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2019.05.29
商店街Webサイトリニューアル による活性化

商店街Webサイトリニューアルによる活性化

Cの会 坂東 隆哲

1.当研究会の活動内容
 Cの会は、1980年代から活動していたコンピュータ研究会のサブ研究会として、1991年に活動を開始した。過去の代表的な成果には、1998年の診断士三次試験(現:実務補習)用・財務諸表帳票EXCELシートの作成と販売(当時は「メソトロジィ研究会」)、2005年企業診断 「ケータイ販促のあたらしいビジネスモデル」特集記事執筆、2006年 中小企業診断協会 理論政策更新研修「携帯電話活用の新しいビジネスモデル」講義、2012年の基本情報処理技術者試験スマホアプリの作成(販売:(株)オレンジクリエイト)などがあり、変化の大きいコンピュータ・IT業界に対応して、その活動内容もフレキシブルに変化させてきている。近年は、有料経営情報サービス「JRSニュース」に提供する原稿の執筆や、IT・IoTを活用した経営についての研究とコンサルティングの実践を主な活動内容としている。

2.クライアント概要
 広尾商店街振興組合は東京都渋谷区広尾にあり、約170の組合加盟店から構成されている。街路灯などの通常の管理業務に加えて、鮪の解体ショーをメインイベントとする「大鮪まつり」や、物販・飲食の提供・ライブ演奏を中心とする「広尾フェア」などの催事の企画・運営を行っている。昨今、催事として全国的に人気を博している鮪の解体ショーは、広尾商店街の「大鮪まつり」が先駆けという説もあり、毎年、大勢の来場者を集めている。2007年にWebサイトを開設、2011年からは広報誌「Hiroo walk」を半年刊で発行中など、情報発信も積極的に行っている。従来より、中小企業診断士のグループにて、催事の交通量調査などの支援を行っている。

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3.ヒアリングと課題の抽出
 催事での交通量調査を行うなかで、商店街の運営について相談を受けたため、商店街全体としてどのような課題があるのか、理事らにヒアリングを実施したところ下記5点の課題が抽出された。

(1)催事の来場者数増と広告宣伝費削減
 大勢の来場者を集めている催事であるが、近年は伸び悩み傾向であったのに対し、販促に直結するため、加盟店舗からはさらなる来場者増を求められていた。一方、チェーンストアなど、本部方針で商店街振興組合に加入できない店舗が増え、加盟店舗数が減少傾向にあるなか、折込チラシの配布などの広報宣伝費用は従来と変わらない費用が発生しているため、その負担感が増しており、削減も求められていた。

(2)Webサイトの維持管理
 2007年に開設し、当初は活発に利用されていたWebサイトであるが、管理者の入れ替わりなどにより更新が滞っており、古い情報がそのまま掲載されていることによるトラブルも発生していた。また、コンテンツが更新されないため訴求力が低下し、閲覧者数も減少していた。さらに情報の更新にはWebサイト制作会社に、随時作業依頼する必要があり、そのたびに費用が発生することも拍車をかけていた。

(3)加盟店舗への情報伝達効率化
 組合から加盟店舗への、各種事務連絡や支援事業などの情報伝達は、理事が紙媒体の資料を持参して各店舗を回るという、非常に手間のかかる手段をとっており、効率化による負担の軽減が求められていた。

(4)加盟店舗の人材不足解消
 近年の人手不足は、中小零細・飲食店が多い商店街では特に深刻である。求人広告を出すのも費用の負担が大きく、また仮に広告を出しても全く応募がない場合もあり、その協力を組合としても求められていた。

(5)外国語・インバウンド対応
 広尾周辺は従来より外国人の顧客が多く、特に米国人と英国人の人口は、広尾商店街がある渋谷区と、隣接する港区・世田谷区で、東京都のTOP3を占めている。また、最近はそれに加えてインバウンドの観光客が増加しており、その取り込みが求められていた。

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4.対策の立案
 広尾商店街の外部環境として、渋谷・六本木・恵比寿に隣接している、広尾ガーデンヒルズ等の高級集合住宅が周囲に点在している、近隣に聖心女子大学や広尾学園、麻布高校などの学校がある点が挙げられる。そのため客層は高所得層・若者が多く、スマートフォンの利活用率が高いと推測された。よって①スマートフォン向けサイト、②組合でコンテンツが更新可能なCMS(WordPress)の利用を軸としたリニューアルを行い、対策とする方針とした。

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5.Webサイトリニューアルの実行
 Webサイトのリニューアル(実質的にはドメイン引継ぎのみで、ほぼ新規構築)は制作会社に依頼したが、それと並行して必要な各種作業の支援を行った。

