠に有り難うございます。

中小企業診断士の皆様が、中小企業の経営・業務のコンサルティングの専門家としてご活躍されていらっしゃるのと同様、私共、司法書士は、会社や法人の登記を中心に、身近な法務アドバイザーとして、法務部などの部署をもたない中小企業等に対し、企業法務に関する様々なアドバイスを行って参りました歴史がございます。

近年、社会を取り巻く法律や手続は、度重なる企業の不祥事や社会情勢の変化に対応するため相次ぐ改正がなされており、コンプライアンス(法令遵守)の重要性は年々高まっております。

このような状況の下で経済活動を行う企業は、様々な場面で法律上の問題に直面する機会が増えたため、これに対する専門家のアドバイスが、益々重要なものとなっております。

私共は、会社法の専門家として法律の改正への対応のみにとどまらず、株主や債権者などへの対応、法的な文書の整備、ストックオプションの発行、株式公開の支援、企業の再編、取引上のトラブルや事業承継等の問題についても、今まで培ってきたノウハウをフルに活用して企業へのアドバイスを行っております。

また、簡易裁判所の訴訟代理権が付与されたことに伴い、企業の代理人として売掛金請求等の事件の訴訟をすることも可能となりました。さらに、商業・不動産の登記申請につきましては、高度情報化社会への流れに伴い、電子証明書を取得してオンラインによる登記申請にも対応しております。

今日の日本国民の高い生活水準は、高度成長期に大企業の繁栄を支え続けた中小企業の努力によって築かれたものとも言われておりますが、現在でも、日本国内で活動している企業の9割以上が中小企業であることから、日本経済におけるその活躍の重要性は疑いようのないものです。

実際、この中小企業の中には、優秀な技術やノウハウを持ち、諸外国から一目置かれている企業も少なくありません。従って、中小企業を支援するという役割は、日本経済の発展、国民生活の向上という観点から見ましても大変重要な使命であると考えます。

サブプライム問題に端を発した最近の景気悪化は、中小企業の経営も圧迫しつつありますが、先ずは、中小企業に元気になってもらわなければ明るい未来は期待できません。私は、「中小企業の元気」が「日本の元気」であると思います。

中小企業診断士と司法書士は、中小企業という共通の顧客に対して、一方は経営と業務の側面から、また一方は法務の側面から、それぞれの専門性を生かしてコンサルティングを行うことができますので、中小企業を支援するには非常に良い組み合わせであると考えます。

今後、益々、煩雑化することが予想される企業活動において、各々の専門分野の企業コンサルタントとしてお互いに交流を深め、連携し、中小企業を支え続けて参りましょう。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

2008.11.28
弁護士会の法律相談事業について

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東京弁護士会
法律相談センター運営委員会委員長 大西 英敏

1.はじめに

 近時、社会が複雑化、高度化、国際化するにつれて、市民の権利意識が高まり、その法的ニーズが増大し、かつ多様化している。そこで、いつでも、どこでも、誰でもリーズナブルな費用で、容易に、適切な法律相談が受けられ、必要があればいつでも弁護士の斡旋を受けられるよう法律相談事業を充実させることが、弁護士会にとって重要な課題となる。

2.東京での法律相談センターの概要

 東京弁護士会では、市民からの法律相談と弁護士の斡旋を行うための法律相談センターが設置され、会館の内外で法律相談を実施してきた。

 さらに2006(平成18)年10月からの法テラス東京事務所を四谷に開設するのに合わせて、同じ建物に弁護士会相談センター(LC四谷)を開設してLC四谷を法律相談センターの中枢とする再編成を行い、霞が関の会館内には小規模の法律相談機能のみを残すことになった。

 ところで、当会が提供する法律相談サービスの内容としては、一般相談のほかに消費者問題、医療問題、労働事件等があり、事案の特殊性・機動的対応等の要請から特別相談を実施し、また、民事介入暴力センター、子供の人権救済センター、外国人人権救済センター等で法律相談・事件斡旋をおこなっている。

 集団的被害者救済が求められる案件については、関係委員会が中心となって一斉相談が実施されることもある。また、弁護士の紹介を必要とする市民に対しては、弁護士斡旋制度、事件の直接受任制度、顧問弁護士の紹介制度が設けられてきた。さらに弁護士へのアクセスを容易にするため、2007年4月から、弁護士会紹介センターが発足した。

 また、LC四谷以外の法律相談センターとしては、クレサラ相談を専門に取り扱う相談センターとして、1998(平成10)年9月に「四谷法律相談センター」を、1999(平成11)年9月に「神田法律相談センター」を、2002(平成14)年3月に離婚・相続等家事問題を取り扱う「家庭法律相談センター」を、2003(平成15)年12月に「錦糸町法律相談センター」をそれぞれ開設した(これらはいずれも東京三会の共同設立である)。

