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2018.11.29
「女性・若者・シニア創業サポート事業」を通じた支援機関との連携について

経営支援機関サポート研究会
兼松万輝雄 加賀城剛史

1.はじめに
 経営支援機関サポート研究会(以下、当研究会)は、前身の東京都企業経営力向上センター(かつての城東支部所属 研究会)の発足(2010年11月)から始まり、その後に東京協会所属の研究会に改組し、現在に至っている。
 前身の東京都企業経営力向上センターの発足時から、実際の現場で実践することを大方針として活動してきた。いわば、「行動しながら考える」研究会である。
 今回、誌面を戴き、研究会説明に際して、当研究会の「行動しながら考える」活動の一端を紹介する。さらに、中小企業診断士が将来取り組む活動に関しても、考察となるよう説明する。

2.行動内容
 当研究会の前身の研究会(東京都企業経営力向上センター)の2010年11月の発足を前にした夏から、東京都東部を中心とした金融機関との協力関係を構築すべく、20先程度の地域金融機関への訪問を繰り返してきた。
 地域金融機関との協力関係の構築を考えた理由は、「行動しながら考える」研究会を実現するために、「業務受注のエンジン」を作るためであった。また、筆者(兼松)の前職が金融機関勤務であったことから、金融機関の企業支援にかかる情報があり、かつその職員の方々のものの考え方・行動様式を少しは理解できたことがある。
 一方で、協力関係の構築は、地域金融機関に固執したものではなく、日本政策金融公庫、大学、図書館、商工会議所・商工会、地方自治体、職業能力開発センターなど、さまざまな機関について、マインドマップを作成して関係づくりを検討し、具体的に働き掛けを行っている。

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 基本的行動様式として、さまざまな協力関係づくりを行いつつ、その協力関係先の営業・とり組みに貢献することを旨としている。
 このことは、後に説明する「女性・若者・シニア創業サポート事業」(以下、当事業)のほか、あらゆる事業成立に大いに役立っている。

3.「女性・若者・シニア創業サポート事業」での展開
3-1 当事業の概要
 当事業は、いっそうの創業促進に向け、都内37の信用金庫・信用組合と東京都が連携して、女性や39歳以下の若者、55歳以上のシニアといった、今まで創業者層として着目されてこなかった創業者へ向け、支援するものである。都が東京都信用金庫協会、東京都信用組合協会に対して、融資原資と事務費を補助、これら協会は地域創業アドバイザーを設置し、信金・信組と連携して、事業計画のアドバイスやハンズオン支援を実施するものである。

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 具体的なスキームは下記の通り。
1)2協会から個々の信金・信組に融資原資を無利息で預託。融資がデフォルトした場合、相当額について預託金の返還を免除し、協会がリスクを負担する。(返還免除の金額は預託金総額の5割を限度)
2)預託金を原資として、信金・信組は創業者に対し、固定金利1%以内、無担保、返済期間10年以内(据置期間3年以内)長期据え置きによる融資を実行する。
3)融資対象は、女性・若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)で創業の計画がある者または創業後5年未満のもの(NPO法人なども含む)
4)事業終了後(実施期間20年)、融資原資の残額を都に返還。


3-2 当事業を取り巻く創業環境
1)金融機関の立場からの創業ニーズ
 図表3に示すように、少子高齢化や事業承継時に廃業を決意する事業者の増加で、地域金融機関の主たるお客様である中小企業者数は、1999年(平成11年)の483万社から2014年(平成26年)の380.9万社にまで減少している。
 金融機関は既存顧客の継続のための「事業承継支援」ならびに、新規顧客としての「創業支援」を重視している。

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2)他の創業融資との違い
 女性・若者・シニア起業者が創業時に金融機関からプロパー融資を得られる可能性が少ないため、民間金融機関から融資を受ける場合、一般的には、保証協会の保証を受けたうえで、各都道府県や市区町村のあっせん融資を活用する。当事業とあっせん融資の大きな違いは、あっせん融資は、区の経営相談員の助言、信用保証協会の信用審査、金融機関の審査と3段階にわたるステップを踏む。そのため、事業スキームが複雑な創業事業の場合には、長期の審査となる。これに対して、本事業では、実質的にはプロパー融資であり、事業計画の策定の部分では、当社のような一般アドバイザーの助言が活用できるため、短期間で済むメリットがある。
 創業者は法人として創業する場合には、法人登録ページに公開されるが、個人事業として開業される場合には、公表されないために、営業エリア内の個人事業での創業者を発掘できない面もある。こうしたなか、創業者に近い立場にいる一般アドバイザーからの紹介が活用できる本事業の活用は、新しい創業支援の形といえる。

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3)創業支援ニーズ
 従来、創業支援については、セミナーを含む「創業計画策定」並びに「創業融資支援」が大きな比重を占めていた。しかし、図表5に示すように創業からの生存率では、法人ベースで1年以内79.6%、5年以内52.6%*であり、個人事業所ベースで1年以内62.3%、5年以内25.6%*となっている。こうしたことから、創業後5年間の支援が非常に重要であるといえる。
 *5年後の生存率については、年次経過ごとの生存率より、下記計算しております。
  会社ベース    79.6%×87.6%×90.0%×91.0%×92.2%=52.6%
  個人事業所ベース 62.3%×75.9%×79.5%×81.2%×83.8%=25.6%

