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2019.04.27
中小企業海外展開支援講座 カリキュラムの開発

東京協会 ワールドビジネス研究会
三上 彰久

1.カリキュラム作成に至る基本的な考え方
(1)フレームワークとしての「中小企業の海外展開支援業務と知識体系」
 社会や経済の国際化により、大企業のみならず中小企業においても、海外事業展開の拡大・高度化が求められている。中小企業診断士に求められる業務や知識も、独立・企業内を問わず多様化しており、海外展開に関しても、より広くかつ深い国際業務知識や深い専門性が必要とされている。
 これを受けて中小企業診断協会では、2017年4月に「中小企業の海外展開支援業務と知識体系」(以下「知識体系」) を取りまとめたが、その作成はワールドビジネス研究会が担った。
 しかし「知識体系」は海外展開支援において知っておくべき知識と業務を体系的に分類・整理したフレームワークを提示したものであり、すべての診断士が「知識体系」をそのまま使って支援業務を行えるものではない。

(2)中小企業の海外展開を支援する人材を養成する環境の整備
 中小企業診断協会傘下の各協会では、国際活動に関するさまざまな研究会、国際部等が中小企業の国際化支援のための研鑽活動、個別の支援活動を行っている。理論政策研修においても国際化がテーマとして取り上げられるケースも増えている。
 しかし、国際化支援を行う、または行おうとする中小企業診断士に対して、体系的な知識の習得の機会とメニューが十分提供されている環境とはいえない。

(3)体系的な講座を設置・運営
 そこで、「知識体系」をベースとして、企業の海外事業展開の支援をする場合に中小企業診断士に必要とされる知識・ノウハウを提供することを目的とし、体系的な講座を設置・運営することは非常に価値のある活動であることをワールドビジネス研究会の活動を通じて認識するにいたり、カリキュラム(体系的に組織した研修の企画)を作成することとした。


2.今回開発したカリキュラムのポイント

(1)受講対象者
 受講対象者として中小企業診断士を設定した。企業内・独立は問わないが、これから 国際ビジネス支援に取り組んでいきたい方、国際ビジネスに興味のある方を念頭においた。そして、情報収集、販路開拓から直接投資による海外進出まで、企業の海外展開の各段階における支援に際して、中小企業診断士として必要な知識とノウハウを体系的に習得できるような研修体系の構成を検討した。

(2)「知識体系」の13の業務・知識に準拠
 「知識体系」は、階層化することによって業務の内容を深化、分化させている。第1階層として、OS01からOS13まで13の業務、知識を<図表1>のようにグループ化している。すなわち、OS01からOS08までは事業開始前に必要な業務、知識であり、OS10からOS12は事業開始以降に関連する事項である。また、事業全体として常に考えておくべきものとして、OS13としてリスクマネジメントの項目を設けている。今回開発したカリキュラムは、これらの項目に準拠するものとした。

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(3)「知識体系」のカリキュラムへの展開
 この「知識体系」を全10回の連続講座として展開するため、マクロ的な知識を解説したのち、商社経由輸出→直接輸出→Distributor 経由輸出→現地駐在員事務所開設→現地支店設置→現地販売会社設立→現地生産への進出、といった典型的な海外展開の流れにそって、ヒト、モノ、金、情報、書類の流れがスムーズに理解できるカリキュラムの構成を行った。
 カリキュラム策定にあたっては「知識体系」の第2階層(各論) をベースとして、各項目を縦軸、第1回から第10回までの講義回を横軸に展開した<図表2>のようにマトリックスを作成し、各回で実施する講義内容にモレ・ダブリのないように留意した。ただしダブリについてはむしろ重要事項としてとらえ、むやみな重複解消は避けることとした。

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(4)直接投資を重視
 海外展開のハイライトとなる直接投資に関する部分では、顧客企業のビジョン・ミッションも取り込んだ「支援企業分析と事前準備」「ビジネスモデルの具体化」「事業化調査」「事業実施決定」「拠点設立」「現地の具体的情報」を一連の流れとして、第3回講義・第4回講義で6コマのパッケージとして構成している。その中に、F/S作成や事業開始のために必要な「インフラ」「労働市場」「社会環境調査」も包含するなど、他に例を見ない構成とした。

(5)リスクマネジメントの重要性を強調
 海外展開において重要なリスクマネジメントは、3コマの講義を通じて事例も含めて徹底的に理解を深めるように留意した。

(6)ワークショップの導入
 ワークショップ形式を随所に取り入れ、進出計画書の作成を学ぶことができるような構成とした。最終回では与件事例企業の進出事業計画のプレゼンと講評を行う。

(7)カリキュラムの具体的な内容
 文末の<図表3>を参照。


3.期待される効果

 中小企業の海外展開支援に必要な基本知識を身につけた中小企業診断士を、年間10名から20名養成する計画である。修了者は引き続き中小企業診断協会にて海外関係の研究会等で自己研鑽を重ねるとともに、JETRO、JICA等のプロジェクトや公的機関と協力することも含め、わが国中小企業の海外展開支援に貢献することが期待できる。


4.今後の予定・課題

(1)このカリキュラムをベースにした全10回の連続講座を、2019年6月に開講予定である。

(2)各回の講義の具体的な内容(以下、「シラバス」という)の詳細までは定めていない。それは各回を担当する講師の創意工夫の余地を残すとともに、受講生のレベルに柔軟に対応できるようにするためである。

(3)実際の講義では講師陣は海外事業の経験の豊富なメンバーを中心に厳選し、各コマには複数の副講師がサポートできる体制をつくる。また、講義には講師が直接体験した事例も多く盛り込み、より具体的で理解しやすい内容とするべく組み立てるべく準備する。

(4)当面は中小企業診断士を対象として実施するが、「知識体系」をベースとしてカリキュラムを設計しているため、受講生の知識レベル、業務経験に応じて講義のレベルとボリュームを柔軟に調整することが可能であり、将来的には講座の全体ないし一部の講義を公的機関や民間企業等へ展開することも視野に入れている。

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