 さらに、当会が設けた池袋、北千住、渋谷の各公設事務所に併設してそれぞれ法律相談センターを開設している(これらは当会単独事業である)。さらに、前記過疎地対策として、2003(平成15)年6月に三会の共同設立で「小笠原法律相談センター」を、2004(平成16)年4月に「大島法律相談センター」を開設し、月1回の法律相談が実施されている。

3.弁護士と中小企業診断士との関わり

 弁護士業務の中で中小企業診断士との関わりをみてみたい。

 まず第一に中小企業診断士は有力な顧客紹介先である。有能な中小企業診断士は多くの事業者のコンサルタントとして経営者の信頼を勝ち得ている。そこで法的な問題が生じた際に知り合いの弁護士へ相談を勧めることが多くなっている。

 第二に中小企業診断士による経営指導は紛争の予防に極めて有用である。弁護士としても紛争予防は重要であり、その際に法律のみならず中小企業診断士による経営のアドバイスが必要である。

 第三に弁護士業務自体も今後の競争が予想されており、弁護士自体も中小企業診断士の皆様のような経営センスが必要な時代を迎えている。

4.最後に

 最近の景気後退にあって経営コンサルタント業務を中核とする中小企業診断士の必要性、重要性はますます高まっている。我々弁護士も第二の倒産の波を受けつつあるが、国や自治体も含め我が国の官民の財政の健全化、豊かさの再構築の為にお互い力を合わせていきたい。

2008.10.29
士業間のより深い交流を!

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日本公認会計士協会

東京会副会長 野崎 一彦

 

 

 

 

 

 

 

 中小企業診断士の皆様には、私共が当番会となった平成19年9月29日(土)の「10士業よろず相談会」におきましてご協力賜りましたこと、また本年5月20日(火)の貴会の総会懇親会にご招待いただき誠にありがとうございました。

 日本公認会計士協会東京会は、日本公認会計士協会の地域会(支部)として関東財務局の管轄地域内(1都9県)の公認会計士・監査法人等を会員・準会員として成りたっております。従ってカバーする地域が東京都だけでなく、関東甲信越と広範囲になっています。

 さて、中小企業診断士の皆様と私共公認会計士の業務に共通する最近の話題として、国際会計基準の導入問題があります。アメリカの証券取引委員会は本年8月27日に、アメリカ企業が国際会計基準を採用することを認める計画案を承認し、日本では、国内の会計基準を作る民間組織「企業会計基準委員会」が平成23年6月末までに、日本独自の会計基準を共通化する準備を進めております。税制の調整や中小企業の採用などにおいて課題があるものの、中小企業会計基準への国際基準の導入は不可避と思われます。

 会計基準が欧米型にさらに近づこうとしている中、我々公認会計士は監査や税務業務のみならず、コンサルティングや企業内の経理などの業務に関わる会員が急激に増大し、業務の面においても欧米型に近づきつつあるのが最近の現状です。

 コンサルティング業には境界がなく、対象会社の規模も業務内容も多様であり、ケースによっては質の異なった専門家を集合して活用しなければ解決できなくなってきており、そのような状況は社会の高度化によりさらに増大するものと考えられます。

 我々公認会計士の中には、中小企業診断協会の会員になっている会員もおり、皆様と共に中小企業に対する経営の診断及び経営に関する助言という業務に関わっていますが、企業を取り巻く環境がますます複雑多岐になっている状況においては、より深い専門的能力が要求されるのみならず、専門家の能力の結集が要求される時代が到来したと言っても過言ではないと思います。

 日本公認会計士協会は自主規制団体としての機能をさらに強化するため、会員の研修制度の義務化や会員の監査業務のチェックを実施して信頼の回復に努めております。

 中小企業診断士の皆様も社会の信頼の確保は常に命題となっていることは伺っておりますが、専門家としての業務提携は言うまでもなく、士業が専門家として社会の信頼を確保するためには、研修会の講師派遣や研究会をより活発にするなどの士業間の交流を強化しなければならないと思います。

 社会の高度な要請に応じるため、中小企業診断士の皆様とさらに交流を深めて参りたいと考えております。

2008.09.30
弁理士と一緒に知的財産権の活用をしませんか!