(1)加盟店情報収集
 更新が滞り、情報が不正確となっていたため、営業時間などの店舗情報を改めて収集する必要があったが、顧客層とは正反対に、組合加盟店舗は一部を除いて全くといって良いほどIT技術の利活用が進んでいない。そのため、情報収集方法・手順の立案も大きなポイントとなった。具体的には、Webフォームだけでなく、電子メール、FAX用のフォーマットも作成・配布するだけでなく、全店舗の情報収集には電話や直接訪問によるヒアリング手順も必要であると考え、事前作成した。このデジタルとアナログの橋渡し的なところも、診断士の知識や経験が活きたところであると考える。

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(2)コンテンツの作成・更新
 Webサイトがリニューアルした後は、実際の閲覧者を増加・維持するための施策が欠かせない。商店街の客層から考えると、広告を使って安易なプロモーションを行ってしまっては高級感を損ない客離れを招きかねないため、いわゆる「オーガニック」な施策としてコンテンツの更新頻度を向上・継続できる仕組み作りを目指した。具体例としては運営チームメンバー持ち回りでの日記の作成・投稿や、近隣の学校・学生と連携した商店街紹介記事の作成などを行っている。これらは、実際にWebサイト来訪頻度を増やすだけでなく、SEOの効果もあると考えられる。

(3)流入経路の拡充・各店舗独自のWebサイトへの誘導
 リニューアル前まではWebサイト自体のプロモーションを行っていなかったため、検索流入と直接流入(ブックマークなど)のみであったと考えられる。催事の来場者を逃さないために、商店街に掲示するポスターへWebサイトURLのQRコードを印刷したり、SNSの活用としてFacebookページの開設と更新したコンテンツのシェア、Instagramへの催事写真の投稿など、投稿流入経路の拡充を図った。ただし、運営リソースの観点からも、SNSはあくまでWebサイトの流入経路としての位置づけであり、SNSのコンテンツ拡充は現状行なっていない。
 また、商店街Webサイトとしては、それ自身の閲覧者数を増やして催事の集客などに活用するのも重要であるが、最終的には各店舗のブランディングや売上に結びつくことが必要である。そのため商店街Webサイト上の各店舗情報は、商店街としてのポータル性や一覧性として必要な部分に絞り、詳細情報の提供や販促は各店舗独自のWebサイトで行ってもらうことを基本方針とした。(ただしWebサイトを持たない店舗のために、ある程度まではコンテンツを増やすことも可能としている。)各店舗独自Webサイトへの誘導のために、先日の日記などのコンテンツに、店舗の商品やサービスを積極的に登場させるようにしている。

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6.成果
 Webサイトのリニューアル効果として、閲覧者数は3~4倍に増加した。その結果、催事1回あたりの折り込みチラシ広告費約40万円を削減してコストダウンしながらも、催事(「大鮪まつり」と「広尾フェア」)の来場者数は図6のように増加傾向にあり、実際のビジネス上の効果も得られていると考えられる。(ただし天候や近隣地域の催事の影響などによる変動も大きい点と、Webサイト以外の施策も実施されているため、純粋なWebサイトの効果だけを示すものではない。)しかしながら、ユーザーの属性の分析と、実際に商店街に来訪した顧客との相関などを調査できていない点は、課題である。

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 またWebサイトにアクセスする端末を分析すると、下記のとおり約7割がモバイル端末からのアクセスとなっており、当初の想定通り、スマートフォンが多いことがわかる。さらに、モバイル端末のうちの64%がiPhoneであり、これは日本全体のiPhoneのシェアとほぼ同等であり、高所得者が多い広尾としては、少し意外な結果となっている。これは、近隣の学生の割合が比較的高いためだと考えているが、上述の通り、今後ユーザー分析により明らかにしていく必要がある。

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7.今後の展開
(1)求人広告の活性化
 商店街が抱える慢性的な問題である求人(人手不足)の解決のために、組合加盟店舗の求人広告を掲載し、その掲載料収入をWebサイトの運営にあててさらなる閲覧者増を達成し、商店街のさらなる活性化を実現するなど、Webサイトを中心としたスパイラルアップの仕組みを構築すること目指している。

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(2)インバウンド対応の拡充
 Googleの自動翻訳機能による多言語対応実施しているが、アクセスを分析したところ外国から/外国語OS端末からのアクセスはほとんど得られていない。検索エンジン上の順位はそれほど悪くないため、コンテンツに問題があると考えている。そのため、近隣の学生・サークルと協力して日本のカルチャーを外国語で伝えるものや、外国人にランニング/ジョギングの人気が高いことを利用して、広尾商店街を周回するコースを考案してコンテンツとして提供することを検討している。

(3)ユーザー分析・ターゲティング
 成果でも述べたが、現状はユーザーの属性や行動分析ができておらず、コンテンツのターゲティングもほとんどなされていない状態である。商店街の限られたリソースで、さらなるサイト閲覧者数の増加や、広告宣伝の効率化を実現するためには、重点志向での分析・ターゲティングが必要である。

※Cの会メンバー(本論文に関わったメンバーのみ記載)
 佐藤正樹、小川亮一、坂東隆哲、末広秀樹、杉野真、長坂啓司

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