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 創業後の支援については、販売先確保や人材確保育成といった、実務知識にとどまらない経営者としての知識知見の活用が求められる他、経営知識に対するニーズもまた高い。
 当事業では、ハンズオン支援として、経営状況の把握にとどまらず創業者が課題とする、販促による集客や人員拡大時の組織形成・教育等の相談にも対応できるようになっている。

3-3 当該事業展開の経緯
 2014年9月から、当研究会の法人組織(合同会社東都経営力向上センター)は、「女性・若者・シニア創業サポート事業」(東京都事業)の「地域創業アドバイザー」として認定されている。このきっかけは、筆者(兼松 万輝雄)が江東信用組合の取引先にかかる経営改善の顧問として、取引先の経営改善に相応の成果を上げたことで、東京都に推薦して戴いたものである。
 これにより、当研究会は、当事業の地域創業アドバイザーとして、案件を取り扱える立場を得ている。当事業の業務推進にあたっては、従来、協力関係にあった金融機関に加え、さらに、当事業に参加している多くの金融機関との協力関係の構築も得やすい状況を有することができている。
 当方としては、金融機関との関係構築に関しては、当事業を推進するために、案件を紹介していただく、という立場に安住することなく、むしろ金融機関の融資の増強に貢献し、取引先の経営の改善に貢献するなど、常に金融機関の営業に役立つことを考えながら、行動する意識を有している。こうした意識・行動により取引が広がり、当該事業でお付き合いする金融機関数は、2018年9月現在で18信金・信組に及んでいる。

3-4 当事業の研究会での業務推進
 当事業の業務推進について、少し触れる。
 まず、創業者(創業5年未満を含む)の初めの支援では、創業者の作成する事業計画書の内容の相談に乗り、アドバイスを行いつつ、最終的には、その「事業運営の確からしさ」を評価して、金融機関に書類を提出する。
 金融機関の融資が実行される場合、その後に「ハンズオン支援」を行う。これは、地域創業アドバイザーが行う経営アドバイスである。年度に3回、5年間継続で行う。これは、事業停止の多い創業から5年間を支援するもので、「女性・若者・シニア創業サポート事業」の大きな特徴である。
 当研究会としては、「ハンズオン支援」にて、日々の経営数値の確認様式を作成して差し上げるとか、新たな販売先の開拓にかかる情報の提供や提案を行うなどで支援を行なっている。
 この「ハンズオン支援」に関連して、「ハンズオン支援報告書」を通じて、ヒアリング内容や今後の事業にかかる展開、アドバイス内容を記載して、金融機関に送付している。こちらとしては、単に報告書を送付するだけに留まらず、必要に応じて、連絡が必要な事項や情報を的確に連絡するために、報告書の送付を待たずに金融機関の担当者に電話などで連絡することも行っている。

3-5 当社支援事例の紹介
 当社が「女性・若者・シニア創業サポート事業」で支援した創業案件を紹介する。

1)女性創業者による活用事例
 NPO法人として小規模保育園の開業資金のため、当事業を活用している事例である。補助金による確実な収益が見込まれているが、創業資金4,500万円と非常に多額であり、事業1,500万円、公庫1,000万円の協調融資である。
経緯     :創業者が金融機関に相談、当社に計画書策定も含めて支援を要請。
支援内容   :設備資金必要額(内装、設備)の見直し、収支計画書の策定
経過     :10月下旬相談、12月末当制度融資、1月公庫融資実行、4月保育園開業
開業後の経過 :年間3回のハンズオン支援、2018年度で4年目を迎える。ハンズオン支援では、保育業界の今後の需要から新規保育園の開業時期とその資金管理について支援をしている。
 
2)若者(39歳以下)創業者による活用事例
 飲食チェーン店で経営企画、オペレーションを経験し、販促コンサルティングで個人事業を立ち上げた事業者が、半年後に弟のコックとともに都内に空中店舗を開業させた事例である。
経緯     :顧客より紹介を受けた。当初、あっせん融資を考えていたが、店舗契約が迫っており、当制度を適用しうる金融機関へ相談した。
支援内容   :創業計画書並びに収支計画書の策定
開業後の経過 :年間3回のハンズオン支援で2018年度は2年目である。内容は、補助金申請相談や2店舗目の開業時期によるアドバイス。

4.おわりに
 当事業に関わることで、当研究会が得た効果を説明する。それは、さまざまな外部の団体・企業との新たな繋がり・連携である。
 例を挙げますと、多くのベンチャー企業のCFO(財務担当責任者)を務める方、いくつかの税理士法人の方々、各種の中小企業団体の方々などである。
 こうした方々との繋がりは、当事業にかかる連携だけに留まらず、さまざまな派生事業を検討・展開する契機を与えてくれるものである。

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