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日本弁理士会関東支部副支部長
東京委員会委員長 吉田 芳春
 
 
 
 
 

 私は、日本弁理士会関東支部副支部長で東京委員会委員長の吉田芳春です。
 関東支部は1都7県で構成される日本弁理士会の支部です。関東支部の会員数は約6,000名で、うち約5,000名が東京都在勤です。
 東京委員会は、「?他団体との協力関係の構築・連携強化」「?中小・ベンチャー企業への支援活動の取り組み」「?会員に対する他団体の事業・サービスの紹介」「?外部への東京委員会の活動の紹介」を活動方針に掲げる、設立3年目の新しい組織です。
 ここで、知的財産権は、人間の知的創作活動によって生み出されるアイディア、技術、表現などを保護するために創作者に与えられる権利をいい、産業財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権・国際出願)や著作権などを指しています。
 わが国は、小泉内閣から国際競争力強化のために知的財産推進計画を続行し、知的創造サイクルの実現化を図っています。知的創造サイクルは、研究開発により人間の知的創造を促し、知的創造による結果を特許権等の出願をし、特許権等の権利設定を行い、事業に特許権等を活用をして利益をあげ、再投資する循環システムです。弁理士は、知的創造サイクルにおいて、特許権等の出願の代理業務が主となっており(弁理士法第4条)、設定後の権利活用の業務が従となっています。
 また、弁理士は、業務の約80%を大企業からの依頼に頼っています。最近では、中小企業やベンチャー企業の支援のために注力している弁理士が増え、中小・ベンチャー企業における知的資産経営を支援しだしているようです。
 弁理士と中小企業診断士とがタッグを組んだ経験を紹介します。中小企業診断士が経営の診断をし、弁理士が特許権等の重要度や広さ等を分析し、競業他社の特許権等との対比に基づく特許マップを作成したうえで、攻め込める技術分野を示し、これに基づいて中小企業診断士が経営の助言を行いました。
 東京委員会は、上記の通り、中小・ベンチャー企業への知財支援を活動方針に掲げているところ、中小・ベンチャー企業の知的財産権の活用について貴支部の先生方と一緒に活動できる機会があるものと考えています。ぜひとも貴支部と東京委員会との顔合わせからスタートできればと願って、寄稿とします。

※図をクリックすると拡大できます。
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2008.08.29
共に手を携えて行きましょう!

 

20080829_column_shiina_001.jpg東京都行政書士会
会 長 清水 勝利

 

 

 中小企業診断士の皆様、初めてご挨拶申し上げます。他士業の会の会報誌に寄稿させていただくのは初体験でして、どんなお話をして良いのか少々戸惑っています。

 聞くところによりますと、この10月に実施を予定されている、都内十士業の広報担当者による、第14回「暮らしと事業のよろず相談会」の運営委員会で、本会もお仲間として皆様のお世話になっている由、大変ありがとうございます。今後ともお引き回しの程お願いいたします。

 さて、同じ士業でも各々その役割は大層違います。

 各士業の法律的違いをここでお話するつもりは全くございませんが、例えば我々行政書士は、まず「定型的書類の作成」が多くございます。これは申請を受け付ける役所がその内容を審査するのに、別々の書式で、独創的な内容では効率的でないからと思われます。

 これに対して中小企業診断士(以後、診断士と称させていただきます)の皆様は、報告書式は定型的かも知れませんが、肝心業務の「経営改善案」(小生はこれが肝心業務と解釈していますので)は決して定型では、対応が不可能であると推察します。

 つまり、クライアントは、各々独特の歴史、人財、商財、商圏等々を抱えているからです。これらを総合的に収集・判断し、独創し責任ある献身的なコンサルティングをしなければなりません。

 このように考えると、事務的な行政書士と独創的な診断士とも言えます。

 反面、我々行政書士は「事実証明、権利義務に関する書類作成」と業務独占(他の法律で制限されている業務を除く)を認められています。

 診断士は名称独占です。これは前述の「定型的事務的業務をするか」、「独創的献身的業務をするか」の違いであると考えます。

 行政書士の事務的業務には独占を与えて管理(官が責任を持てる)ができるが、診断士の独創的業務には官が責任を持てない、これが名称独占の理由であろうと考えます。

 その結果、診断士ではない「経営コンサルタント」も生まれる余地は多分にあります。その分競争は激しいかもしれませんが、国家資格を持つ診断士であるが故の献身的で的確なコンサルティングが期待されるし、また応えてもいらっしゃる。小生は心から敬意を表します。

 我々行政書士も「静」から「動」へ。つまり、机上の書類作成から、外に出て、対面のサービスをと考えております。現に、行動し発言しトラブルを事前に予防する業務へと転換を図りつつあります。書類作成業務をベースに民から官へと官から民への橋渡し、さらに民と民の間に立って業務をこなす。こんな行政書士でありたいと願っています。

 診断士の皆様とは、団体同士から個人同士に至るまで末永く深いお付き合いを希望しますので、このつたない寄稿をご縁に、よろしくお願い申し上げます。

 素晴らしいご縁をありがとうございました。

2008.07.26
専門家の責任

20080726_column_sagawa_01.jpg社団法人東京都不動産鑑定士協会
会長 緒方 瑞穂

中小企業診断士のみなさまには、日頃より10士業よろず相談会をはじめとして、日常業務におきましてもご協力をたまわりありがとうございます。

 社会が高度に発展するほど、隣接周辺の専門分野はお互いに知識を共有する機会が深まります。従来、ひとつの専門能力で解決できた案件は少なくなり、他の専門家の判断を参考にする事例は今後とも増加していくものと思われます。

 企業の不動産評価等において、中小企業診断士の先生方のご意見をうかがう場合もあると思いますので、よろしくご指導を賜りますようお願い申し上げます。

 一方、社会経済が発展し案件が複雑になるほど、専門家の社会的責任は重くなります。不動産鑑定士は「不動産の鑑定評価に関する法律」や行為規範である「不動産鑑定評価基準」によって専門家責任を強く要求されていますが、昨今、これら法定の責任を果たすだけでなく、さらなる倫理向上や説明責任も求められています。説明責任やアカウンタビリティはどのような専門職であれ誠実に実行しなければならないものであり、責任を果たせるからこそ専門家として社会的に認識されているのです。

 不動産の鑑定評価では、日々多くの情報を収集します。情報が瞬時にめぐる時代となれば、昨日の情報はすでに更新されて古びてしまい、誤った内容になっていることもあります。何が正しい情報か、その見究めをすることが不動産鑑定評価の業務の出発点ともいえるでしょう。そのための知識を深めるとともに、技能を高めるために(社)東京都不動産鑑定士協会では、時宜を得た課題を採用して定期的に研修会を開催しています。

 専門家は知識の上に安住するのではなく、常時アンテナを高く張って、みずからの能力を高める努力を続けていかなければ、社会の信頼は得られなくなりました。近年、社会的な責任はその及ぶ範囲が拡大しているように思われます。たとえば何の事故も病人も出さなかった食品の「賞味期限切れ」について多額の費用を使って商品を回収した事例を見ても、企業の社会的責任が広く重くなっている傾向がわかります。

 企業だけではなく、専門家の責任も同じではないでしょうか。専門家は自らの判断について、合理的な根拠を示して説明できなければなりませんし、説明できても誤った判断によっていれば責任は免れません。

 今後とも時代が進むにつれて、私たち専門家はお互いに協力、協業しあう局面が増えていくと思われます。その際、重要なことは専門家責任をどのように考えるかです。

 東京都不動産鑑定士協会におきましては、会員が専門分野について透明性をそなえた説明責任を果たせるよう、常より研鑽していくことを考えています。高い倫理観をもって業務を果たすことこそ、より高度な協業化を進める一要因になるものと思います。

 いっそうの社会貢献が出来ますよう、専門家責任のあり方を自覚しつつ、中小企業診断士のみなさまと連携、交流を深めて参りたいと考えております。

2008.03.28
東京支部ホームページリニューアルによせて

東京支部ホームページリニューアルによせて

                                         東京支部副支部長 中村正士

新たな事業年度がスタート
 東京支部広報部を中心に19年度から進めてきました東京支部ホームページがリニューアルして平成20年4月1日、新事業年度に併せてスタートの運びとなり大変嬉しく思います。先ずはおめでとうございます。会員同士や会員と支部の架け橋として、より使いやすいようにデザイン面、情報の見やすさ、簡潔さに加えてコンテンツの充実をはかるための工夫がされております。また、運用をしやすいブログツールを活用したシステムを採用しコストも抑えて制作していただきました。4月1日以降、ご覧になっていない会員には是非ともサイトを開いてみてください。

会員のみなさんの活用を
 会員の皆さんのホームページです。支部からのお知らせ、コラムの掲載、東京支部の紹介、研究会・懇話会・同好会の紹介をはじめ資格更新情報,eニュース、そして外部へ対しても経営者の方へビジネスマッチングの機会を提供、また、これから中小企業診断士を目指す方、東京支部に入会したい方へのメッセージ等、盛りたくさんですが興味のあるところから入って、大いに活用し役立ててください。

忌憚のないご意見を
 実際にサイトに入っての忌憚のないご意見をお聞かせください。皆さんからいただいたご意見をもとに、よりよいホームページに進化させてまいります。会員のご支援・ご協力で大きく育てていただきたいと思います。

サイトに期待する
 リニューアルオープンしたばかりです。これから会員の声を受けてコンテンツの充実や使い勝手を改良していただき、東京支部の窓口、交流の場、情報発信基地として会員の満足と外部へも積極的に発信し診断士の知名度と支部組織のPR効果など、ホームページを支部の活性化を進めるためのツールとして活用されるよう期待しています。 

 

 おわりに、今回ホームページリニューアに携わった広報部や関係者のみなさまのご努力に深く感謝申し上げます。

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